第四章 夏祭り〜文化祭
第92話 初めての彼女
俺は朝からずっとソワソワしていた。いや、正確には昨日の夜から緊張してたしソワソワしてました。はい。
なぜなら今日は
ソファーに座りながら美月さんが来るのを待っている。今までも何回か美月さんが俺に家に来たことはある。
でも今までとはわけが違う。この前の夏祭りのときにお付き合いを始めて恋人になってから初めてだ。状況が変わると感じるものも変わってくる。
あのときとは違い恋人になったのだ。俺にとって初めての恋人なので何をしたら良いのかが分からない。世の恋人達がどのようなことをしているのかを参考するしか無い。
ピンポーン
ガチガチに緊張している俺の耳にそんな音が聞こえた。この音はエントランスからの呼び出し音だ。
確認してみるとそこにいたのは先日恋人になった美月さん・・・ではなく
「宅配便です」
ダンボールを持った宅配便の男の人だった。
俺はお前かよというその人にとっては理不尽な文句を心のなかで吐きながら、エントランスを通して家まで運んでもらった。
俺はそのダンボールをひとまず自分の部屋においた。
ん?そういえばこのダンボールの中って何が入ってるんだ?俺はがネット通販をした覚えが無いしこのダンボールに心当たりがない。でも宛先住所は間違えなく俺の家だし名前も俺の名前だ。
ピンポーン
そんなことを考えているともう一度呼び出し音がなった。確認すると今度こそそこには女神のように輝いている美月さんがいた。なんだか後光が輝いている気がしなくもない。
俺はエントランスを通した。美月さんがこの家に近づいてくる。そんなことを意識してしまう。そんなことで頭がいっぱいになっていたからさっきまで考えていたダンボールについてのことがすっかり頭の中から抜けていた。
「お邪魔します」
「いらっしゃい」
鍵を予め開けておいた玄関のドアが開き美月さんが俺の家の中に入ってきた。俺は出迎えてソファーに座ってもらう。
ソファーには二人で座ったのだが俺は右の端に、美月さんは左の端によって座っているので二人の間に人ひとり分の隙間が出来ている。あれ?このソファー確か二人で座るようだったはずなんだけどな。
美月さんの方を向くと心なしかいつもより表情も硬いし背筋も伸びている気がする。
「美月さん」
「は、はい、なんでしょうか」
あ、いま声裏返った。いったい何があったのだろうか。もしかして、美月さんも俺と一緒で緊張してる?
「美月さん、もしかして緊張してます?」
「、、、はい」
やっぱりそうだったか。美月さんから感じた違和感の正体はそれだったのか。
「
「はい、なんですか?」
「その、ですね、私達はお付き合いをして、その、恋人になったじゃないですか」
「そうですね。今でも夢のようで現実味がないです」
「それは私もです。そこでなんですけど、恋人って何をすれば良いのでしょうか」
「そんなの、、、」
あれ?何をするって言われても全くわからない。俺にとって初めて出来た彼女だから経験とか全くないし、俺の持っている知識の恋人がすることを覗くと恋人っぽいことをするとしか書いてない。恋人っぽいことってなんだよ。
「なんでしょうね」
「もしかしてこうやって家にあがるのも普通はしないのでしょうか。昨日は嬉しすぎて思考が上手く出来ず欲望がそのまま出てしまっていて」
なにそれ尊すぎるんだけど。美月さんが心から俺の家に来たいって思ってたってことだよね。もうどんどん来てくださいって感じなんだけど。いつ来ても大歓迎です。心臓はもたないけど。
「そんなことは無いんじゃないかな。ほら、身近だと
「そうならいいのですが。はしたないと思わないですか?」
「え、なんでです?むしろ大歓迎です」
「そ、そうですか」
まあ流石に美月さんの家に行くのはハードルが高いんだよな。ほら俺の家と違って他にも家族が住んでるわけじゃん。今以上にガチガチになるのは目に見えてるし、なんなら石像にでもなれる気がする。
「話は戻るんですけど、恋人って何したいいのでしょうか」
「そうだな、」
一言に恋人と言ってもその在り方は千差万別だ。一組として同じ恋人はいないだろう。それぞれがそれぞれの恋人のカタチを作っている。となると俺の答えは一つだ。
「考えなくて良いんじゃないかな」
「え?」
「ほら、恋人って言っても色んな人達が居るわけじゃん。俺たちは俺たちなりの恋人のカタチっていうのを見つけていけばいいと思う」
「私たちの恋人のカタチ、、」
俺たちの、というか俺の場合そういう恋人のカタチを参考にした場合、それにばっかり囚われて失敗する気しかしないしな。
「では、悠真さんはどのようなことがしたいですか?」
「俺か、うーんそうだな、あ、一緒に何かをしたいかも」
「?」
俺の返答に対して美月さんは疑問符を浮かべながら首をかしげた。いや仕草がいちいち可愛いなこのヤロウ。いくつ心臓があっても足りないじゃないか。
「そうだな、例えば一緒に料理をしたりとかして同じ時間を共有したいって感じ。別に何をするか自体は特に要望がないけど、せっかく一緒にいられるわけだし同じものを共有したいって想いがある、かな」
「なるほど。それは良いですね。私もしたいです」
「それで、美月さんは?」
俺が聞くと少し考え込む美月さん。そしてポッいう効果音が聞こえてきて頬を赤らめた。何この効果音、アニメとか漫画とかでしか聞いたことが無いんだけど。
「どうしたの?」
「その、ですね、思いついたには思いついたのですが、恥ずかしいと言いますかはしたないといいますか」
「?」
次は俺が首をかしげる番だった。美月さんのことをはしたないなんて思ったことが無いし美月さんのことはすべて受け入れるつもりだ。え?もしかしてこの考えって重い?いやいや、そんなこと無いはず。大丈夫だよね?
