#107 情報共有する女子二人
六栗さんが下着姿のまま語ってくれた今日のデートでの話を聞いて、思わず右手の中指で眉間を支える様にして、「うーん・・・」と重い溜め息を漏らした。
クローゼットに隠れていた時に聞こえた『恋人』と言うのは、正式な交際を指していたのではなくて、『恋人プレイ』という疑似体験的な恋人関係とのことでした。
私がデートの時に石荒さんとした『恋人設定』と同じようなものですね。
なので、お二人はまだ正式にお付き合いをしているわけではありませんでした。
残念な気持ちとホッとする気持ちとで、複雑な気分です。
そして、何よりも頭が痛いのは、石荒さんはドコまで行っても石荒さんでした。勿論、それは悪い意味で。
これまでずっと好意を抱いてきた六栗さんとのデートで、ボディタッチにキスに挙句に告白と六栗さんからの積極的なアプローチに、彼は何もしなかったそうです。
普通の人なら、異性からココまでのアプローチをされれば、好意に気付きますよね?『俺の事、好きなんだ』って思いますよね?告白されたら、イエスかノー、せめて「直ぐには答えが出せない」くらい言いますよね?
なのに、見当違いな幼馴染としての拘りを熱弁してたそうです。
幼馴染とか言ってる場合じゃないんですよ。
アナタが好きな六栗さんが下着姿になって、いつでもウェルカムって両手を広げてるんですよ。熟した果実の様な豊満な胸が、収穫して貰えるのを待ち望んでるんですよ。
なのに・・・はぁ。
人生で初めての失恋したと思ったのに、これでは生殺しのままじゃないですか。
それに、私も同じ様な体験をしてますので、その時の六栗さんの悲観した心情は察するに余りあります。
その後、六栗さんがムキになって更衣室で裸になって迫ってしまう気持ちにも同情を禁じ得ません。
私も『言葉ですら想いが通じないのなら、押し倒して無理矢理セックスするしか無いのではないか』と同じ様な結論に至りましたからね。
それなのに、六栗さんのフルヌードですら、石荒さんの理性という名の牙城は崩せなかったそうです。
裸の六栗さんを前にして、石荒さんは背を向け目を瞑り、亀が甲羅に隠れるが如くジッと耐えていたそうです。
確かにデートの前に、六栗さんを不愉快にさせるようなニヤニヤ顔は控える様に言い聞かせました。
石荒さんは卑猥なことを考えてる時、それが表情に出てニヤニヤしてしまうのでそう言ったんですが、『スケベなことを考えるな』という意味では無いんです。
どうやら石荒さんには。『スケベなことを考えても、それを顔に出さない様に』というニュアンスが伝わってなかった様です。
恐らく、普段から石荒さんは性的な行為に対して潔癖なところがあって、そういう思考の影響で解釈違いを招いてしまってるように思えます。
私は石荒さんに、愛情表現としてのボディタッチや性的行為を禁止したわけではありません。
好き合う男女ですから、気持ちが結ばれれば次は体が結ばれるのは自然なことだと思います。
なのに、石荒さんは私の意図とは違う解釈をしてたようで、六栗さんのアプローチに対して頑なまでに応えようとはしなかったようです。
実は、六栗さんのこと本当は好きでは無いのでしょうか。
それとも、何かの病気なんでしょうか。セックスすると死ぬ病気とか。
「でもさ、体はバッチリ反応してたわけよ」
石荒さんのチキンぶりに軽い目眩を覚えていると、六栗さんはしたり顔で話を続けた。
「体の反応ですか?」
「うん、体の反応。私が裸のままケンくんの体洗ってあげてたらさ、アソコがモッコリしてたの!めっちゃモッコリして水着が窮屈そうな感じになってたの!」
「ああ、男性器のことでしたか・・・つまり、体自体は性的興奮をしてる訳ですから、問題なのはメンタル的な部分と言うことになりますね」
「うん、それな。でもさ、マジですごかったよぉ」
「なにが凄かったんですか?」
「ケンくんのアソコ!ケンくんの水着も脱がせたんだけどさ、めっちゃリアルなのよ。こうなんていうか、バキーン!!って感じで太くて長くてさぁ」
六栗さんはそう言いながらその時のことを思い出してるのか、瞳をキラキラとさせています。
「え?脱がせたんですか?バキーンって男性器のことですよね?え?え?生で見たんですか?もしかして、触ったりも?」
「うん、生で見たよ。事前にコンドームのサイズを確認したかったしね。でも流石に触ってはないよ。更衣室の外に順番まちの人たち沢山居たしね、元々の計画でもケンくんちに帰って来てからが本番だったし」
「その時の石荒さんの反応はどうでした?」
「気を付けしてたね。おっきくなったアソコを丸だしのまま気を付け。隠そうとするから『気を付け!』ってヒナが言ったからなんだけどね」
年若い男女が狭い更衣室でお互い裸になっている状況。
六栗さんは積極的にボディタッチして、石荒さんの体は性的興奮の反応をみせていた。
なのに何も起きなかった。
いえ、石荒さんが行動に移そうとしなかったと言うべきですね。
懸念してた以上に事態は深刻かもしれません。
石荒さんには言葉でのアプローチも性的興奮を誘うアプローチも通用しない。
そうなると、やっぱりセックスしか無いんでしょうか。
六栗さんもそう考え、下着姿になって実力行使に出ようとしたんでしょう。
私は思案しながら、目の前に座る六栗さんの下着姿を見つめた。
ハーフカップの黒のブラが豊満な胸を押し上げ、零れ堕ちそうな程の胸元が自己主張をしています。
うーん、眼福です。
おもむろに右手を伸ばして、片方のカップを持ち上げる様に触れてみる。
「ちょい!急に触んないでよ!なんでいま触った!?」
同性の私ですら触りたくなる衝動が抑えられないほど魅力的なこの六栗さんの下着姿を見ても、石荒さんは触れることなく寝てしまいました。
「たまには私にも揉ませろっつーの!」
六栗さんはそう言って、仕返しとばかりに両手で私の胸を触ろうと迫って来た。
座ったまま後退りして逃れようとしますが、六栗さんの俊敏な動きで簡単に捕まってしまい、両手で私の胸を遠慮なく揉み始めた。
「ツバキも結構あるじゃん。お上品にお澄まししてても本当はこうされたかったんでしょ?こんな風に揉まれたかったんでしょ?我慢せんで声出してもええんやでぇ?エエ声聞かせてーやぁ」モミモミモミ
楽しそうにセクハラ親父の様なセリフを言いながら、私の胸を揉みしだく六栗さん。
「ちょ!?やめて下さい!セクハラですよ!?」
「ツバキだって私のおっぱい何度も触ってんじゃん!ケンくんと出来んかった分、ツバキで解消したるでぇ!」モミモミモミ
「やめてくだサイ!もうムリ!イヤ!そんな風に触らないデ!」
暴走機関車の様に私へのセクハラを止めてくれないので、私も反撃に出ようと、六栗さんの両胸をブラの上から鷲掴みにして円を描く様に揉み込んだ。
同じ男性に好意を寄せる二人の女の子が、その男性の部屋で向き合ってお互いの胸を揉み合ってるこの状況。
六栗さんは口角を吊り上げ、目をギラギラさせて、本当に楽しそうです。
私は今、どんな表情を六栗さんへ向けているのでしょうか。
結局、六栗さんと石荒さんの仲の進展には役に立つどころか足を引っ張ってしまいましたが、六栗さんとの距離は少しだけ縮まった様に感じます。
第18章、完。
次回、第19章 夏の夕、スタート。
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