第52話 敗北した七人の女傭兵の末路
「―――だから私、もう男と一生寝ないって誓ったんだ・・・でも・・・」
ドゥーベがミカラに抱き締められながら、頬を赤らめて告げてくる。
「ちょっと変えるよ」
その眼差しは信頼と尊敬と、恋の色に染まっている。
「もう、ミカラとしかしないって、誓う」
「そりゃ嬉しいね」
俺もお前しか抱かないよ、とは絶対に言わないミカラに・・・
「酷い男だよねホント。・・・でも好きっ!」
激しく情熱的なキスをする。
元々竹を割ったような性格のドゥーベ。
惚れてしまえば後は一直線。
もう、曲がったりはしないだろう。
その2人を見つめていたフェクダが・・・
「・・・私は、ハーフエルフの奴隷として売られてたんだ・・・」
そうポツリと零す。
その言葉にスッとドゥーベが身を引く。
ミカラは近寄ってきたフェクダを抱き締めてやる。
フェクダの体中には切り傷や、鞭で打たれたようなミミズ腫れが縦横無尽に走っている。
火を押し付けられたような火傷の跡さえある。
片方の乳房は無惨にも欠損している。
拷問だとしてもやり過ぎだ。
痛めつける事を目的とした所業だろう。
「へへっ。ハーフエルフだからって蔑まれてたのにさ?売られる時は、大森林に住むハイエルフだとか紹介されてさ?笑っちゃうよね?でさっ!落札して頂いたお客様に商品売り渡す寸前に、自分で耳を切り落としてやったよ!あはっ!ははっ!あははははははっ!」
泣きながら笑い出したフェクダの顔をそっとミカラが包みこんでやる。
「俺にはフェクダの心の傷は癒せない」
「・・・いいよ、わかってる。こんな傷物の女、要らないよね?」
さっき初めてミカラに抱かれた時も、フェクダの身体を見て顔をしかめていた。
きっと嫌悪感を抱いたのだろう。
「俺に出来るのは、物理的な事だけだ」
ミカラが・・・
(使わせてもらうぜ?リューセリア・・・リュシオン)
リューセリアと、リュシオンの顔を思い浮かべる。
出し惜しみしたせいで大切な者を失うのは、もう嫌だ。
今の今までずっと出し惜しみして、どんなに危うい場面でもギリギリで使ってこなかった奥の手。
(・・・『聖女』適性、開放・・・)
「な、何コレ!?」
「眩しいっ!」
本来闇の属性を得意とするミカラでは、絶対に使えないはずの、光属性の治癒魔術。
普段ミカラが行う治癒は、体内の魔力や生命力を活性化させ、加速度的に自己治癒を促すものである。
光に属する高位の治癒は、完全な別物である。
(な、何?わ、私の身体が―――)
フェクダはかつてない感覚に戸惑う。
体が熱くなり、失ったはずの部位が疼くのを感じる。
その治癒術が肉体を一旦光の粒子へ変換し、魂に保存されている記憶から引き出した、本来在るべき正常な状態へと再構成していく。
その副産物として、フェクダの身体が日の出の太陽のように輝き、ベネットたちの大部屋をキラキラと明るく照らす。
その光が収まった時・・・
「・・・え、え?」
「す、すげぇ、奇跡だ・・・」
「聖女、様・・・?いやミカラ男だよね?」
フェクダの仲間たちが困惑してる。
そこには、傷一つ無い美しい肌をしたフェクダが佇んでいた。
切ったはずの耳もちゃんと生えている。
変なつなぎ目すらない。
「はぁ、はぁ〜~~、つ、疲れた・・・」
ミカラが仰向けに倒れ息を乱している。
(やっちまった〜〜〜・・・これでしばらく俺は・・・けど)
フェクダの素肌を見て、抱いてる時の反応を見て、なんとかしてやりたいと思った時に・・・もうこうする事は決めていたのかも知れない。
(シェスタに施した眷属化は、それなりに絆が確立できてないと、自我が浸蝕され俺への依存心や忠誠心が強まる恐れがある)
シェスタは直前にとことんミカラの体に溺れさせていたので、眷属化による自我の変質はほんの少しで済んだ。
しかし、今あまり心を開いていないフェクダを眷属化すると、本来の自我を塗り潰して、単なる従順な配下が出来上がってしまう。
フェクダは耳を触り胸を触り、足や腕を触り、あったはずの傷跡が全て消えている事に驚く。
「う、嘘だ・・・耳が・・・傷が・・・な、治って・・・ うぅっ!」
そこから先は言葉にならず、泣き崩れるフェクダ。
(フェクダをフェクダのまま救うには、これしかなかった)
ミカラはふらふらしつつ立ち上がり、フェクダを優しく抱き締めて、耳元で囁く。
「・・・えーと、その、フェクダ?」
「な、なに?わ、わたし・・・どうしたら、いい?」
フェクダが泣きながら困惑する。
どんな風に感謝を伝えればいいのか解らない。
どんなお礼をすればいいのかわからない。
(・・・処女なんてとっくに失くしてるし、そもそも感覚も無いんだよね・・・)
フェクダの女としての部分は、奴隷商に折檻されていた時にズタズタにされている。
子宮までその破壊は及んでおり、恐らく妊娠出産は絶望的だ。
ミカラに先程抱かれた時も、なんの感触も無かったのだ。
(ミカラに、あげるものが、なんにも無い・・・)
体が綺麗になった喜びが消え、途端に地の底に落ちたような暗い気分になる。
そんな風に落ち込んでいるフェクダに対して、ややバツが悪そうに話しかけてくるミカラ。
「あの・・・ 全身治癒した時に、性器周りの損傷も修復しちまったから、さ」
「へ?」
どういう意味だろう?