「とりあえず教えてくれないかな」
「そ、その、ですね、ひ、引かないでくださいね」
「大丈夫、俺が美月さんのことを引くだなんてそんなことは無いから」
「うう、その、悠真さんに甘えたり甘やかしたりしたいです」
美月さんはさっきよりも真っ赤になりながら話してくれた。
ううん、後半の方は声が小さくなって聞き取りにくかったけど聞き取れたはず。えっと、正直なことを言うと、何その可愛らしい要望。です。
俺は美月さんのことならいくらでも甘やかせるぞ。うん、心の準備も出来た。
「いいよ。なんだかそれこそ恋人って感じがするしね」
「いいんですか?」
「うん」
「ではさっそく」
そう言ってさっきまであったソファーの隙間を詰めて俺の隣に座った。
「こうやってくっついても良いんですよね」
「うん。・・・やっぱりだめかもしれない」
「なんでですか!?」
「俺の心臓がもたない」
「それは我慢してください。私もドキドキしてるんですから」
今にでも俺の心臓の音が美月さんに聞こえるんじゃないかってくらいには心臓の音が大きくなっている。でも、これは俺の願いでもあったし美月さんの願いでもある。本当はくっついていたいが本音である。
「そうです、悠真さんに一つ言いたいことがあるのです」
「?、なんですか?」
なんだろう聞きたいことって。正直心当たりが無い。過去のことだって色々美月さんには話している。
「悠真さんは健一さんなどと話すときはタメ口じゃないですか」
「そうだね」
「私と話すときは敬語になるじゃないですか」
「そうですね。美月さんが敬語で話すので」
「ほら、今もです。最近は私と話すときもタメ口を使うことが多くなったじゃないですか」
「そうかも?」
「どちらかに統一しませんか?ちなみに私はタメ口が良いです」
「その心は?」
「敬語だとなんだか距離がある感じがするじゃないですか」
「その言葉そっくりそのまま返してもいいか?」
「だめです。これはもう癖ですので」
急にどんな話がされるのか身構えていたがそこまで身構えなくても良かったかもしれない。たしかに美月さんとの距離を詰めようとしてタメ口みたいになってたかもしれない。
美月さんが敬語で話しかけてくるから敬語には敬語と思って敬語で話してたんだけど美月さんからしたら距離を感じるということか。いや、それなら美月さんが敬語を使ってる時点で同じ現象が起こってるからね!?
「わかった。敬語はやめる」
「ありがとうございます」
「でもタメ口にはしない」
「なんでですか」
「タメ口にするとなんだか大切にしてる感じがしないからだよ」
タメ口と聞いていい気になる人も少ないだろうしな。
それにしても隣からいい匂いがしてくる。なんでこんなにいい匂いがするんだろう。それにしてもなんだか瞼が重い気がする。寝不足なのとさっきまでの緊張がほぐれてからかな?
「悠真さん、疲れてますよね。少し休んだらそうですか?」
俺はその言葉に従うことにした。そしてそのままソファーの上で左側に倒れ込んだ。
こんにちは。狐の子です。
この話から第四章が始まりました。ここからは二人がめちゃくちゃ恋人らしいこと(イチャイチャ)をしていきます。今までよりも糖度高めで話を進めていきます。私としては思う存分イチャついてくれってスタンスなので正直どこまで甘いものが出来るかは神のみぞ知るって感じですね。
話は変わりますが、私ごとながらこの作品の投稿を始めて約半年という月日が流れました。詳しい話は後日、半年経った当日に近況ノートに書くつもりですので良かったらそちらも読んでください。
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