#104 少女が全力で堕としにかかる時
今日のデートは、ココまでが下ごしらえだった。
今、ケンくんのお部屋で二人きり。
ようやくココまで辿り着けた。
そしてココからが本番。
「だいじょーぶだいじょーぶ!下着だったらビキニとおんなじだし!すっぽんぽんも見てるんだからへーきでしょ?」
女は度胸と愛嬌!と、シャツと一緒に躊躇いは脱ぎ捨て、ショートパンツと一緒に羞恥心も脱ぎ捨てた。
あとは、今日の為に用意した勝負下着だけになって、ニコリと微笑む。
下着なのにあざとさ全開。
因みに、レースで縁取ったハーフカップの胸の谷間を強調した黒のブラと、同じく黒で布面積が極端に少ないTバックのセットで、めっちゃ気合入ったセクシーランジェリー。持ってる下着の中でも一番お高いとっておきの。
今日はずっとケンくんにベタベタくっついて、じっくり時間をかけて私のことを意識させた。
ほっぺにだけど、キスだってした。
シャワーの時には強引に裸になって、私のおっぱいもお尻もバッチリ見せた。
ケンくん目を瞑ってたけど、アソコは元気一杯になってたから、私の裸に興奮してたのは間違いない。
だから、今のケンくんは私のこと意識してムラムラMAXトルネード! のハズ!
今日この時の為にコンドームの練習だってしてきた。
ムダ毛だって昨日キッチリ処理してきた。
あとはヤルだけ。
いける。
今日こそいける。
さぁ、メインディッシュの始まり!
じっくりと、そして存分に、ロストバージンといこーじゃないですか。ぐふふふ
「ケンくんも脱いだら? ヒナだけ裸なの、恥ずかしいし」モジモジ
「いや、恥ずかしいなら脱ぐなよ」
確かに。
冷静に返されると、ぐうの音も出ないね。
けどしかし!今日の六栗ヒナはこんなことくらいでは、止まらない!
「そんなこと言うんだ・・・ケンくんって、冷たいんだね・・・ヒナ、悲しくなっちゃうな」
悲しみ、不安、諦め、そして、それでも好きだという感情を滲ませた表情を作って呟く。
私だって女。悲しい女の演技くらいいくらでもやってみせるよ。
「う・・・べ、別に責めてるんじゃなくて、俺は常識的なことを言いたいんであって」
「じょーしきなんて、今は聞きたくないな・・・ヒナはケンくんと二人だけの時間を大切にしたいだけなのにな」チラッ
ここで自信無さげな表情作って、上目遣い。
「うう、そんなこと言われたら・・・」
「ケンくんも、二人の時間、大切にしてくれる?」うるうる
目に涙を滲ませうるうるした表情で、隣に座るケンくんを至近距離からめっちゃ見つめる。ケンくんにフラれた時のことを思い出せば3秒で簡単に涙が滲む。女優顔負けの泣きの演技だ。
そして、ドサクサに紛れてケンくんの右手を両手で包み込むようにして、おっぱいに押し当てた。
今日は女の武器惜しみなく全部使って、全力で落とすんだから。
「六栗・・・」
キテル!キテル!
ケンくんがめっちゃ昂ってるのが手の取る様にわかる!
もうひと押し!
「ケンくん・・・」
名前を呼んで、ゆっくりと目を瞑り、軽く顎を上げる様にして唇を差し出す。
六栗ヒナ渾身のキス待ちフェイス!
コレで!ドーダァ!!!
来い!
さぁ来い!
ブチュっといっておくれ!
ゴトッ!
ん?
(ひぃ!?)
んん?
変な音の後に、悲鳴のような声が聞こえたような・・・
薄目を開けて見ると、正面に見えるケンくんは私じゃなくて別の方を向いてて、その横顔は物凄く驚いた表情だ。
キス待ちフェイスを解いて、私もケンくんが見ている方向に視線を向ける。
視線の先には、クローゼットがあった。
「桐山・・・か?」
んんん?ツバキ?
なんでココでツバキの名前を?
え?え?どゆこと???
