#111 遠のくばかりの少年の推論
いつの間にか寝落ちしてたらしく、目が醒めるとベッドで横になって寝ていた。
寝起きでダルくて体が重いから、横になったままぼーっとした頭で『ココで何してたんだっけ・・・』と考えるけど、寝惚けた頭でははっきりしたことが思い出せない。
自分の部屋の自分のベッドだというのは分ったし、部屋の照明が点いてて室内は明るく、そして、六栗と桐山の声も聞こえている。
ゴソゴソと動く音も聞こえ、ベッドで横になっている俺の背後に誰かが腰を降ろしているようだ。
声からして桐山か?
首だけ動かして背後の様子を確認すると、視界を塞ぐように服を着ていない裸の背中が立ちはだかっていた。
うぉ!?
思わず声を出しそうになるのを必死に堪え、首を元の向きに戻した。
一瞬しか見れなかったけど、白い肌の背中と引き締まったウエストからの綺麗な曲線を描いたお尻が鎮座していた。
この背中とお尻は、間違いなく桐山だろう。
桐山は全裸のまま俺が寝ている枕元に腰を降ろして、六栗と会話しているようだ。
会話の内容は夏休みのことらしく、特別二人がモメている感じには聞こえない。
しかし、なぜ全裸・・・
あーそう言えば、海水浴から帰ってきて休もうとしたら、六栗も服脱ぎ出してたのを思い出した。
それであたふたしてたら、何故かクローゼットから桐山が出て来たんだ。
その後の事が思い出せない。
何か会話した様な気もするけど、何喋ったんだっけ。
クローゼットから出て来た桐山が、オドオドしてたのは何となく覚えてる。
その先が全く思い出せない。
そこで俺は寝てしまったということか。
しかし、何故桐山も全裸なんだ?
ああ!そう言えば!
以前桐山の誕生日の時に二人が大喧嘩して最終的におっぱい勝負で決着がついたって話だった!
つまり、またおっぱい勝負してたってことか!?
少しづつ頭がクリアになってきたぞ。
しかしそれと同時に、今ここで俺が起きてることがバレるのは、マズイのでは無いかとも思えた。
桐山が全裸と言うことはおっぱい勝負相手の六栗も全裸の可能性が高く、今二人の全裸姿を見るのは勿論マズイし、おっぱい勝負は女子だけの秘めた行為だろうから、男子の俺が首を突っ込むのはトラブルの元だろう。
実際に、前回の勝負の詳細は教えて貰えなかったし、男子には知られたくないだろうな。
しかしそれにしてもこの二人、おっぱい勝負が好きなんだな。
六栗は言わずもがな、桐山だって立派なものを持っている。
巨乳とまでは言わないが、ビキニ着た時に谷間が出来る程度にしっかりとボリュームはあったからな。
六栗がおっぱい特化型だとするならば、桐山は総合バランス型と言うべきか。
二人ともタイプは違えど、女子高生としては間違いなくトップレベルで魅力的なスタイルの持ち主だろう。
二人のビキニ姿をじっくり見ている俺は、そう断言する。
しかも六栗に関しては、海水浴のあとに全裸も見てしまっているしな。あれは凄かった。
そんなライバル同士の二人だからこそ、機会があればおっぱい勝負に興じて切磋琢磨してるってことなのだろうか。
流石、豊坂高校1年が誇る美少女ツートップだな。美少女なのはあんま関係ないか。
って、そんなことはどうでも良いんだ。
このままでは身動きが取れない。
俺は今どうするべきかを考えねば。
今は、目を覚ましたことがバレるのは避けたい。
となると、二人が部屋を出てくのを待つしかないのか。
外は暗くなってるし、そろそろ帰る頃だろうしな。
っていうか、俺の部屋で我が物顔で全裸のまま寛いでるなんて、二人とも自由すぎるだろ。
俺だって男子高校生だぞ?
性欲は旺盛なんだぞ?
なのに今日の昼間といい、どうしてこう欲情を誘うよな真似ばかりするんだ?