フェクダが呆けた顔をする。
確かに、高位の治癒術は欠損した手足や内臓すら修復するらしい。
ミカラの治癒術は、十年以上前の古傷すら癒やした。
だけど・・・
それって・・・
「え、じゃあ、私・・・」
思わず股の間に手を伸ばし、指で触ってみる。
「あうっ!」
感覚が、あった。
もしかして、アレも再生してる???
「フェクダの初めて・・・改めてもらっていいか?」
ミカラが真剣だが、なんとも言えない顔をしている。
「う、うん。あげる。ミカラに全部あげるっ!」
そう応えても、ミカラの変な顔は変わらない。
「な、なんて顔してるの?」
嬉しくないのだろうか?
やはり表面的に綺麗になっても、自分は汚された傷物に変わりないのだろうか。
フェクダの心に不安が広がる。
もうミカラに全てを捧げてもおかしくないくらいの感謝の念を抱いてるのに、ミカラの態度がなんだか変なのだ。
「いや・・・ずっと隠してた切り札使ってまで、処女欲しかったのか・・・とか、思われたら嫌だなぁ〜って」
ミカラがそう言って、頭をかいている。
「ぷっ!あははははっ!何それ〜〜!」
ハーフエルフの少女が笑う。
さっきとは違う、明るい笑顏だ。
目に涙を溜めてまで笑ってから、フェクダはミカラに抱きつく。
「いいよ、私の初めて・・・もらって?」
「おう。んじゃ、遠慮なく」
ミカラはそう言うと、ガバリとフェクダを押し倒す。
その欲望への忠実っぷりから、やっぱり処女が欲しくて治癒をしたのではないだろうかと思ってしまう。
(・・・こんな事、あっていいのかな?・・・いいんだよね?・・・私、幸せになっても・・・)
確かに奴隷として過ごしてきた記憶は無くならないし、きっとこれからも思い出して辛くなる時はあるだろう。
けれど・・・
(私はもうミカラのものだから・・・ミカラに全部、あげるんだ・・・)
ミカラに抱かれて破瓜の痛みは感じたが、それは幸福感を、生きている実感を、女としての悦びをもたらしてくれた。
「好き。ミカラ、好き」
痛みをこらえながらも、ミカラに応えようとするフェクダ。
「うーん。傷を治したから惚れろってのも、俺の主義に反するんだけど」
視線を逸らしてボソリと呟くミカラをフェクダが咎める。
「もうっ!変なとこで偏屈なんだからっ!私が好きって言ったら好きなのっ!ミカラの、子供っ!絶対に生むからねっ!」
女としての機能は死んだ。
女としての快楽ももう味わえない。
そう思って絶望していた。
(ミカラが、救ってくれた)
物理的な事しか出来ないだなんてとんでもない。
心に優しく寄り添われても、フェクダの身体が治る訳ではないのだ。
下心があろうとなかろうと、この肉体を元通りにしてくれたミカラには、惜しみない感謝と尊敬と、深い愛を抱くのを止められない。
男という生き物全体に対する憎しみ恨みで生きてきた少女は、今はミカラのためだけに生きようと決めた。
「あーあ、駄目だこりゃ」
ベネットが、幸せそうにミカラに抱かれてるフェクダを見て・・・諦める。
(そりゃ反則だろ?)