クローゼットの両扉が「キィ」と音を立てて開いた。
すると中から緑色のジャージを履いた足が出て来たと思ったら、全身西中ジャージを着てトートバッグを抱えた女が出て来た。
エェェ!?のび太の机!?
「ふぅ~、やっぱり今年の夏は暑いですねぇ~。あと10分も居たら熱中症になるところでした」
ドラえもんじゃない。ただのツバキだ。
何故かダサい西中スタイルに長い黒髪をシュシュで1つに纏めてて、普段の孤高の優等生スタイルが皆無なやぼったい風貌で「ふぅ~」と息を吐きながら額の汗を拭う仕草をしている。
「お、おま!なんでそんなトコに!?」
ケンくんめっちゃ驚いてる。
私もビックリし過ぎて言葉が出ない。
「そ、それはあのですね・・・そう!クローゼットの中の整頓をしてました!私のお洋服とか色々保管させて頂いてるでしょ?なので整理整頓してたんです!決して隠れてお二人のやり取りを盗み聞きしてたわけじゃありませんよ!」
『盗み聞き』と聞いた途端、一度捨てたはずの羞恥心が甦って来た。
顔が熱くなって、全身から汗が噴き出してくる。
さっきのやり取り、全部聞かれてた・・・
そして、今この部屋には年頃の高校生男女3人居て、その中で私だけ下着姿のほぼ裸。しかも、セクシーさ全振りの黒の勝負下着。
好きな人と二人きりなら最高に甘いシチュエーションだったのに、そこに一人加わっただけで甘い雰囲気なんて全て吹き飛んでしまった。
終わった・・・
今日のデートもロストバージンの夢も 全てが終了した。
海でケンくんに抱き着いてはしゃいでたのが、遠い昔の出来事の様だ。
ケンくんは唖然とした表情のまま固まってる。
どうやら思考停止してしまったみたいだ。
ツバキはトートバッグを抱えたまま床に正座してて、めっちゃ気まずそうな表情で視線を泳がせている。
なんなの、この状況?
なんで私だけ下着姿なの?
って、それは自分で脱いだからだった。
っていうか、今日の為に色々作戦練って念入りに準備して臨んで、今日だってめっちゃ頑張ってようやくココまで来たのに、なんでこうなった!?
なんでココでツバキが出てくんの!?
まさか、私の邪魔する為?
私とケンくんの仲を心配するようなこと言ってたくせに、やっぱり自分も好きだったってこと?
気不味くて重い空気が続く中、羞恥心だけじゃなく、怒りも湧いてきた。
「なんでツバキがココに居るの?」
「ご、ごめんなさい・・・邪魔するつもりじゃなかったんでしゅ・・・」
「じゃあなんでよ!なんでそんなトコに隠れてたの!?」
腰掛けてたベッドから立ち上がってツバキの前まで行くと、ツバキの両肩を掴んで揺すりながら問い詰める。
「そ、それには海より深い事情がありまして・・・」
「だからなんでよ!なんでこんな時に限って出てくんのよ!もうちょっとだったのに!もうちょっとで堕とせそうだったのに!」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」あばばば
やり切れない怒りをツバキにぶつけようとすると、ツバキは壊れたカラクリ人形の様に謝罪を繰り返した。
教室ではいつも優等生ぶって澄ましてて、前にココでケンカした時は余裕たっぷりに図々しい態度を見せてたツバキの、こんな姿を見るのは初めてだ。
ふと、こんな状況でも大人しいケンくんが気になって視線を向けると、私たちに背中を向ける様にしてベッドに横になっていた。
前みたいに、キャパオーバーしたまま寝落ちしちゃったのかな。
なんでこんなことになったんだろう。
恥ずかしいし怒れてくるし悔しいし、なんかやり切れないし、この気持ちをどう昇華すればいいんだろう。
そしてこの状況、どうやって収集を付ければ良いんだろう。
とりあえず服を着た方がいいんだろうけど、今ココで服を着たら負けな気がした。
ココで服を着るっていうことは、今日一日頑張ってココまで積み上げて来たものを否定してしまうような、諦めてしまうような、上手く言葉で言えないけど、兎に角このまま下着姿のままで居ることにした。
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