編者のアルフィーネ(6)
時は少し巻き戻り。合わせ鏡の中に《
「……誰も、いない?」
それだけではない。あちこちボロボロで、原型を留めていない光景から、そこで何が起こったのかを察するのは難しくもない。
そもそも、ここに戻ってくる途中で、何かが大暴れする音が下まで響いてきていたのだから、今さらそこまで驚きもないのだが……。
「
アンネリリィが、あれだけ躊躇なく詠唱を続けて――それでも、多少の傷はあれど、屋上がここまで荒れ果てることはなかった。
それなのに、ヴァーレリアが少し離れた間に、ここまでの惨事になっているとは思えない。
では、第三者による介入があったのだろう。そこまで考えたところで、ダイレクトに答えが目に入ってしまう。
「……あれって――《撰述の魔女》、シュティーレン・ツァウバティカー……!?」
思わず、反射的に身を隠してしまった。
まあ、やけに上手く事が運んでいると思ったが――そうは問屋がおろさない、か。なんて独り言を口にしつつ、その子供と同様に、やはり実力が未知数な女性と相対していたのは。
「それと、理瀬が戦っている……?」
状況は掴めない。だが、どう考えてもあれは、本気の殺し合いなのだろう。
だとしたら。加勢すべきは同然。
「
一度、アンネリリィの全ての攻撃を跳ね返した――ヴァーレリアの切り札、一分にも渡る長い詠唱を紡ぎ始める。
「――
一日に、二度も切り札を使う事になろうとは、思ってもみなかった。だが、出し惜しみをしている場面でもないのはまた事実。
「――
あの時は余裕がなかったので、省略した箇所も、しっかりと詠唱して、確実にシュティーレンを殺せるまでの力へと増幅させて。
「――
後は、タイミングを見計らって、確実にシュティーレンを殺すだけ。……もちろん、理瀬が勝てるのであれば、それに越した事はないのだが……健闘はしているものの、相手が相手であって、きっと厳しいだろう。
「一瞬でも、確実に当てられると断言できる隙さえあれば、いくら相手が《撰述の魔女》だとしても、私の手で葬れる」
あとは、理瀬を巻き込まずに、シュティーレンだけを撃ち抜ける、その瞬間を待つだけだ。
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