第94話 ゲーム
美月さんとのゲームをしようとゲームの準備を始めた。
「色々あるけどどれにする?」
「そうですね、じゃあこれが良いです。これはこの前
そう言って美月さんが選んだのは長年愛されているレースゲームのシリーズ最新作だ。もちろん俺もやっているし歴代のシリーズも少しはやっている。
「これで良いんですか?俺得意ですよ」
「この前やったのは初めてだったので上手く出来ませんでしたけどこれは持っているので私もできます」
美月さんはいつになく自信満々に語っている。もしかしたら本当にこのゲームは上手いのかもしれない。
「早くやりましょう。悠真さんのことをあっと驚かせてみせます」
「楽しみだ」
そう言ってソファーに二人で並んでゲームを始めた。
ある程度ゲームを続けた辺りで美月さんが一言発した。
「なんで一回も勝てないんですか!!」
そう、勝負は全部俺の勝ち。美月さんも決して下手なわけでもないしどちらかと言うと上手いほうだ。それでも戦績は俺の全勝。
それもそうだろう。俺はこのゲームのネット対戦もしていて、そのレートは世界でもトップクラスだ。もちろん本気じゃないキャラピックだとしてもテクニックでそうにでもなるし負けるわけがない。
でも、正直何回か負けそうになる回はあった。俺のミスが多すぎるのが原因なのだがそのミスの原因は俺じゃない。
「もう一回です。次こそは勝ちます」
美月さんの負けず嫌いな部分が顔を見せておりもう一度勝負を挑んできた。そろそろわざと負けて美月さんに華を持たせるのも考えたが、そんなことを美月さんが望んでいるとは思わない。でも、次は勝てないかもしれない、そんな気がして仕方がなかった。
そうして始まったレース。美月さんはさっき俺に言い寄ったときのままでさっきより距離が近い。
そして美月さんはさっきまでのレースでわかったが曲がるときにコントローラーだけでなく体も一緒に傾いてしまう人だった。そのためさっきまではコースを曲がるたびに触れるか触れないかの寸前まで近づいていた。
さっきより近づいている美月さん、曲がるときに体も一緒に傾いてしまう美月さん、そこから導き出せると思うがそんなことが起きてしまった。
コテン
「え」
右に曲がるタイミングで美月さんが傾いたときに俺の肩に美月さんの頭が乗っかった。俺は動揺して操作をミスしてしまった。そして美月さんが乗っている肩を動かしてしまい美月さんは俺の前に横になるようになるように倒れていく。
その倒れた先には俺の太ももがある。そう、そして膝枕をしている状況が出来上がる。
「「っっっ///」」
二人して顔を真っ赤にして固まった。不意にこんな状況になったんだ固まってしまうのも当たり前だ。それでも俺は美月さんのことをどかそうとは思わないし美月さんもどける素振りは見せていない。
俺はこの状況は緊張して大変なことになるので脳のリソースをゲームに割いて今のあいだだけでも平常心を保とうとした。
でも、そんなうまくいくはずもなく、いつものようなプレーは出来ず11/12という順位になった。ちなみに美月さんは最下位だった。
「「・・・」」
そしてレースが終わり結果発表のタイミングで俺たちのあいだに沈黙の時間が流れた。もちろん原因は分かっている。それでも俺たちは動かなかった。
俺は美月さんのことを膝枕していることを喜んでいるからどかす訳がないし、降りてもらおうとも思っていない。それに美月さんの顔を見てみてもまんざらでもない様子だし。
「悠真さん」
「はい」
「もう少しこのままでも良いですか」
「もちろんです」
予想通り美月さんはこの状況を気に入っていた。俺としても美月さんと触れ合えるのは嬉しかったし、なによりこの行動は恋人っぽいし良い!!それにしても美月さんは可愛いな。
「髪型崩れるかもしれないのであんまり激しくしないでくださいね」
