#77 童貞の基本仕様
桐山と自転車の練習や美術部の課題の為のロケハンに行く約束をした翌日。
雨は止んでて、昨夜までの雨で濡れた庭の植木の葉が朝日でキラキラ輝いてて、梅雨明けが近づいているのを感じさせる爽やかな朝だった。
いつもの様に六栗が迎えに来てくれたので、お喋りしながら学校へ向かう。
しかし、久しぶりの爽やかな朝に比べ、悩み事を抱えていた俺の脳内は、どんよりしていた。
ここ数日、俺の頭を一番悩ませているのは六栗への誕生日プレゼントは何がいいのか。
そのせいなのか、この日はいつも以上に六栗が身に着けている物を注意深く観察して、どんな物を好んで使ってるかとか、どんな色合いが好きなのかを調査していた。
しかし相変わらずスカートを短くしてて、ピチピチの太ももが健康的で眩しいけど、普段の学校に行く格好からではプレゼントの為の有益な情報はあまり得られなかった。
なので、何気ないフリして本人に聞いてみることにした。
「六栗って何色が好きなの?」
「え?急にどうしたの?」
「いや、その・・・あ!そうそう!水着!今度行く海水浴でどんな色の水着着るのか気になって!」
どうやら俺は、何気ないフリというのが下手らしい。
「ケンくんも女の子の水着とか気にするんだね。去年の夏休みに一緒に勉強してた時も最初はコソコソ私のおっぱいばっか気にしてたし、ケンくんって結構むっつりスケベだよね」
「・・・」
好きな女子から「むっつりスケベ」と言われると、結構凹むぞ・・・
なんで好きな色聞いたら、俺がダメージ受けてんだよ。
「ごめんごめん、意地悪するつもりじゃなかったの。ちょっと揶揄いたくなっちゃった。うふふ」
「で、好きな色は」
「うんとね、黄色とかグリーンが好きかな。でもこの間買ってきたおニューの水着は赤系だね」
「へー赤の水着なんだ。普段あんま赤系の服とか着てるの見たこと無いし、結構意外だな」
「赤って言っても、赤一色じゃなくて、ホワイトとかピンクも混ざった柄なんだけどね」
「なるほど。因みにビキニなの?こう際どい感じ?」
「・・・やっぱ水着に興味あるじゃん。ケンくんのエッチ」
「水着のデザインに興味持っただけでエッチ認定されるのは異議を申し立てたいんだけど」
「表情とか手つきがエロイの!」
「そ、そうなのか・・・ごめんなさい、以後気を付けます」
「まぁ、ヒナの水着に興味持ってくれてるのは嬉しいんだけどね。中学の頃のケンくん、修行僧みたいに朴念仁だったし、今はそれだけヒナの事にも興味持ってくれたってことなのかな」
で、ビキニなのかワンピースなのかドッチなんだよ!とは聞けなかった。
あ、水着じゃなくて誕生日プレゼントの為のリサーチだったのに、本題忘れてたな。
しかし直ぐに学校に到着してしまい、この話題は打ち切られた。
かに思われたが、教室に入る直前「(ビキニだからね。楽しみにしててね)」とこっそり耳打ちしてから六栗は教室に入って行った。
たっぷり熟した果実の様な豊満な胸(桐山談)がビキニ姿で拝めるのか・・・ゴクリ
流石の俺でも、期待せざるを得ない。
どんよりしてた脳内が晴れて、やる気出て来た。
コレは誕生日プレゼント選びにも熱が入るというもの。
遅れて俺も教室に入り、既に来ていた桐山に「おはよ」と挨拶してから自分の席に座り、通学用のリュックからスマホを取り出して、黄色やグリーンで誕生日プレゼントに何か良い物は無いかと早速調べ始めたが、赤いビキニのことも気になってしまい、そっちばかり画像検索をしていた。
「石荒さん、今朝は随分と機嫌が良いようですね。いつもの3倍のニヤつき具合に流石の私でも動揺を隠せません」
「え?ニヤついてた?」
「ええ、それはもうヨダレでも垂らしそうな勢いでした。よほど良いことでもあったのでしょうか?」
教室では相変わらずネコ被ってる桐山がこんな風に言って来るのは珍しい。
どうやら桐山が我慢できない程、俺のニヤついた顔は酷かったらしい。
「いや、特には。気にしないでくれ」
ポーカーフェイスを装ってそう断ると、桐山に背を向ける様にして赤いビキニの画像検索作業に戻る。
すると、女子特有の甘い匂いがふんわりと漂って来たと思ったら、俺の坊主頭や首筋に何か毛のようなものがワサワサと触れた。
ビクッとして振り向くと、俺の背後から覗き込むようにしながら長い髪を耳にかき上げている桐山が居て、ワサワサしてたのは垂れた桐山の髪だった。
マズイ・・・
ビキニ画像を検索してたの、見られた!?
「何をコソコソしてるのかと思えば・・・」
桐山は過去類を見ない程の蔑みの眼差しを向けている。
「所詮石荒さんも有象無象の男子と同じということですか。ガッカリです」
「いや、高校生男子ならコレくらい普通でしょ!?別に裸の画像とか見てた訳じゃないし!」
思わず声を張り上げて無実を訴えると、クラスメイトたちからの視線を集めてしまった。
そして、特に女子は、桐山と同じような蔑みの眼差しを俺に向けていた。
その中には六栗の視線も・・・
すると、後ろの席の大草に励まされた。
「イシケン、どんまい!」
お前に励まされても、全然嬉しくない。
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