第10話「ギルドの看板娘ちゃん」

「リズさん、ごぶさたです。報告にきました。あとビールといつもの」


 ここは王都のギルド。

 市役所みたいなしっかりした場施じゃない。

 平たく言えば仕事の斡旋してくれる酒場だ。


 そして、目の前にいるちょっと背が低くて、

 素直で愛らしい女性がギルドの看板娘のリズさん。


 いつもにこにこしていて気持ちの良い子だ。

 ここにはこの笑顔に癒やされたくて寄っている感もある。


「アリョーシャさん。今日もお仕事お疲れ様です!」


 リズさんがビールと肉料理を持ってきた。

 冷えたビールにアツアツの肉料理。最高だ。


 リズさんがテキパキとテーブルの上に料理を並べる。

 かわいい女性にお給仕してもらうのは気分がいい。

 それになんとも手際が良くてみてて楽しい。


「では、座らせていただきますね」


 ずらりと料理が並んば丸テーブルの向こう側にリズさんが座る。

 手元には筆記用具と記録用紙が置かれている。

 この手際の良さはさすが看板娘とうならされる。


 別にギルド嬢に逐一報告する必要はないのだが、

 報告することが推奨されてはいる。

 

 ギルドの飲食物が比較的リーズナブルなのも、

 活動報告の情報提供も考慮しての設定なのだろう。


 もっとも冒険者のなかにはメシだけ食って帰る奴もいる。

 情報は資産ではある。


 だが得るばかりで与えないのはケチくさい。

 牛丼屋でタダだからと紅生姜を山盛りにするくらいに浅ましい。


 俺?俺は、リズさんに会いにきている感じです。はい。

 まあ、危険なモンスターとか、野盗のアジト破壊報告とかもしてる。

 有益な情報を提供はしているので、冷やかし客というわけではない。

 

 冒険者の話を聞いて、記録し情報を共有する。

 これが彼女の業務の一環だ。

 だから、俺の話を親身に聞いてくれるのも仕事の一部。


「では、まずはここ最近の冒険の活動報告についてお話します」


 そういって俺はリズさんに報告を始める。


 さて、王都で今日何をしてきたのかを話そう。 

 まず最初に王都の建築ユニオンに顔だした。


 孤児院のリフォームと勇者と魔王クソガキどもが、

 暮らす家の発注を済ませてきたところだ。

 結構なお金を支払ったので完成が楽しみだ。


 もともと俺の金ではない。

 敬虔な信徒ゴミトリーに寄進してもらったあぶく銭だ。

 なので代金は大盤振る舞いの言い値に更に上乗せして支払った。


 あとは貧民街にも顔を出してきた。

 貧民街の長屋の長にいくらか援助した。


 以前より迷宮探索で儲けた金で支援は続けていたが、

 今回はまとまって金が入ったので結構な支援額になった。


 別に善行をしたいとか同情でとかそういうのではない。

 単に自分と同じように貧乏で苦労している奴らが、

 少しでもマシになればという、それだけの話し。

 まあ、単なる自己満足だ。それで良い。


 後生大事に金を抱えてても死後の世界にもっていけない。

 一応それは俺の例でも実証済みだ。


 まあ、三途の川の渡し賃に金貨一枚程度あればいいだろう。

 それ以外は使いたいように使うだけだ。


「ご報告いただきありがとうございますっ!貧民街にまで足を運ばれるとは、本当にアリョーシャさんは素敵で、魅力的な殿方です。本当に一日中酒場でクダを巻いている他の僧侶たちにも見習って欲しいものです」


 こんな感じでリズさんと話すのは楽しいのだ。

 リズさんといると自己肯定感がムクムクしてしまう。

 でも、それはリズさんが話し上手だからだ。


 あとかわいいから。

 かわいい子に褒められると嬉しい。

 嬉しいものは嬉しいのだからそこに理屈などない。

 ごめんね。しょーもない小市民で。


 だが、もちろんお世辞だとは理解してはいる。

 他の冒険者にも同じように話していることだろう。

 それでも、やっぱり楽しい物は楽しいのだ。


「もしよければ、お仕事以外のお話も聞かせてくれませんか?その、アリョーシャさんの話を聞いているのが楽しくて、プライベートな話も聞かせてほしいなぁ……。なんて、はしたないですかね?」


 

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