第20章 盛夏

#113 教室での変化と少年の嫉妬



 翌朝起きると、ちんこ丸出しのままだった。

 昨夜は、これまで禁忌としてきた六栗をオカズにしての妄想に、興奮と背徳感がハンパ無くて過去類を見ない程の昂りがなかなか静まらなくて、いつの間にか力尽きてそのまま寝落ちしたらしい。


 お陰で、昨夜あれほど静まらなかった性欲は、今はスッキリして落ち着いている。

 だがしかし、目覚めてからしばらくすると、罪悪感が沸き上がって来た。


 昨夜は全く勉強せずに寝てしまった。

 こんなことばかりしてると、バカになって成績も落ちてしまう。

 いや、成績なんていくらでも巻き返せる。

 そんなことよりも、六栗を妄想の中で穢してしまったことへの罪悪感の方がヤバイ。しかも、六栗は俺の部屋でデートの続きをしたがってたのに、俺は途中で寝てしまった。帰る時の様子から、怒ってる感じは無かったけど、デート中に寝落ちするのはマズかっただろう。


 デート中に寝ちゃうわ、オカズにするわ、俺、最低だよな。

 今日学校行くのに、どんな顔をして会えば良いのやら・・・




 ピンコーン♪



 来た。


 まずは寝落ちしたことへの謝罪からだな。



 玄関を開けると、可憐な笑顔満点の六栗が「ケンくん!おはよ!」といつもよりもテンション高めの挨拶で迎えてくれた。

 いつもの様にまずは六栗の全身をチェックすると、俺がプレゼントしたブレスレットは流石に学校に行くのには付けて無かったが、見慣れないシュシュを左手首に巻いていた。


「お、おはよ・・・・昨日は途中で寝ちゃってすみません。折角の誕生日デートだと言うのに弁解の余地もございません。許して貰うためなら土下座でも足舐めでも―――」


「いいのいいの!昨日ケンくんめっちゃ疲れてたもんね!っていうか、やっぱ足舐めるの好きなんでしょ?」


「いや、実際に舐めたこと無いから俺にも分からん」


「じゃあ今度試してみよっか?」


「つ、謹んで舐めさせて頂きます」


「ウソだって!ジョーダンだから! 昨日のことなら全然怒ってないからね?むしろ色々無理させちゃってヒナの方が申し訳なかったなって思ってるし」


「いや、昨日も言ったが、俺に気を使わず六栗は六栗のしたいことをしてくれればいい。俺はそれを全力で応援する」


「それは、幼馴染だから?」


「勿論そうだ。それが幼馴染の役目だと思ってるからな」


「そっか・・・うん、わかった。その時はよろしくね?」


「ああ勿論だ。任せてくれ」


「じゃあ学校いこっか!」


「あいよ」


 六栗は本当に怒ってなくて、この話は終わりとばかりに別の話題を喋り続けていた。


「それにしてもケンくん、結構焼けたよね?鼻の頭とか真っ赤だよ?痛くないの?」


「うん、夜になってヒリヒリしだして、結構痛いよ」


「そうだよね?痛そうだもん。ちょっと触ってみていい?」


「止めて。マジで痛いし。 俺のことより六栗の方は日焼け大丈夫だった?」


「うん。水着のラインほとんど残ってないし大丈夫だったよ。ケンくんに日焼けクリーム塗ってもらったお蔭だね。お尻とかおっぱいとか水着の周りも丁寧に塗ってくれたもんね」うふふ


「いやあれは六栗が恋人プレイって言うからで、セクハラとかじゃないぞ?」


「セクハラとか思って無いし、ケンくんなら触られるの全然おっけーだから」


 またそんなこと言って。

 俺の方が全然おっけーじゃないっていうのに。


 でも何と言うか、昨日のデートではずっと手を繋いでたり腕を組んだり時には抱き着かれたり抱き着いたりしてたから、肩を並べて歩く普段通りの距離感に、今はもう恋人プレイでは無い平常の幼馴染関係に戻ったことを、ちょっぴり寂しさを感じる。


 昨日は六栗の常軌を逸した振る舞いの連続に疲弊してしまったが、なんだかんだ言って、好きな子にあそこまでベタベタして貰えたのは貴重な時間だったわけで、俺ももっとその気になって楽しんでおくべきだったと今更ながらに思ってしまう。


 貴重なチャンスを活かせずに後になって後悔するなんて、これもきっと童貞の未熟さ故の悲しいさがだろう。




 ◇




 教室に入ると既に桐山が居て、自分の席で大人しく読書をしていた。


 今日はコイツには言いたいことがある。

 しかし、流石に教室で問いただす訳にもいかないから、今日は俺の方から呼び出して尋問しなくてはな。



「おはよ、桐山」


「おはようございます」


 俺が挨拶すると返事をしながら一度だけ俺に視線を向けて、直ぐに文庫本に視線を落とした。


 俺も席に座り、通学用のリュックから教科書やノートに筆記用具を取り出して机に仕舞うと、再び桐山に声を掛けた。



「桐山、お前に色々聞きたいことがあるから、お昼に美術準備室な?」


「奇遇ですね。私からも真っ赤なお鼻の石荒さんに色々と言いたいことがありました」ツン


 なんか今日はやけにツンツンした態度だな。

 機嫌でも悪いのか?


 まぁいい。

 昨日クローゼットに隠れてたのは、どういうつもりだったのか問い質さないとな。

 こっそり盗み聞きするとか趣味悪いし、いくらソウルフルなフレンドとか言っても失礼過ぎる。

 事と次第によっては、お説教コースだ。




 この日の1年5組の教室では、先週までとは違う変化が起きていた。


 今まで教室ではお互い他人行儀な態度だった六栗と桐山が、親し気に会話しているのだ。

 数学の授業の後とか六栗が桐山の席までやって来て、「ここが分かんなくて、ツバキ教えて」とか言って授業で分からなかったところを質問したり、そのままその場に留まって、髪の手入れのことやスキンケアのことなどの雑談を始めたりと、二人とも明らかに今までとは違う態度だった。


 そして、学年で1・2を争う二人の美少女が急に親し気にしてる光景は、他のクラスメイトたちをも驚かせたようで注目を集めていたが、二人ともそういう視線は全く気にしていない様子だ。



 そんな中、すぐ傍の席で座ったままの俺は、二人の様子が気になりチラチラ横目で見つつ、軽く嫉妬していた。

 勉強のことだったら桐山よりも俺に聞いて欲しかったし、頭髪の話題は坊主頭の俺では完全に門外漢なので会話に混ざることすら出来ないし、よく見ると、六栗が手首に巻いてたシュシュと全く同じ物を桐山も左手に巻いててお揃いだし、挙句、次の休憩時間には「ツバキ!一緒にトイレ行こ!」と二人で連れ立ってトイレに行ってしまい、まるで置いてけぼりにされた心境に陥るし、俺を放置して二人で楽しそうにしてるのが妬ましかった。


 僕のが先に仲良くなったのに!って感じだろうか。

 小説のジャンルで言うBSSならぬ、BSNとでも言うべきか。



 昨日の夜、俺が寝ている間に二人の間でいったい何があったというのだろうか。

 後で桐山にとことん問い詰めねば。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る