すぐに全員ミカラの女にされてしまう。
ミルザの心を開いただけでも大したものだとは思った。
ドゥーベならまぁ、アッサリ堕ちるとは予想していた。
しかしまさか、フェクダの肉体を完全に修復し、そのうえで抱いて堕とすなど、誰が考えたであろうか。
他の女たちも、唖然としてミカラとフェクダを見ている。
本当は皆、綺麗な体になったフェクダを祝ってやりたいが、今は取込み中のようで誰もフェクダの邪魔を出来ない。
(得体の知れないヤツ・・・)
戦闘能力だけでなく、治癒術も最高クラスの使い手。
(そんなヤツが、なんでわざわざアタシらを・・・?)
ミカラは次はメグレーズを抱いていた。
2回目だ。
メグレーズは・・・
「わ、私も、フェクダみたいに、して?」
ミカラに哀願していた。
その悲痛な表情を見て、ミカラも頷く。
「・・・わかった」
メグレーズは、以前所属していた傭兵ギルドのクランに居た時に、酒に薬を混ぜられて眠らされ、仲間と思ってた男全員に犯された。
正気を取り戻した後に何人かは殺し、手こずった相手も股間だけは切り落として逃げ出した。
仲間殺しの汚名を着せられ、流れ流れてこの地まで来た。
「ん・・・私も、初めてをミカラに渡す」
光の治癒が収まった後、自分の肉体の状態を確かめたメグレーズが、恥ずかしそうにミカラに告げた。
「おう、美味しく頂きます」
「もう、真面目にしてよぉ!」
ミカラの治癒により取り戻したモノを、そのまんまミカラに捧げようとする。
「だって、そんなキリっとした顔してんだもんよ?」
ミカラが意地悪そうに笑う。
メグレーズが眉間にシワを寄せて真剣な眼差しをしているからだ。
あんまり色っぽくない。
「だ、だって仕方無いじゃん」
メグレーズの経験は、その時の酷い思い出と、さっきのミカラとの1回戦だけだ。
仕切り直しの初めてを3回目とカウントしても、とにかく経験が無い。
緊張もする。
「大丈夫だって、俺に任せておけよ?」
「くっ・・・あ、愛してるとか、言ってくれないのか?」
メグレーズは意外にも、そう言った事に拘るらしい。
騎士みたいに生真面目なところのある娘だったから、妙なところで律儀なのだろう。
「可愛いよ、メグレーズ」
「違う、そうじゃな・・・んっ」
問答無用にミカラに唇を奪われ、なし崩し的に初めてを散らしていく。
ずっとキスをしたままだ。
メグレーズが逃げようとしてもミカラが逃さない。
(うわぁ、アレやられたらイチコロだよ・・・)
始めは痛みに眉をしかめていたメグレーズが、その目を段々とトロンとさせていき、顔が完全にふにゃふにゃになった辺りで・・・完全に堕とされた事が、わかった。
(そんなに、愛してるとか言いたくないのかね?)
ミカラのような軽薄な男ならそれこそ抱いた女全部に言ってそうなものだが・・・
(本命でもいるのか?昔の女かな・・・)
ベネットは、ミカラが昔の女を忘れられていない事に少し嫉妬する。
ミカラはぐったりしたメグレーズを優しく抱き下ろすと、鼻息荒く迫ってきた大柄な女を抱きとめる。
メラクが興奮していた。
次々と仲間たちが女にされるのを見て・・・恐怖より期待が勝ったらしい。
「わ、私は昔から力が強くって・・・は、初恋の・・・ずっと好きだった男と初めてした時、ヤり過ぎて・・・相手のアレを、血まみれにしちゃって・・・それ以来、男を抱き殺す女オーガだって言われてて・・・」
メラクの声が萎むように小さくなる。
他の仲間たちの身の上は、男から虐げられてきた側の話だ。
だがメラクの場合は、どちらかと言うと加害者っぽい。
そのメラクの初めての相手は、もしかしたらトラウマで勃たなくなってるかも知れない。
しかしどんな理由であれ、傷ついた女を助けるのがミカラだ。
「可愛いぜ、メラク」
ミカラはそう言って微笑み、彼よりも肩幅があり背丈もある大女を、優しく抱き締める。
「メラクの何処がオーガなんだよ?こんな可愛らしいオーガが居てたまるかよ」
ミカラが身体強化をしてメラクを押し倒す。
「うわっ!凄いっ!まるで抵抗できないっ!」
普通なら嫌がるはずなのだが、男に力負けした事がないメラクは、膂力で圧倒される事に新鮮さを、悦びを感じていた。
少し恥ずかしげに、ミカラにオーダーしてくる。
「・・・あの、ちょっと、強引に乱暴にして、欲しいかも。男の人に強引にされるの・・・あ、憧れてて・・・」
「わかった」
ミカラが身体強化をさらに強め、メラクが身動き一つ出来ないようにしてから、その肉体を堪能する。
「ああっ!私、今、男に無理矢理されてるっ!」
悦びの悲鳴を上げるメラク。
体に相応しく、声もデカイ。
(『防音』の魔術結界張っておいて良かった〜)
おっぱじめる前にちょいと細工をしておいた。
このメラクの大声なら、宿屋の周囲にも喘ぎ声が響き渡りそうである。
「おう!メラクは俺の女だ。体に教え込んでやるぜっ!」
「うわっ!ホントにびくともしないっ!ミカラ凄いっ!」
か弱い乙女のように、男の力に屈伏されて喜んでいるメラク。
(こんなプレイと考えたら、アリか?アリなのかコレ?)
