#42 更に深まる疑念と不安
『さいきんいそがしいのはぶかつにはいることになたからすまん』
ヤキモキしながらケンくんからの連絡を待ってて、ようやく来たメッセージ。
因みに、暗号じゃないよ。スマホ初心者のケンくんはいつもこんなメッセージ。
何となくその可能性も考えてたけど、部活かぁ。
好きな女の子と会ってた訳じゃないってことなのかな。
元々陸上やってたし、私と違って成績の方は余裕あるから大丈夫なんだろうけど、これで二人きりで過ごせるのが朝の登校の時間だけになっちゃうのかぁ。
『そうなんだ。陸上再開するの?』
『びじゆつぶ』
え!?
美術部???
なんでまた文化部に???
確かにケンくんは選択科目も美術にしてたけど、美術部に入るほど絵とか上手だったっけ?
因みに私は選択科目は家庭科。本当は私もケンくんと同じのにしたかったけど、サッチーとか友達に誘われて一緒の家庭科にしていた。
って、まさか、好きな女の子が美術部に居るとか???
『なんで美術部なの?ケンくん、絵とか描くの好きだったの?』
『さんねんのひしいけぶちよにかんゆうされた』
ひしいけって名前だよね。男子なのかな、それとも女子なのかな。
3年の部長・・・まさか、その人がケンくんの好きな人?
色々聞きたいことあるけど、スマホにまだ慣れてないケンくん相手だとメッセージじゃもどかしい。
『今、学校なの?お家に居るの?』
『そと』
うーん、外じゃ通話かけるの迷惑か。
明日の朝、聞くしかないのかな。
ケンくんとメッセージのやり取りしてる間に、サッチーともやり取りをしていた。
『深溝くん、良い人だったね。顔も結構イケメンだったし』
『そうだね』
人当たりの良さそうな話しやすい人だとは思ったけど、実は顔までしっかり見て無かった。
サッチーがこんなこと言うってことは、サッチーは深溝くんのこと興味あるのかな。でも、中学の時からの好きな人居るって言ってたし、ただのイケメン好きとか?
『今日ヒナちゃんちからの帰りに深溝くんがヒナちゃんのこと心配してて、しばらく帰りは家まで送った方が良いかな?だって』
それはちょっと遠慮したい。
ケンくん以外の男子と特別仲良くするつもり無いし。
何より、そんなことしてたらケンくんに誤解される。
『それは遠慮したいかな。誤解されるの困るし』
『そっか。そうだよね。男子と二人で帰ってたら付き合ってるとか変な噂立つかもしれないもんね』
『そうなの』
『じゃあ石荒くんに送って貰えるの?』
う・・・
ついさっき、ケンくんからは部活に入ったと聞いたばかり。
あ、でも、文化部ってほとんどの部活は毎日じゃないって説明会で言ってた気がする。
ってことは、日によってはケンくんと一緒に帰れるのかな。
『多分、そうなるのかな』
『石荒くんはストーカー男のこと何て言ってるの?』
ケンくんの好きな子との密会疑惑や突然の美術部入部聞いてキャパオーバーで、私のことは後回しの状況だったから、このことはまだ何も話してない。
『まだ話してないよ』
『っていうか、石荒くんで大丈夫なの?またセクハラされるんじゃないの?むしろ石荒くんもストーカーとか?』
『それは違うよ!前のは事故でちゃんと謝ってもらったし、むしろ私の方がストーカーになりそうで色々我慢してるくらいだよ…』
『そんなに石荒くんのこと好きなんだね。変なこと言ってごめんね?』
『ううん、いっつもサッチー心配してくれるから嬉しいし、気にしないでね』
今日は色々あっていつもよりもスマホを触ってる時間が多かったので、キリの良い所で終わらせて、後は勉強に集中することにした。
でも、勉強を始めても中々集中出来ずにケンくんのことばかり考えている。
勧誘されたって言ってたけど、どういう状況でどんな事情なんだろ。
野球部にスカウトされた時は断ってたのに、なんで美術部は入部することにしたんだろ。
3年の部長に勧誘されたって言ってたけど、その人と何かあるのかな。
やっぱ部長は女子で、すっごい美人で甘い言葉で誘惑されたとか。
GWにケンくんちに落ちてた髪もその人の?
自宅まで来て勧誘してたってこと?
しかもケンくんが好きな人もその人?
でも、ケンくんが年上好きだったなんて今まで聞いたこと無かったけど、もしかして、私がフラれた理由もそこ?本当は年上しか興味ないのかな?
うーん
分からないことだらけで勉強に全然集中出来ないけど、明日まで待つしかないのかな。
明日ならケンくんに直接色々聞けるし、こっそり美術部に覗きに行って3年の部長の正体確かめる事出来るし。
っていうか、私も美術部に入部すれば・・・って、それは厳しいかな。
文化部だったら運動部よりも余裕ありそうだけど、やるなら部活もキチンと頑張りたいし、でもそうなると絶対に勉強に影響出て結局どっちも中途半端になりそうだもんね。
それに、勉強よりも部活優先するなら、もっと別の高校行くべきだったって話になっちゃうし。
豊高に来たからには、やっぱ勉強優先するべきだと思う。
それこそ、ケンくんのことよりも。
ああああでも!
ケンくんのことは疎かに出来ない!
やっぱ女の陰が気になる!
1つだけ確認しよう。
それで今夜は忘れて勉強だけに集中!
『美術部の3年の部長って、男子なの?』
男子であることを願いつつ、送信!
『おんな』
ガーン
悪い予感的中・・・
勉強に集中するどころか、戦意喪失。
今夜はもう寝よう。
嫌なことは寝て忘れるのが一番だよね・・・
もうすぐ中間テストなのに、勉強もそこそこにこの日はさっさと就寝。
翌朝起きると、治りかけていた鼻の頭のニキビが悪化していた。
ケンくんの美術部入部に纏わる様々な疑惑に、思ってた以上にダメージを受けてたみたい。
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