#90 嬉し恥ずかしショータイム
あれ?ジャージ?
俺の期待してた姿とは違い、桐山は上半身に俺のジャージを着ていてファスナーを首元までキッチリ締めていた。
けど、下半身は何も履いていない。
いや、多分ビキニのパンツを着ているのだろうけど、俺のジャージが桐山には大きいせいで丈が長く、超ミニのワンピースを着ているみたいになってて、腰の周りがすっぽり見えなくなっているけど、長くて白い美脚は全てが見えていた。
ジャージの下を履かなかったのは、以前前後逆に履いてしまったの思い出して止めたのかもしれない。
桐山の表情に視線を向けると、普段教室で猫を被ってる時の様なお澄ましした表情だが、耳や首筋が充血して赤らんでいる。
恐らく、ビキニを着ていることを自覚してて恥ずかしくて、それを隠そうと表情を作ってるのだろうけど、羞恥心で充血するのまではどうすることも出来ないんだろうな。
「約束ですから、石荒さんも着替えてください」
「ああ、そういや俺も水着に着替えて見せるって話だっけ」
俺の部屋で二人きりの状況で、桐山だけ水着ってのは確かにお互い恥ずかしいよな。俺も水着になれば、妙な恥ずかしさは感じなくなるかもしれない。
ベッドから立ち上がってポロシャツを脱いでから、今日買い物した袋から俺の水着を取り出した。
桐山は俺と入れ替わる様にベッドに腰掛け、右手で左の二の腕を押さえるポーズで所在なさげに視線を俺から逸らしていた。
どうせ着替えるのは今朝見られてるし、と躊躇することなく桐山の前でズボンも脱いでパンツ一丁になって、パンツの上からハーフパンツタイプの水着を履いた。
「着替えたよ。どう?桐山が選んでくれた水着。似合ってる?」
桐山が選んでくれたのは、オレンジ色の生地に白い花のシルエットの柄で、一見派手だけどデザインはシンプルだ。
俺が声をかけると、桐山は無言のまま俺の全身を舐める様にジッと見つめてから立ち上がり、着ているジャージのファスナーに手を掛けて、下まで降ろした。
ジャージの前がハラリと開くと、オレンジ色のビキニが見えた。
俺が2つ目にセレクトしたビキニだ。
「おぉ・・・それにしたのか」
思わず声が漏れてしまう。
桐山はそのままジャージを脱いでベッドに置くと、拳を握った右手を胸に当てて、左手はお腹を隠す様なポーズで恥ずかしそうに俯いた。
しかし、どんなに恥ずかしがって手で隠そうとしてても、オレンジ色のビキニに包まれた胸も腰回りも見えてて、ここまで桐山が肌を曝け出すのは初めてだろう。
それにしても六栗が言ってた通り、超絶スタイルの言葉に嘘偽り無く見事だ。
小顔で長身だが、ガリガリに痩せているわけでもムキムキの筋肉質でも無く、芸術的なまでにパーツごとのサイズ感がバランス取れてて、女性のスタイルとしては理想的な完成形だと思う。
腰のクビレの位置が高くて女性独特のS字のラインが優雅な曲線を描いてて、キュとしまったお尻から長くて引き締まった脚がスラリと伸びて、お腹にも無駄な肉が全く無く綺麗な縦長なおへそで、なのに胸にはちゃんとボリュームがあって、ビキニで押し上げてるお陰で谷間がしっかりと出来ていた。
それにスタイルだけでなく、日頃から露出を控えて日焼けしてない真っ白い肌も、産毛の1本すら無くて同じ人間だとは思えないほどきめ細やかで眩しいほどだ。
そして、オレンジ色のビキニのシンプルなデザインが、桐山の美貌と抜群なスタイルの邪魔をすることなく上手く引き立てていた。
見れば見るほど、感心してしまう。
いつまでも眺めていたくなるほど、素晴らしい。
エロイのを期待してビキニ姿を観たかったのに、エロイ目で見てはバチが当たるんじゃないかと罪悪感を抱いてしまうほど神々しさすら感じさせるビキニ姿だ。
先ほどから心臓が五月蠅いほどにドクンドクンと鼓動しているが、今日一日桐山に振り回された疲れが吹っ飛んでしまうほどの感動を覚える。
教室では常に清楚で気品を感じさせる振る舞いの優等生であった桐山の、今まで誰にも見せたことの無いビキニ姿を、今は俺が一人占めしている。
桐山と友達で本当に良かった。
今の俺の素直な気持ちだ。
「す、すげぇ・・・ビキニ似合ってる」
「い、いいい石荒さんも、オレンジ似合ってましゅ・・・」
俺が語彙力無い褒め言葉を口にすると、桐山も恥ずかしそうに俺の水着も褒めてくれた。
そんな桐山を見て、1つの欲求が沸き上がった。
恥ずかしがってる桐山のビキニ姿を、スマホで写したい。
俺はスマホで写真を撮るのも撮られるのも苦手だ。
今まで桐山や六栗をスマホで撮影したことは無かった。
しかし、この羞恥に悶える桐山のビキニ姿を前にして、スマホに残したい欲求が湧いた。
「桐山、お願いがある」
「な、なんでしょうか」
「スマホで撮影させて欲しい!別にイヤらしい目的じゃないぞ!あまりにも桐山のビキニ姿が素晴らしいから、網膜だけじゃなく記録に残しておきたいんだ!別に誰かに見せたりはしない!見るのは俺だけ!頼む!一生のお願いだ!」
俺は両手を合わせて頭を下げて、祈るようにお願いした。
頭を下げたまま返事を待つが、桐山からの反応がない。
直ぐに罵倒で返されるかと思ったけど、違うのか?