少し首を傾げつつも、満足そうに気を失ったメラクを見て、取り敢えずミカラも納得しておく。
「あ」
ベッドを占領していたメラクの巨体を、褐色肌の魔術戦士がゴロンと転がし床に落とす。
ズズンッ!と、地響き立てて落ちたにも関わらず、メラクは幸せそうなだらしない顔で気を失っている。
(頑丈だなぁ、まさに盾役)
ミカラがメラクの、頑丈というか図太さに感心していると、アリオットが話しかけてくる。
「あのさ、ミカラ・・・」
正直、このクランの中で1番プロポーションがいい。
口に出したら戦争が起きそうだが、1番ミカラ好みの身体をしている。
「私さ、こんな体じゃん?変態にはよく遭うし、知り合いの男には襲われそうになるし・・・いっそ切り落としちゃおうかとも思った事あるんだよね」
アリオットが己の巨大な胸を隠すように腕を組んでいる。
その腕を掴んで開いて、ミカラが告げる。
「ふざけんなよ?コレはもう俺のものだ」
「あ、ちょ・・・ん」
胸が弱かったのか、ミカラの愛撫に身もだえるアリオット。
「んもうっ!ミルザやフェクダ、メグレーズには優しくしたのにっ!私にはないのっ!?」
「優しくする」
「そ、そうじゃなくって―――あっ!」
アリオットには、その豊満な肉体を性的な目で見られ続けた事による男性不信があった。
あったのだが・・・
「・・・私のおっぱいは、ミカラにあげるためにあったんだね」
2回戦目の後・・・そう言って、褐色の肌の豊かな胸でミカラを包み込むアリオット。
「嬉しいこと言ってくれるね」
ミカラはその先端に口づけし、欲望のままにアリオットを抱き始める。
3回戦目に突入だ。
「ずるいぞっ!次は私だってばっ!」
ドゥーベがミカラの背中に抱きついて首筋に噛みついてくる。
一周するまで我慢していたのだ。
「いててて、やめろっておい」
身体強化を強めたらドゥーベの歯が折れてしまうので、甘んじて歯型を受け入れるミカラ。
仕方無いので2人同時に相手をし始める。
「マジかよ、アンタ・・・」
ベネットが驚愕の眼差しを向けてきている。
彼女の妹分6人全員が、結局はミカラの女に堕とされてしまったからだ。
だのにまだ女を抱こうとする。
底無しだ。
さっきまで多少の余裕はベネットにもあった。
1人2回として14回、それだけやれば弾も尽きて勃たなくなるはず。
ゆえに率先して抱かれて、早く終わらせようと画策していた部分もある。
だがそれは無駄な事だった。
「よし。トリはアンタだったっけ?ベネット?」
ドゥーベとアリオットをやっつけたミカラが、クランのリーダーへと歩み寄ってくる。
「ま、待ってってば!アタシも、そりゃ、アンタの事は憎からず思っちゃいるけど―――」
ここまで来たら、もう言い訳できそうにない。
心を明け渡す事に、今更ながら若干の恐怖を覚える。
この男はベネットが完全に堕ちるまで、抱くのを止めないだろう。
「そう言う話はベッドん中ですんのが礼儀だろ?」
「きゃっ!」
可愛らしい悲鳴を上げる七人の女傭兵のリーダーを、ミカラはベッドに押し倒し、組み伏せ、屈伏させていった。
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