第17章 夏浪
#97 地上に舞い降りた赤いビキニの天使
1時間ほどの電車とバスの移動で、海岸に面した観光客向けのホテルの前に到着した。リゾートホテルと呼ぶのは
バスを降りると途端に磯の臭いが広がり、海に来たことを実感させられる。
目的地はホテルでは無く海水浴場なので、ホテルに背を向け、向かうべき方向をキョロキョロと確認すると、風向きで海岸への方向は直ぐにわかった。
もうすぐお昼時で太陽が真上に来てるためか日差しが強かったので、被ってた麦わら帽子を六栗の頭に乗せてあげると、「ありがと!似合うかな?うふふ」と相変わらずご機嫌な様子で俺の手を繋いで、弾む様に歩き出した。
手を繋いで歩きながら周囲を眺めると、ホテルと海水浴場以外は寂れた食堂が2~3軒ある程度で、シーズン中なのに思ってたよりも混雑はしていなかった。
堤防を越えて砂浜に出ると、堤防の際に掘っ立て小屋の様な海の家がポツンとあって、食事だけでなくシャワーや更衣室にロッカーなども無料で借りられる様になっていた。
「先に着替えちゃおっか」
「んじゃ、着替え終わったらココで待ってるね」
「うん!なるべく早く戻って来るね!」
「あいよ」
別々に更衣室を借りて手短に着替えを終えて先ほどの場所に戻るが、予想通り俺のが早く、六栗はまだだった。
相変わらず日差しは強く、水着だけだと素肌にひり付く様で、じっとしてても汗が滲み出て来る。
黒い砂の砂浜を見渡すと、親子連れや学生っぽい集団も居れば、地元の小中学生っぽいのも居て、そこそこ賑わっていた。
ぼんやりと突っ立ったまま水平線を眺めていると、突然背後から抱き着かれた。
「え!?なに!?」
「お待たせ!」うふふ
抱き着いた犯人は六栗だった。
冷静に考えれば六栗以外考えられないんだけど、ぼんやりしてたからビックリし過ぎてしまった。
「驚かすなって。超ビックリしたから」
そう言って振り向くと、そこには予告通りの赤いビキニ姿の天使がおった。
人間は本当に感動したとき、言葉が思い浮かばないというのを聞いたことがあるが、本当にそうだった。
いつもの様に褒め讃えなくてはと思うのに、適切な言葉が思い浮かばない。
冷静なのか動揺してるのかすら自分でも分からない。
時間が止まったかのように、ただ見つめ続けていた。
けど、心配していた涙は流すことはなかった。
もしかしたら、ビキニ姿の桐山と二人で撮影会して遊んでたから、耐性が出来てたのかもしれない。
「どうかな? 少し大胆かなって思ったけど、頑張ってみたんだよ?」
「・・・・」
「聞いてる?なんか言ってよ」
「あ、ああ・・・・生きてて良かった」
「ナニそれ!ウケる」ふふふ
今の俺では六栗のビキニ姿の素晴らしさを正確に伝えることは困難だ。
六栗を喜ばせる為だけに聞こえの良いホメ言葉を並べることは出来るだろうが、この感動はそんな次元の物では無かった。
ああ、もどかしい。
浅めなカップが押し上げてるせいで惜しげもなく露出された谷間が歩く度にプヨンプヨンと弾み、少し跳ねただけで暴れる様に上下させる豊満な胸と、今日履いてたショートパンツよりも更に布面積が狭いビキニからはみ出した尻タブが歩くたびにタプタプと動くお尻に、ムチムチと張りとツヤが瑞々しい素肌、そして何よりも、羞恥心を少しだけ滲ませた眩しい笑顔のこの可憐さ。
どんなに言葉を並び立ててもこの素晴らしさを100%正確に伝えることが出来ない自分がもどかしい。
ただ、拙いながらも捻りだすとするなら、桐山のオレンジのビキニ姿が『ピカーン!』とか『キラキラ~☆』って感じならば、六栗の赤いビキニ姿は『ズドーン!』とか『デデーン!』って感じだ。
勉強しよう。
もっと勉強して語彙力と表現力を身につけて、この地上に舞い降りた赤いビキニの天使の素晴らしさを、いつか伝えられるようになろう。
「ケンくん!行こ!」
「お、おおう!」
六栗は再び俺の手を取って走り出したので、置いていかれないように俺も走る。
暴れる胸、弾むお尻。
ああ、生きてて良かった。
何度もそう思ってしまうほどの感動だ。
海最高!