「え?、、あ、ごめん」
俺は無意識のうちに美月さんの頭を撫でていた。俺はその手をどかした。
「撫でられるのが嫌だったわけじゃありません。むしろ撫でられるのは好きですからもっとしてほしいくらいです」
そういう美月さんの目は欲しいものを親にねだる小さい少女のような目をしていた。俺はそのままもう一度美月さんの頭を撫でた。もちろんさっき言われた通りに美月さんの髪型を崩さないように。
「えへへへ」
何その可愛い声。もっと聞きたい。それに絶対にその声他の人に聞いてほしくないんだけど。
美月さんは頭を撫でるたびに可愛らしい力の抜けた声をだし、頬の口角は上がっていった。
「美月さん、絶対に外でそんな顔しないでくださいね」
「むっ、大丈夫ですよ。私がこんなに気を許してるのもこんなふうになるのも悠真さんだけですから」
そんなことを言う美月さんに俺の心臓は撃ち抜かれた。そして絶対にこの顔を守ると心に誓った。
「それより悠真さんに一つ言いたいことがあります」
「なに?」
「なんで私のことをさん付けで呼ぶんですか」
「今までもそうだったからだけど」
「悠真さん、私達は恋人になったのですよ」
「そうだね」
「したがって名前の呼び方も変えるべきだと思います」
呼び方を変えると言ってもどうしたら良いんだ?冬城さん、ってのは距離がよりできてるように感じるし、かといって良さげなあだ名は浮かばないしな。
「私はみーちゃんと呼んでもらっても構いませんよ」
「それは俺が恥ずかしいので却下で」
「えー」
えーじゃないよえーじゃ。名前を呼ぶだけで毎回俺の心臓が爆発するっての。そんな事になったら一緒にいるどころじゃなくなるから。
「美月」
「っ///」
「あ、照れた」
「う、うるさいです」
「無難にはなるけど呼び捨てにするよ」
「及第点ですね」
「さっきまであんなに照れてたのに?」
「うるさいです。忘れてください」
そう言って美月さんは俺の顔まで手を伸ばして頬を引っ張ってきた。力はそんなに強くないし、俺の頬も柔らかくないので全然伸びなかった。
こんなふうにじゃれてる姿も可愛い。これはベタ惚れしてるからそう感じるのかな。
「あ」
「どうしたんですか?」
「名前だよ」
「名前がどうしました」
「俺だけ呼び方を変えたのに美月が悠真さんなんて呼んでたらおかしいだろ」
「うっ、バレましたか」
美月さんは目を泳がせた。俺だけ呼び方を変えるのは違和感があるし一緒に変えたほうがいい。っていうか、悠真さんって呼ばれるのがむず痒いから変えてもらいたいっていうのもある。
「ゆーちゃん?」
「それは恥ずかしからやめてくれ。てか覚えてなくていいから早く忘れてくれ」
「いやです。忘れないですよ。でも、コレはもっと他のタイミングで呼んだ方が良さそうですね」
「勘弁してくれ…」
ゆーちゃんって母さんに呼ばれるのも最初は抵抗あったんだから。もし今度帰ってきた時にゆーちゃんって呼んだら無視してやろうかな?
いや、母さんのことだから振り返るまで呼び続けるだろうし、久しぶりに会うんだそのくらいは許しても良いかもな。
「うーん、なかなか思いつきませんね」
「悠真って呼び捨てじゃダメなのか?」
「ダメじゃないですけど
「それもそうだな。じゃあわかった。とりあえず決まるまでは今まで通りでいこっか」
「それでいいんですか?」
「ああ。変に変えても違和感あるだろうしな」
正直むず痒い部分もあるがしっくりきている部分もある。だからこのままでもいいかなと思った。
「わかりました。考えておきますね」
「ああ、期待してるよ」
そう言って俺は美月さんの頭を撫でた。
「ふふ、ゆーちゃん、好きだよ」
「っっ///」
「あ、照れましたね」
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