第12話「リズさんを紹介した」

「あっ、おいたん!おかえりなさいなのよ!」


 俺は王都から孤児院に帰ってきていた。

 隣にリズさんがいるからか最年少のルーナは緊張しているようだ。


「いい子にしてたかい」

「はいなのよ!」


 元気よく返事をしてくれたので頭を撫でた。

 別に元気よくあいさつしなくても頭は撫でるが。


「アリョーシャさんおかえりなさい。その、隣の方は?」

 

 今声かけたきたのは最年長のマルクだ。


 ちなみに俺の隣にいるのはギルドの看板娘のリズさんだ。

 深酒していたせいか記憶がおぼろげだが、

 いろいろあって同棲することになった。

 王都へはここから徒歩で出勤するそうだ。


 さて経緯が経緯なだけに説明が難しい。

 どう説明したものか。


「あっわかりました。家政婦さんですね!」


 そう言ってウィンクをしてきた。

 察しの良い子だ。


 一応、神官という立場上あまり色恋は歓迎されていない。

 そういった俺の立場を察してのナイスフォロー。


「うぃっす。おっさんにも彼女出来たんだ。やるじゃん」


 エレボスなる名の勇者だ。


 これではせっかくのマルクのフォローを台無しだ。

 やれやれ。これだからクソガキは。


 外出中にいっぱい子供と遊んでくれたので多めにみよう。


 まあ、俺みたいな年上だと多少遠慮するところがあるんだろうな。

 エレとニュクスにちっちゃい子供は既に懐いてるようだ。


 その点はなんやかんやで感謝はしてる。 

 それはそれとして言い訳はしとかないとな。


「みなさんはじめまして。孤児院で住み込みのバイトをすることになったリズです。炊事洗濯掃除頑張ります!気軽におねーちゃんとでも呼んでくださいねっ」


「「「「はーい」」」」


 俺は特に何も言わなくても問題はなかったようだ。

  

「アリョーシャ。料理残ってるけど食べる。ちょっと冷めてるけど」


 魔王ニュクスの手料理だ。おお……。普通にうまそうだ。

 俺は『子どもたちのあそびになってくれ』としかお願いしていなかった。

 子どもたちのご飯まで作ってくれているとは予想外だ。


「とても美味しいです。ニュクスさん、料理が得意なのですか?」

「そんなでも無いわ。作れるのなんて簡単な料理くらいなものよ」


「特にこの鶏肉のソテー。これは絶品ですね」

「大した物じゃないわよ。味付けは塩だけだし。美味しいのは肉が新鮮だからだと思うわ。孤児院の近くにニワトリちゃんがいたからキュッと締めたの」


 なるほど。あり物の食材でちゃちゃっと料理が出来るのも才能だ。

 まさかこんな家庭力があるとは思わなかった。

 俺はもっぱら外食派だからありがたい。


「ごちそうさまでした。おいしかったです。ふわぁ。俺は眠くなったので部屋に戻ります。みなさんも、夜更かししないように。マルクくん、エレ、ニュクス。子供たちが夜更かししないように頼みましたよ」


 そう言って席を立つ。

 リズさんも一緒について来ているようだ。


 あ、肝心なことを忘れていた。

 リズさんに部屋を教えていなかった。


 孤児院には無駄に部屋の数だけはある。

 片付けがまだなので恥ずかしい。

 リフォームまでは我慢してもらうしかないか。


「リズさん。こちらの部屋をお使いください。なかの内装はお世辞にも綺麗と言えませんが、もうしばらくしたら王都の建築ユニオンの方たちが綺麗にしてくれますので、しばらくはこちらで我慢していただければ?」


 リズさんは狐につままれたようなキョトンとした顔をしている。

 ん?俺なんか変なこと言ったかな。

 スマートに女性をエスコートできたはずなのだが?


「アリョーシャさん。お忘れですか?恋人ごっこの件を」

「ああ。そうでしたね。ですが、それと部屋と何か関係が?」


「ふふ。アリョーシャさんと一緒の部屋じゃないと同衾どうきんできないですよ」

「ドーキン?ああ、ドーキンですよね。そうでしたね。はは」

 

 結局ドーキンとやらの意味は分からずじまいだが、

 どうやら同じ部屋でないとできない物らしい。

 まあ、リズさんが言うことなら問題はなさそうだ。


 一緒の部屋じゃないとできないこと?なんだろう?

 恋人同士のおしゃべり?カードゲームとか?

 そんなことを話している内に俺の部屋の前にたどり着いた。


「こちらが俺の部屋です。どうぞ」


 そういってリズさんを俺の部屋に招き入れるのであった。

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