第6話 合格か不合格か?

 こんなことじゃ駄目だな、ヒカリは今日一日の

学校生活を振り返る。

常にマリーのことが頭のどこかにあった。

知らず知らずの内に気が付くと彼女のことを考えて

いた。授業にも集中しきれなかった。

本当にこんなことは初めてなのでどうしたら良いかも解らない。ただマリーのことをマイナス要因にはしたくない、彼女はヒカリにようやく訪れた春の日差しのような人なのだから…。

頭を切り替え週末のデート?のことだけを支えに他の人達に気付かれてはいないが努力していた。

そんな彼を見つめるアカリの存在に気付きもしないで…。


《SIDE マリー》

「う〜ん…」

ここはマリーの自室、ローテーブルにはヤングファッション、ボーイズファッション、ヘアカタログなど、沢山のファッション雑誌が広がっていた。

「ボーイズファッションって…色々あるわねえ」

ヒカリに大見得は切ったもののマリーとて彼氏が

いたこともないので女の子のファッションならいざ知らず男の子のファッションなど皆無に近い状態だ

彼氏持ちのアズサにお願いして一緒に緊急お勉強会を開くもなかなか捗らない。

「あっ、ねえねえ、この服なんかヒロキに合うと思わない?」

「ちょっと〜、今日はヒカリ君に合う物を探すんだ

 よ、ヒロキ君のは後にして!」

「は〜い、でもウチ、ヒカリ君の顔とか分からんしなあ〜、せめて写メがあればなあ」

ギクリ、「そ、そうだね、私もそう思う」

「じゃあさ、ヒカリ君にロインで自撮り送ってもら

 えばいいじゃん」

「えぇ〜、私が送ってって言うの?恥ずかしいよ」

「他に誰がいるのよ、…いいわ、スマホかして!」

マリーからスマホを受け取るとスラスラとメッセージを打ち込み

「はい、送信」

「な、なっ!?ちょっと何してんのよ〜」

送ったメッセージの内容は

(私はマリーの友達のアズサです。ヒカリ君とも

 お友達になりたいので写メよろしく!)

怒ったフリをしたものの、ヒカリの写メが喉から手が出るほど欲しいマリーであった。


 一方、マリーからのロインに驚いて飛び上がった

ヒカリはそのメッセージの内容に頭を抱える。

いまだかつて自撮りなどしたこともない…。

取り敢えず何枚も何十枚も撮ってみる……自信作がない…。悩みに悩んだ末にある作戦を思いついた。

そしてやっとのことマリーへの返信を果たした。

はあ〜疲れた…。


ここはマリーの自室、1時間待っても返信がない。

すぐさま既読になったのに…、もしかして怒らせて

しまったのでは?と不安になるマリー…。

その横ではノンキに彼氏の服を選ぶアズサがいた。

ピコン…誰も話さない静かな部屋に返信があったことを伝える。

二人は思わず顔を見合せるが、マリーにはロインを

確認する勇気が出ない、アズサにお願いする。

アズサが恐る恐る確認すると…

「ブハッッ!!」

盛大に吹き出した。

「なに?何なの?…ブツッ!!」

マリーも吹き出し二人で腹を抱えて笑い転げた。

ヒカリの作戦はこうである

(自撮りは初めてで上手く撮れませんでした)

というメッセージのあとに

半目になってるブサイク写真を1枚目にして

2枚目には比較的上手に撮れたものを貼った。

名付けて"ハードル下げてからの上げ作戦"である。

ひとしきり笑い転げたあとで

「も〜、ヒカリ君最高、しかもマジでイケメン!」

アズサは目尻の涙を拭きながら褒める。

どうやら友達にも気に入られたようだ。

「そうでしよう、最高なの」

自分のことのように嬉しくなるマリーだった。


……その頃、携帯の向こう側では合否の判定を祈るような気持ちで待つヒカリがいた。

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