ビキニ最高!
落ち着ける場所を決めると荷物を降ろして、胡坐で座った六栗はヘアゴムで髪を括って器用に団子にし始めた。
普段からよく見る光景だが、これがビキニ姿でとなるとまた違ってくる。
両手を上げての作業は、ビキニに包まれているとはいえ胸や脇の下などが解放されるわけで、普段は見る事のない部位の素肌が丸出しなのだ。
それに、髪を纏める小さい動作だけで豊満な胸も連動して動く
ああ、生きてて良かった。
いちいち感動してしまう。
いや、ダメだ。
今日はスケベなことを考えてはダメだと口を酸っぱくして言われてるんだ。
冷静にならなくては。
決してエロイ目で見てはいけない。
ファーストインプレッションから更にその豊満な胸やムッチリしたお尻の躍り
「なんかよく見ると、ヒナの水着とケンくんのって柄とかよく似てるね」
髪を結い終えた六栗はそう言って、俺の水着をジロジロと観察していた。
冷静さを取り戻した俺も、改めて六栗のビキニを観察した。
六栗のビキニは事前に聞いていた通り、赤の下地に白やピンクのカラフルな花柄がプリントされている。
そして桐山が選んでくれた俺のハーフパンツの水着は、オレンジの下地に白い花のシルエットがプリントされていた。
確かに花の柄が良く似ている。正確には何の花なのかはわからないけど、多分どちらもハイビスカスとかだろう。
色合いは桐山が意図的にお揃いにしたようだが、六栗とは偶然だけど柄がお揃いという訳か。
「確かに似たような花の柄だね」
「なんかお揃いっぽくていい感じだよね? あ!早めに日焼け止めも塗っとかなくちゃ」
そう言って、六栗は自分のバッグをゴソゴソとさばくって日焼け止めのボトルを取り出し、「ケンくん、お願い!」と言って俺に渡して来た。
「え?俺が塗っていいの?」
「うん!任せた!」
「お、おう。分かった」
掌に少量だすと、ヒザ立ちになって六栗の背後から肩や背中に塗りたくって、広げていく。
うなじや腕も同じように塗りたくって行くが、流石に前面や脚は躊躇われたので、「後は自分で塗る?」と確認すると、「全部お願~い」と言って、胡坐のまま体ごと俺に向けて、胸を突き出す様なポーズをとった。
ぜ、全部だと・・・!?
つまり、胸もお腹も太ももも全部ということか!?
「いや、流石に胸や太ももを直接触るのはセクハラになるだろ」
「へーきへーき、今日はデートなんだからケンくんが塗って!」
うーむ
本人が平気だと言ってるし、デートと言われてしまうと言う通りにするべきなのだろうか。
そうだ、桐山から『六栗さんファースト』と指令を受けてたんだ。
ここは謹んで六栗の要望に応えるべきだろう。
しかし、これは初っ端からハード過ぎるぞ。
だって、スケベ心を出さないように六栗の胸や太ももを触る訳だからな。
表情もそうだし、股間だって反応させるわけにはいかない。
つまり、俺の童貞としての精神力を試されているということか。
今日のデート、想像してた以上にハードな一日になりそうだ。
俺は一度目を瞑り、煩悩を滅却させて心が無風状態になったところで静かに目を見開き、腰を降ろしてまずは正面から、お腹から脇腹、鎖骨周辺から胸元へと塗りたくって、次に爪先から太ももへ、そしてうつ伏せに寝そべって貰い、
六栗のツヤのある素肌、特に太ももは見た目通りピチピチしてて、掌に吸い付く様な弾力があって、病みつきになりそうな手触りだった。
けど、掌で触れる度に「うふん♡」とか色っぽい声を漏らすのは、お天道様の下でイケナイことをしてるような気分に陥るから、やめて欲しかった。
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