しかも、二人の会話から夏休みも毎日俺んちに遊びに来る相談してるっぽいし、毎日こんなのが続くのか?
遊びに来るのは良いんだよ。
一人で居ても勉強するか読書してるくらいだし、誰か遊びに来て喋り相手になってくれるのなら歓迎するよ。
実際に、桐山がウチに遊びに来るようになってからは、退屈することは無くなったからな。六栗とだって、中3の時は夏休みとか冬休みは毎日一緒に勉強してたし、一緒に過ごす時間は楽しかった。
けどさ、裸になるのは止めようぜ?
好きとか嫌いとか幼馴染とか友達とかそうじゃないとかそんなの関係なく、目の前で同じ年頃の女子が裸になったら男は我慢出来なくなるんだよ?
それに、ウチの母にでも見つかったら間違いなく正座でお説教コースだからな。しかもこの場合、俺悪くないのに巻沿いで俺も確実に怒られるパターンだ。
俺たちまだ高1じゃん?
せいぜい水着で遊ぶくらいで我慢しとくべきだと思うんだよね。
っていうか、そもそも、スケベな目で見るなって言ったのは桐山じゃん。
なのに何でその本人は素っ裸で寛いでんの?
ハニートラップか?
俺が襲いかかるのを待ち構えているのか?
クローゼットに隠れてたのもそういうことか?
それで、また『性犯罪者!』とか言ってイジるつもりか?
本気でそんなこと思ってるわけじゃ無いって言ってたのも、油断させるためか?
だったらトコトン男の意地を見せてやろうじゃねーか。
これまでだって何度となく耐え抜いて来たからな。
俺の円周率を舐めるなよ。
暗記桁数、更に伸ばしてやるからな。
意地でも手を出したりなんてしないからな。
俺の童貞力、舐めるなよ。
静かに闘志を燃やしてそう心に誓い、亀が甲羅に身を潜めるが如く、全力で寝たフリを続けた。
二人がしばらく雑談をしていると、六栗に促されて桐山はベッドから立ち上がって服を着始めたらしく、少しホッとしたのも束の間、直ぐにまた誰かが枕元に腰掛けた。
匂いと声、そしてベッドを伝う重量感から、今度は六栗の様だ。
そして厄介なことに、六栗は寝たフリしてる俺の顔を触り始めた。
桐山と会話をしながら、俺の顔で遊ぶつもりらしい。
頬をつついたり鼻をツンツンしたり唇を摘まんだりとやりたい放題だ。
「ケンくん、マジで全然起きんわ。よっぽど疲れてたのかな」
「朝は早かったですし、今日一日六栗さんファーストで気を遣ってたでしょうから、疲れてるんでしょうね」
「ん?六栗さんファーストってなに?」
「今日お誕生日の六栗さんに満足して頂く為に、全てにおいて六栗さんを最優先に行動することです」
「じゃあ恋人プレイに付き合ってくれたのも、そういうこと?」
「そうかもしれませんね。その可能性は否定出来ません」
「うーん、そっかぁ」
「すみません、お待たせしました。帰りましょうか」
「うん。 ケンくん、おやすみなさい。ゆっくり休んでね」
六栗はそう言って、再び俺の鼻をプニプニすると立ち上がった。
「石荒さん、明日は反省会ですから覚悟しておいてくださいね。おやすみなさい」
入れ替わる様に桐山はそう言って、俺の坊主頭をナデナデした。
ドアが開く音が聞こえると部屋の照明が消えて、二人が階段を降りていく音が聞こえた。
音を立てないように静かに体を起こし、部屋の照明を消したまま窓をゆっくり開けて外の様子をこっそり覗うと、ガレージのシャッターが開く音が聞こえた。
六栗は自転車だか桐山は徒歩だから、ウチの母が車で送って行くのだろう。
いつもなら俺が送って行くところだけど、今日は色々と疲れたから、たまには休ませて貰おう。
こうして長かった六栗とのデートは、幕を閉じた。
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