あまりにも下らなくて呆れているのだろうか。
それとも、返事に困って悩んでいるのだろうか。
沈黙の時間が、長く感じる。
「条件があります」
「おお!?何でも言ってくれ!どんな条件でも呑むぞ!」
「私にも石荒さんの水着姿をスマートフォンで撮らせて下さい」
「そんなことでいいのか!?全然おっけーだ!」
桐山の了解を得た俺は一気にテンションがMAXになって、急いでショルダーバックから自分のスマホを取り出してカメラアプリを起動しようとするが、テンション上がり過ぎてて指が震えて、ロック解除で手間取った。
なんとかアプリを起動してスマホを桐山に向けると、桐山も自分のトートバッグからスマホを取り出そうとしゃがんでて、俺にお尻を向けていた。
くびれたウエストからのお尻のラインが、すげぇ綺麗な形してる。
ネットでビキニ画像を散々検索したけど、こんなに綺麗な形のお尻なんて見たこと無い。
以前、菱池部長が桐山のお尻のことをベタ褒めしてたことあったけど、これはマジで同意せざるを得ないな。
衝動的にシャッターを押した。何度も。
カシャカシャとシャッター音が鳴ったせいで桐山に気付かれ、「もう写していませんでしたか!?」と怒られてしまったけど、ビキニ姿で怒ってる姿も綺麗だったからシャッター押したら、「一声かけてから写して下さい!私だって恥ずかしいんですよ!心の準備が必要なんです!」とやっぱり怒られたけど、撮影を拒むことは無かった。
調子にのった俺がカメラマンになりきって「いいよいいよ~!素晴らしいよ~!」とベタ褒めしつつ撮影を続けていると、桐山も慣れてきて羞恥心も薄れたのかポーズを取ったり自然と笑顔を見せてくれてたし、動くたびにプルプルと弾む様に揺れる胸とお尻が更に俺のテンションも爆上げして、最後には桐山の腰を抱く様にして二人でくっ付いて自撮りのツーショットも写した。桐山と自撮りするなんて勿論初めての経験だった。
それほどまでお互いテンション上がってて、この日色々あった桐山とのデートの最後は、楽しく盛り上がることが出来た。
楽しい時間はあっという間で、気付けば日が陰り始めてたので、桐山を家まで送って行くことになった。
今日桐山が買った水着や服は、俺の部屋のクローゼットで保管することになり、水着は桐山が自分で洗面所で手洗いしてから俺の部屋に干した。
いつものように自宅のマンションまでお喋りしながら送って行くと、マンションの前で俺に向かって深々と頭を下げて、「今日はご迷惑かけて、すみませんでした」と謝ってきた。
別に謝って欲しいことは何も無かったから、「桐山に謝って欲しいことなんて何も無いよ。むしろ今日はありがとな。やっぱ桐山と一緒だと楽しいし、明日からもヨロシクな!」と励ますつもりで恰好付けて答えると、顔を上げた桐山は飛びつく様にまた俺に抱き着いてきた。
「エェ!?またぁ!?」
「ダイスキ」
「え?」
桐山は一言だけ言うと直ぐに体を離して顔を隠すように俯いたまま、「オヤスミナサイ、マタアシタ」と言って、エントランスに小走りで入っていった。
どうせ抱き着いて来るなら、ビキニの時にして欲しかったなぁ。
それにしても最後の言葉の意味がよく分からんくて、帰り道に色々考えたけど、あれは桐山なりの友情の証だろうと結論付けた。
今まで空っぽだったスマホの画像フォルダに今日大量に増えた画像を、家に帰ってから一枚一枚確認してて気付いたんだけど、桐山が選んでくれた俺の水着は、俺がセレクトした中から桐山が最終的に選んだビキニとよく似たカラーリングだった。
桐山は、恐らく意図的にお揃いっぽくしたんだろう。
なんだかんだと、やっぱ俺達はいいコンビだと思う。
夜、ベッドに横になり、部屋に干されてるオレンジ色のビキニを眺めていると、ぐっすり眠れた。
第15章、完。
次回、第16章 日盛り、スタート。
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