第74話 デート「お願いと倉之内美咲」
「お願いします。あなた達、
俺たちは今、大人二人と女子高校生に頭を下げられている。どうしてこうなったかというと話は少し前に遡る。
「悠真さん、近くのショッピッグモールに行きませんか?」
「・・・」
「悠真さん?」
「・・・は!な、なんですか?」
美月さんが話しかけてくれたのだが、さっきの言葉がずっと頭の中にありボーっとしていて言葉が右から入って左に抜けていた。
「ショッピッグモールにいきましょう。隣にあるので」
「良いですよ。お昼ごはんはどうします?」
「あ、そういえば」
そう言った俺のお腹の音が鳴った。
「水族館の中のカフェで食べてから行きません?」
「良いですよ。私もそこで食べたいです。せっかく水族館に来たんですから」
俺たちはさっき行った売店の向かい側にある、カフェエリアに向かう。
「いらっしゃいませ。2名様でよろしいでしょうか?」
「はい」
「席までご案内します」
俺たちは店員さんに着いていき、水槽の隣の席に通された。その水槽の中にはアザラシが泳いでいた。
「何食べましょうか?」
「俺はこの『クラゲのオムライス』にします」
「悠真さんってオムライス好きなんですね。この前の時もオムライス食べてましたもんね」
「あーそうですね。無意識に選んでますね」
なんか昔からオムライス選んじゃうんだよな。特に理由もないけどオムライスが好きなんだろうな。
「私は『ヒトデのパンケーキ』にします」
俺は近くにあったベルを押し、店員さんを呼んでそれぞれの料理を注文した。
「先程はありがとうございました」
「もういいですって。俺が離れなければ良かっただけですし、それに美月さんに何も無くて良かったです」
そんなことを言っている間に注文した料理が届き、食事を取り始めた。
食べ終わり席をたち、カフェを後にした。
料理は見た目重視のものであったが、味は他のカフェとかに見劣りしない味で美味しかった。
水族館を出て、隣にあるショッピングモールに向かう。
「悠真さんの服選びましょうね」
「え!?もしかしてこの服嫌でした?」
美月さんに選んでもらった服だけど実は好みじゃなかったとかってこともあるかもしれない。
「いえ、私が悠真さんに似合うと思って買ったものですしそんなことはないんですけど、もうすぐ夏ですし新しい服を買った方がいいと思いまして」
「あ、なるほど」
この服が嫌がられている訳でもなくて安心したけど、なんだかいつも俺だけが選んでもらってる気がする。それなら、
「お互いにお互いの服を選びませんか?」
「え!?いいんですか!?」
「え、あ、はい」
めちゃくちゃ食いつかれたんだけど!?いや、俺のセンス自体がいいかわかんないし、何より美月さんに合う服を選べる自信がない。
美月さんの元が良いから何着ても似合うんだけど、だからこそ下手なものを選びたくない。
「でも、俺が選んでいいんですか?それこそ女性は自分の服にこだわりがあるとか聞いたりするので」
「選んでください」
「はい」
何か見えないけど強い何かを感じて即座に返事をしてしまった。
「まずは悠真さんの服を選びます」
「いや、美月さんの服にしましょう」
「いえ、悠真さんのです」
「いや、美月さんの」
このままでは埒が明かない。どうしよう。
「じゃあ、先に俺が美月さんの服を選んで、それに合う服俺の服を美月さんが選んでください」
「え?良いんですか?そんな選び方をしても」
「はい。また美月さんと出かけるときに着るので」
だってせっかく選んでもらうんだし、美月さんの服に合う服のほうが良くない?ん?一緒に出かけるときに着るので?
