第7話 ショッピングデート

 ロインの返信の内容は

(ウケたよ、ありがとう)という何とも言えない返事だった。

まあ少なくともマイナスではないようで安心した。

明日はもう決戦の日だ。

ネットで買った服を試着して着こなしの確認をする

鏡を見ながら髪を1つに束ねる。

鏡に写る自分に僅かな戸惑いを感じた…。


 待ち合わせの駅に向かうと15分前だというのに

マリーの姿が見えた。

急いで駆け寄り

「…ハァハァ…ゴメン待たせたね」

「うううん、私が早く来ちゃっただけだから」

頬を染めモジモジとするマリー。

「電車来るし行こうか?」

そう言ってマリーと改札に向かう。

目的地の大型ショッピングモールは二駅先である。

週末であり同じくショッピングモールに行くのか

ほぼ満員電車だった。

ヒカリはマリーをかばい、彼女を壁側にして他の人達から守るように立っていた。

しかしそれはハタから見たら壁ドンそのものである

赤くなり俯くマリーに

「思ったより混んでるね、大丈夫?」

「う、うん、大丈夫…ありがとうヒカリ」

と、その時電車が揺れ壁側に押し付けられる。

「ひゃっ!?」思わず声の出たマリーはヒカリの顔を見上げる。

マリーのことを守るように耐えるヒカリ…。

その胸に飛び込みたくなるのをなんとか堪える

マリーであった。


ショッピングモールに着くと思った程の混雑ではなかった、すると…

「ヒカリにお願いがあるの」

マリーがヒカリの袖を引き

「混雑する前に、今日の記念にプリクラが欲しい」

「ああ、お安い御用だよ」

(よしよし、作戦通りだわ)

二人は連れ立ってプリクラのゲームコーナーへと

向かった。

エアホッケーの横に来た時に、

「ヒカリ、これで勝負しない?」

「へっ、いや別にいいけど…?」

「負けた人が、勝った人の言う事をひとつ何でも

 聞くというルールもプラスするわ」

「面白そうだね」

「あっ、エッチなお願いはまだダメだよ」

(あちゃ〜、また余計な事を言っちゃった)

「……。やりますか」

ヒカリは内心ムキになってはシラケるだろうから

気付かれないように負ける積りだった。

結果は僅差でマリーの勝ちに…。

勝ったマリーはこう切り出した

「ヒカリは今の髪型にこだわりがあるの?」

「いや…、別にこだわりとかはないけど…」

「じゃあ、私の思うヒカリに似合う髪型にして

 欲しいの、イヤかな?」

マリーのすがるような瞳に

「いいよ、負けたし言う通りにするよ」


マリーは昨日の内に調べておいたヘアサロンに

ヒカリを連れていき、担当の人に

「彼の髪型をツーブロックにして下さいミディアム 

 な感じで…」

と細かく注文した。

昨日の内にヘアカタログも散々見たのである。

ヒカリがカットに入ると、その様子が見える位置の

待ち合い室の席に座った。

他の順番待ちの男性客がチラチラと見てくるが

マリーの視界には入らない。

彼女は段々と変わっていくヒカリに夢中だった。


カットが終わりヒカリが戻ってきた。

そこにはアイドル?がいた。

思わず言葉を失い呆然とするマリーに

「お待たせ、……?似合わない?」

はっ、と我に返ったマリーは

「似合う!似合うよ、アイドルかと思ったよ」

「大げさだなあマリーは」

思わずマリーの頭を撫でるヒカリ…。

はっ、と我に返った二人は赤面して俯くのだった。


ヘアサロンを出て歩き始めてヒカリは思い出した。

「そう言えばプリクラ…」

「あっ、忘れてた〜」

ゲームコーナーに戻り二人は無事に記念のプリクラをゲットした。

それから二人はお昼を食べ、ヒカリ似合う服を見に行った。

どこに行くにも美男美女のカップルは目立ち

「芸能人かな?」とか「今日、何かの撮影?」

などと囁かれるが、二人の耳には入らない。

何しろ二人だけの世界にいるのだから…。

二人でいると不思議となんでもない売り場でも楽しい…そう楽しい時間はあっという間に過ぎるのだ。

もう帰る時間だ。

ヒカリは勇気を振り絞ってマリーと向き合い

「僕も…僕もお願いしてもいいかな?」

「い、いいわよ…。き、キス?」

(わ〜わ〜、何を言ってるの私は)

「い、いや、それはまた今度お願いします…。

 二人で一緒の写メが欲しいなあ…なんて…」

「うん、私も欲しいよ!」

しかし、知らない人に撮ってもらうわけには…

二人は顔を寄せ合い手を伸ばし自撮りした。

まずまずの写りだったが、二人とも顔が真っ赤に

なってる気がする…。

ヒカリはそれをマリーに送りお互いに待ち受けに

した。


この前のナンパのこともあるしヒカリはマリーを

家の前まで送って行った。

立派な門から見える大きな白い邸宅…、マリーはお嬢様のようだ。

どうにも離れ難かったが、マリーが思い切って

ヒカリの頬にキスをする

「送ってくれてありがとう、またね!」

手を振り家に戻る彼女を見送りながら

「うん、またね、連絡する」

そう言って家路につくが……

肝心なことを思い出した。ファーストキスをして

デートして、プリクラとって、ツーショットを

携帯の待ち受けにして…これって恋人じゃん。

なのに、告白をしてない。

付き合う了承を得ていない…。

もう後回しには出来ない。

携帯を取り出しマリーの名前をタップする。

「はい、どうしたの?何か忘れた?」

「肝心な事を忘れてました…」

「え〜、なになに?」

「マリー、貴女が好きです。僕の恋人になって

 くれませんか?」

「………。ありが…と…ヒック、よろしく…ヒック

 お願いします。」

マリーは泣きながらもなんとか返事をした。


晴れて二人は恋人になった。

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