#04 少女の失恋コンプレックス
ケンくんにフラれた私は、しばらくは立ち直れなかった。
悲しいし惨め。
学校ではケンくんの姿を目で追ってしまい、「ああ、やっぱケンくんってめっちゃカッコイイ♡」って和むのに、視線が合った途端、フラれた時の事がフラバして、めっちゃ凹む。
けど、いつもは元気に振舞ってる私が落ち込んでると、周りの友達とかが沢山心配してくれるので、無理に笑ってごまかしてる。
でも、いくら笑顔を取り繕っても、やっぱり気持ちは沈んだまま。
もうダメなのかな。
絶対イケるって思ったんだけどな。
そもそもケンくんってどんな子がタイプなんだろ。
私の何がダメだったんだろ。
だいたいさ、私たち幼馴染だよね?
小学校からの長い付き合いだよね?
なのに「構ってる暇ない!」って失礼過ぎない?
っていうか、こんなにも一途で可愛い幼馴染からの告白、即答でフる?
バレンタインなんだし、少しは悩んでくれたっていいじゃん。
あああもう!
なんかフラれたまんまなの、納得出来なくなってきた!
一言くらい文句言い返したい!
なんでフるのよ!って言ってやりたい!
そんな不満が沸いてきても、ケンくんを前にすると「やっぱケンくんめっちゃカッコイイ♡」って和み、視線が合うとフラバして凹む。
そんなメンタルぐちゃぐちゃなまま2年が終わり、3年になるとケンくんとは別のクラスになってしまった。
まずいよ。
このままだと、ケンくんと更に離れてしまう。
私はまだ諦めきれなかった。
今の私はケンくんの存在無しでは有り得ない。
だから、そう簡単には諦めたりなんて出来ない。
そんな風に焦る私を嘲笑うかのように、3年で新しいクラスになると立て続けにクラスの男子3人に告白されてしまった。勿論全てお断りしたけど。
告白してくれた子たちには悪いけど、自分がフラれた腹いせまじりに、ケンくんみたいに「御免なさいね!」と即答で。
そして失恋を引き摺ったままGWを迎え、『ホントだったら今ごろケンくんと二人で連休を目一杯に楽しんでたのに』とか『でも受験生だから、遊びには行けないか。じゃあ二人で一緒にお勉強だよね』とか『ウチでお勉強しようって誘って私の部屋で二人っきりなれば、ケンくんも大胆になってくれるかな?キスとかされたらどうしよ』とか、妄想に浸るばかりの無益な連休を過ごしていると、ママが「ケンくん、塾に通い始めたそうよ。ふふふ」と教えてくれた。
詳しく聞くと、近所のスーパーでケンくんちのおばさんと会った時に立ち話してたら受験の話題になって、「ウチの子(ケンくん)も今月から塾に通わせることにしたんですよ」と言われ、その塾のことを詳しく聞いてきたらしい。
「勿論ヒナも行くわよね?」
「行くけど、別にケンくん目当てじゃないし」
「うふふ、そう言うことにしといてあげる」
「いや、マ・ジ・で・ケンくん居なくても塾くらい行くし」
「これでヒナの学力上がってケンくんとも親密になれたら、一石二鳥ね。うふふ」
「だからケンくん目当てじゃないって言ってるじゃん!」
「アナタも結構強情よね」
ウチのママ、結構ウザいけど、ケンくんの塾情報に関してはグッジョブと言わざるを得ない。
だけど学習塾に通い始めても、学校の様な勉強以外の部活動や同級生とのコミュニケーションを目的とはしていなくて、あくまで勉強がメインなので、ケンくんと顔を会わせても会話するような機会は無く、相変わらずケンくんの顔見て和んだり凹んだりをグルグル繰り返すだけだった。
すると、そんな私に業を煮やしたのか、再びママが動いた。
塾帰りは暗くて危ないからとケンくんが私を家まで送る様に、ケンくんのおばさんに頼んでくれたのだ。
その話を聞いて、「(私をフッたケンくんが)そんなの引き受けてくれるわけないじゃん!勝手な事しないでよ!」とママに向かって怒ったけど、「あら、そんなことないわよ。ケンくん『六栗も女子だしな。男の俺が守ってやらないとな』って引き受けてくれたわよ?中学生の男の子ってどうしてあんな風に格好付けたがるのかしらね?面白いわよね」と、ケンくんが引き受けてくれたことも教えてくれた。
ケンくん、平気なの?
あれ以来、私と視線が合うと気不味そうに視線逸らすのに、迷惑じゃないのかな?
ホントは嫌々なのかな。
無理してるんじゃないのかな?
でも私のこと心配してくれるなんて・・・やっぱ嬉しい♡
ケンくんと一緒に帰るってことは、二人きりだよね。
これってもう付き合ってるのとほぼ同じことじゃない?
帰り道に公園とかに寄って、二人っきりでお喋りとか出来るかな?
それでお互い気持ちが盛り上がって、「やっぱり俺たち付き合おう!」「うん!付き合おう!」って恋人になって、「好きだ!ヒナ!」「私も大好き!ケンくん!」とか愛を確かめ合って、抱き合ったりキスとかしちゃって、ぐふふ。
とキモい妄想を繰り広げていると、塾の時間になった。
散々ケンくんとのラブラブ妄想をした後に本人と顔を会わせると、私は羞恥心でケンくんの顔をまともに見れなかった。
でもケンくんからは話しかけてくれないので、帰る時間になってから勇気を振り絞って私から話しかけ、ママが無理にお願いしたことを謝り、嫌なら無理しなくてもと気を遣うと、ケンくんは「もし六栗に何かあったらウチの母に俺が怒られる!」と声を張り上げた。
そっか、そうだよね。
ケンくんちのおばさん、厳しいもんね。
私のことを心配して引き受けてくれた訳じゃないよね。
なのに私、バカみたいに浮かれてた。
浮かれてた所を冷たい水をぶっ掛けられたかのような失意のまま、二人きりの帰り道は気不味さMAXで、小学校の時に友達が授業中にお漏らししてしまった後の様な重い空気が二人の間に漂ったままだった。
その日以降も二人での塾帰りの時間は気不味い空気が続き、そんな6月のある日、来るときは降ってなかった雨が帰る時間になると降りだしてて、私は傘を持って来るのを忘れるという失敗をしてしまった。
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