「す、すみません。そんなつもりはなくて。いや、少しはあったというか、美月さんが良ければと言いますか」
「また一緒にお出かけしましょうね」
美月さんが優しくて本当に助かった。
「では、先に私の服を見に行きますか」
「はい。あ、女性用の服なので美月さんに店だけ選んでもらいたいのですが」
「分かりました。行きましょうか」
「え」
そう言って美月さんは俺の手を握って歩き出した。
「いや、でした?」
「いえ、驚いただけで嫌じゃないです。むしろ約得といいますか」
その結果、手をつなぎながら歩き、目的のお店まで歩くことになった。
「あれは何でしょうか?」
「多分なにかの撮影でしょう。ほら、カメラマンさんと落ち込んでいる大人がたくさんいますし」
落ち込んでいると言うか、カメラマンらしき人に謝り続ける大人と、そのカメラマンと一緒にいる女子高生、そして慌てて動き回っている数人のスタッフがいた。
おそらく何かしらのトラブルがあったのだろう。気になってよく見ていると、その女子高生らしき人物に既視感があった。
何だっけな、最近も見た気がするし、なんだか結構前に見た気もする。・・・あ、思い出した
「美月さん、あれって倉ノ
「え?本当ですか?近くに行って見てみたいです」
美月さんと見に行った微妙な映画にも出ていて、演技もモデルも凄く評価されている高校生女優の倉之内美咲、今若者に人気の女優の一人だ。
俺ももちろん気になるし近くで見てみたいので、寄り道していくことにした。
近づいて確認して見ると、女子高生はやっぱり倉之内美咲だった。
ほら、こっちを見ていて目が合ったし。ん?目が合った?そして目を離さないでずっと俺たちの方を見ている。
そして近くにいるカメラマンに何か話し始めた。そのカメラマンまでこっちを見ている。
そして2人と一緒にもう1人の大人がこちらに向かって歩いてくる。
え?なに?もしかしてここって来ちゃダメなことだったの?いや、他にもいるしそれはないと思うけど。
3人が俺たちの前に来て頭を下げた。なにごと!?
「お願いします。あなた達、高橋さんと冬城さんに協力して欲しいんです」
そして冒頭に戻る。
本当になにごと!?俺たちに頼み事ってなんだ?ただの高校生である俺たちに何が出来るっていうんだ。
ん?待てよ、なんで俺たちの名前を知ってるんだ?名乗ってもないし、なんなら初対面のはずだ。
「あれ?高橋悠真さんと冬城美月さんですよね陽乃坂高校の」
「なんで知ってるんですか?初対面ですし話したこともないですよね。美月さん、知り合いだったりする?」
「いえ、恐らく私も初対面です。だって倉之内さんと知り合いなら自慢してますし」
何故か分からないが、倉之内美咲が俺たちのことを知っていた。どうしてなんだ?
「あー、やっぱり気づかないか。確かに冬城さんは話したことないけど、高橋さんとは何度か話したことあるですけどね。ちょっと待ってね」
そういうと、倉之内はさっきまでいたはずの場所に戻った。あ、帰ってきた。ん?あの子って
「え、
「あれ?これでも分からない?いまさっきまでここにいたんだけどなぁ」
「え、もしかして倉之内さんなんですか?」
「冬城さんは気づいたんですね」
「え?なに?どうゆうこと?」
頭の理解が追いつかない。
「同じクラスの小森美咲が倉之内美咲ってことですよ。ここまでやって気づかないとは、高橋さんってやっぱり鈍感ですか?」
「え、、ま?」
まったくそんなの気が付かなかったんだけど。もしかして学校で噂になってたり、周りの人たちは知ってたりしたのか?
「まぁ学校の人は担任の先生と校長先生、教頭先生しか知らないからね」
「なんで気づいてない俺が鈍感みたいに言われなきゃ行けないんだよ」
なんかこの学校隠し事してる人多くない?それにその隠し事誰にも言ってないのに気づいてないのが悪いみたいに言うんだ?
「話は戻るんだけどさ、今わたしたちにトラブルが起きちゃって撮影する予定だった写真が撮れない状況なの。だからそのモデルを高橋さんと冬城さんにやってほしいんだよね」
「状況はある程度わかったけどなんで俺たちなんだ?」
「ん?簡単だよ、条件に合うからだよ2人がね」
二人での撮影、それにクラスメイトであり人気女優からの頼みであり、大の大人が頭を下げている。
「どうする?俺はやっても良いと思いますけど美月さんとしてはどうですか?」
「そうですね。私もいいと思いますよ。困ってる方を放っておくわけにはいきませんから」
「本当!?ありがとう。お礼はたんと弾むから期待していいよ。ね
「ああ、この二人の写真が撮れるならそんぐらいお安い御用だ。よろしくねお嬢ちゃん方」
そうして俺たちの撮影が決まった。
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