#65 頑なな少女に優等生は
石荒さんに対する本心を話して貰おうと、これまで誰にも話すことの無かった本音を話しました。
勿論、石荒さん本人にも話したことはない自分の気持ちです。
ただし、今朝芽生えたばかりの想いだけは話しませんでしたけど。
この気持ちはまだ自分の中では整理が出来てませんし、今六栗さんに話したところで拗れてしまうのは明白なので。
そんな私の本音を聞いた六栗さんはと言えば
体操座りで私に背を向けて、表情を隠す様に顔を伏せて「ムリムリムリムリムリムリムリ・・・」と呪詛の様に繰り返しています。
雨に濡れてボサボサになったクセ毛のビジュアル的効果も相まって、ちょっと怖いです。ホラーですね。豊坂高校1年では人気ナンバーワン女子と言っても過言では無い六栗さんとは思えません。
それにしても、ここまで来て往生際が悪いですね。
私が居るのを知ってて自らこの部屋へ乗り込んで来たと言うのに、今更なにを恐れているのでしょうか。
六栗さんは、石荒さんを私に横取りされたと思ったのでしょう。
私にも独占欲はありますので、そう思ってしまう気持ちは理解出来ます。
でも私に言わせれば、横取りも何も石荒さんは六栗さんの物ではありません。
幼馴染だからと言って恋愛や交友関係にまで口出しするのは、思い上がりです。
石荒さんがいつでも気を遣ってくれるからとぬるま湯に浸かって甘えてたのに、私の存在に気付いて慌てて石荒さんに怒りをぶつけるのは、ただの傲慢です。
石荒さんを自分だけの物にしたければ、それ相応の行動と覚悟が必要なんです。
私から見れば、六栗さんにはその覚悟が足りないんです。
ウソを付かれてたことに感情的になってるだけで、この先どうしたいのかビジョンが見えないんです。
石荒さんが頭を下げて謝ったら、満足できるのですか?
私と石荒さんが今後口も聞かないと絶交すれば、納得できるのですか?
それで元に戻ってお終いですか?
その程度の自己満足の為に石荒さんや私を振り回そうだなんて、そんな甘い考え通用する訳ないじゃないですか。
だからこそ、私は覚悟を持って自分の本音も話したんです。
ですが、どうやら六栗さんには私の意図は伝わってる様ですけど、自分の本心を話すことに恐れを抱いている様です。
そんなに怖い話なんでしょうか。
アブノーマルな性癖でも持ってて、その対象が石荒さんと言うことなのでしょうか。
石荒さんのことを恋人では無く、性奴隷にでもしたかったんでしょうか。
それはそれでちょっと面白そうなんですけど。
「どうしました?次は六栗さんが話す番ですよ?」
そう言って六栗さんの肩に手を乗せると、全身をビクっとさせて「ひぃ!?」と怯えるような声を出した。
「何を怖がってるのですか?」
「うううう」
「さっきまでの勢いはどうしたんですか?」
「だって・・・」
「・・・・・はぁ」
埒があきませんね。
どうしましょうか。
今まで他人の事情に踏み込むことを避けて来た私には、こういう時にどうするべきかの解決策が思い浮かびません。
いつもなら石荒さんに相談するところですが、その石荒さんには聞かせられない内容でしょうし、寝ちゃってますしね。
あ、お母様が居ました。
お母様に相談してみましょうか。
スマートフォンで時間を確認すると、午後2時を過ぎたところ。
「お手洗いに行きたいので、少し休憩にしましょうか」
「・・・」
石荒さんの寝顔を確認してから立ち上がると、返事の無い六栗さんは一旦放置して部屋を出て、1階まで降りてリビングでお父様とテレビを見ていたお母様に「少しご相談したいことがあるんですけど、お時間良いですか?」と声を掛けた。
お母様は首を傾げながら「ケンサクとヒナちゃんのこと?」と言うので、「六栗さんのことです」と答える。
私の答えと表情から察してくれたお母様は「台所へ行きましょ」と言って移動してくれて、食卓に座って私の話を聞いてくれた。
私からの相談は「六栗さんと喧嘩中で仲直りしたくて本音を話してみたのですけど、六栗さんの方が頑なで殻に閉じこもってしまって困ってるんです」と説明した。
「つまり、ヒナちゃんにも心を開いて欲しいのかな?」
「はい、本音を聞かせて欲しいです」
「うーん・・・こういうのは付け焼刃的な対処じゃ難しいと思うのだけどねぇ・・・」
「そうですね。どうしたらいいんでしょうか」
「・・・あ、お風呂入るのは?」
「え?お風呂ですか?なぜ今に?」
「裸の付き合いって言うじゃない?女の子同士でも裸になって一緒にお風呂に入ったら少しは心を開いてくれないかしら?リラックス効果もあるからね」
「なるほど・・・雨で六栗さんの髪がボサボサでしたので丁度良いかもしれません。今からお風呂お借りしても良いですか?」
「ええ、良いわよ。お風呂の準備しておくから着替えの準備してらっしゃい。ヒナちゃんにはケンサクのジャージでも使ってね」
「はい、そうします。お母様に相談して良かったです」
「参考になったようで良かったわ。うふふ」
3階の石荒さんのお部屋に戻って、未だ体操座りのままの六栗さんに声を掛けながらクローゼットを開けて着替えの準備を始めた。
「六栗さん、今お母様がお風呂の準備してますので入りましょう。着替えは石荒さんのジャージで良いですよね」
「ムリムリムリムリムリ・・・」
「何言ってるんですか。アナタの大好きな石荒さんのジャージなんですから我慢して下さい。お話しの続きは後で良いのでお風呂に入って一度気持ちを落ち着けましょう。ホラ、行きますよ、立って下さい」
自分の着替えと六栗さんの着替え用のジャージ上下を持つと、六栗さんを引き摺る様に1階まで連行してお風呂場へ向かった。
丁度そのタイミングで洗面所から出て来たお母様が「お湯出したままにしてるから、加減見て止めてね」と教えてくれたので、「ありがとうございます。お借りしますね」とお礼を言って、そのまま六栗さんを洗面所へ連れ込んだ。
「ホラ、服脱いでください。一緒に入りましょう」
そう言いながら、服を脱ぎ始めた。
「え?一緒?なんで?」
「裸のお付き合い、でしょうか?」
「なんでアンタと私が!?」
「理由なんて何でもいいじゃないですか。折角お母様が気を利かせてくれたんですし、こんな機会滅多にありませんから入りましょうよ」
「いや、でも・・・」
六栗さんがグズってる間に私は下着も全て脱ぎ終えて、お誕生日のプレゼントに石荒さんから頂いたバレッタを濡らさない様に外して、ヘアゴムで髪を手早くまとめた。
「仕方ありませんね。脱がしますから万歳して下さい。ホラ」
「・・・・」
私が六栗さんのTシャツの裾を持つと、不満げな表情を浮かべながらも万歳してくれた。
こういうところ、石荒さんにちょっと似てますね。
Tシャツにショートパンツと脱がせて下着だけになると、流石に「下着は自分で脱ぐから!」と言って私に背を向けてそそくさと脱ぎ始めた。
六栗さんの豊満な胸を覆うブラジャー、私の手で捲ってみたかったんですけどね。
少し残念です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます