第22話 幕間ー変化ー

ニコラオスと出会ってフォティアの状況は一変した。


事件のあった翌日、ニコラオスはラルマ邸へフォティアの様子を見に来てくれた。

ニコラオスの来訪に両親はかなり驚いたらしい。


先触れはあったものの突然のことに慌てふためく両親をフォティアは冷めた目で見ていた。


ニコラオスはフォティアの両親に、口調は穏やかにでも厳しく、ああいった犯罪まがいのことをするのはたとえ両親でもいかがなものか、政略結婚は貴族にとってよくあることではあるが、子どもの気持ちを完全に無視した行いは見逃せないと忠告してくれた。


整った容姿だけでなく一本芯の通った姿勢、それにフォティアのことを気づかってくれる姿に、フォティアは心が高鳴っていくのを止めることができなかった。


その日を境に、ニコラオスはたびたびフォティアをデートに誘ってくれるようになる。


ニコラオスは公爵嫡男の立場をひけらかすこともなく、気づかいも細やかでとても素敵な男性だった。

そんな人に誘われてフォティアが恋に落ちるのはあっという間だ。


婚約者のいないニコラオスに誘われる意味。

それをフォティアも考えないわけではない。


高まる期待と共に、とうとうニコラオスの気持ちを確認しようと思ったその日、ニコラオスは不意にラルマ家の担う外交について聞いてきた。


「トウ国、ですか?」


ニコラオスはフォティアにトウ国人に会ったことがあるかを尋ねる。


「父が外交を担当していることもあり、家へ国外の方が招かれることも多いですからトウ国の方とお会いしたことはあります」


質問の意図がわからないながらも答えると、その様子をじっと見つめていたニコラオスはトウ国の人をどう思うかと聞いてきた。


「見た目の印象はロゴス国の国民とはだいぶ違いますが、話してみればおもしろい方もたくさんみえましたよ」


正直に言えばフォティアもトウ国人の見た目に対してそれほど好印象というわけではなかった。

ただ、ニコラオスに言った通り、話してみればロゴス国の人となんら変わりなかったのは確かだったのでそう答えたにすぎない。


だからその答えにニコラオスがとても嬉しそうだった理由がわからなかった。


のちに、ニコラオスが大切にしている弟がトウ国人の特徴を濃く受け継いでいることを知った。


ディカイオ公爵家の次男は存在こそ明らかにされていたが、領地から出ることがなく王都の貴族はほとんど会ったことがなかった。

話題にされることすら少なかったため、フォティアもニコラオスがトウ国の話題を出すまではすっかり忘れていたくらいだ。


あの時の答えがニコラオスにとってとても重要だったこと、図らずも自分が正しい答えを出せたことに、フォティアはのちのち気づいて安堵するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る