第60話 風邪
「健一は大丈夫ですか?」
「あ、さっきのキミか。今も寝てるよ。寝不足もあったようだね」
「よかった」
「それで、後ろにいる子は彼女さんかな?」
一日目の教科が終わり、俺は自分の荷物と
「そうですね、そこで寝てる建一の関係者ですね」
「そうかい。ちょうど彼の保護者に連絡しようと思っていたのだけど頼んでいいかな?」
「はい、任せてください。悠真はけんくんのこと見張っておいてね」
そう言って美由は保健室を出ていった。俺は健一が寝ているベッドの隣に行き寝顔を見てみた。ぐっすり眠ってやがる。ったく、だから徹夜なんかするんじゃねぇよって言ってるんだよ。
「そうだな、悠真の言う通りだ」
「起きたのか。体調は?」
「随分マシになったな。まだだるさはあるけどな」
「お前の生活が悪い」
起きた健一の顔色は朝より全然良くなっていた。まだだるさは残ってるらしいが自分自身の生活リズムが原因なので我慢してもらおう。
「熱は?」
「今測ってる。ん、37.4℃」
「微熱か。まあ安静にしとけば大丈夫だろう」
「
「今キミの保護者に連絡を取ってもらってる」
「先生、俺一人暮らしなんですが」
「そうか、じゃあいらなかったかもな」
健一が起きたことを知ってかいつの間にか真後ろに相澤先生が立っていた。
「誰が連絡してるんですか」
「ああ、彼と一緒に来た生徒だよ」
「美由だ」
「美由か。悠真と一緒に来たって言うから
「心配させる訳にもいかないし何も言ってないぞ」
「助かる」
俺のことをからかうくらいは余裕があるらしい。そこまで体調がが回復したことに安心すればいいのか、すぐに俺のことをからかってくることを嘆けば良いのか。
「美由のことだから軽く親に話してくれてるだけだろうな」
「そうかもな。どうせ親が看病に来るとかはないんだろ」
「ああ、そうだ」
「じゃあ、予定通り俺の家に来い。面倒見てやるから」
「いや、明日もテストだし風邪を移すとあれだから遠慮しとくよ」
いまさら遠慮ぎみになっている健一に対して言いたいことだらけだ。でも今言うのは一言だけ。
「関係ないし気にすんな。それに、隣人が、親友が倒れられるのは困るんだよ」
「でも・・・」
「うるせぇ。何も出来ないんだから俺に従っておけ。それでいいよな美由」
「うん。私も一緒に入るけどずっとではないし悠真の世話になってね」
親との連絡を終えた美由を仲間にしながら建一のことを説得した。健一は俺たち二人の説得によって渋々了承した感じだった。もっと俺のこと頼ってくれて良いんだぞ。
「そういえば高橋、キミのことを呼んでくれって
「う、分かりました。美由、健一のことは頼んだぞ」
「分かってるって。けんくん立てる?」
「ああ。悠真、先に帰ってるな」
「ああ、早く帰って安静にしておいてくれ」
俺は健一のことを美由に任せて保健室を後にした。三教科目のテストを受けていない件についてだろうけどおそらく注意や説教が待ってるだろうし正直行きたくない。
それでも教師を待たせてるわけだし行かなくてはいけない。俺は重い足を動かしながら生徒指導室に向かう。職員室はテスト期間で入れないからな。
生徒指導室の中では
「やっと来たか。とりあえずそこに座れ」
「はい」
小林先生は自分の向かい側にある椅子を指して言った。
「まずは、
「もう大丈夫そうですね。安静にしとけば大丈夫だと相澤先生も言ってましたし明日は受けれると思います」
「そうか。まあ良かったな」
「そうですね」
「で、ここからが本題だが」
やっぱりか。健一の体調を知りたいだけじゃないよな。
「今回のテストだけどお前らふたりは追試と見込み点どっちがいいんだ?」
「え、俺はどっちでも良いですね」
「そうか、じゃあ面倒くさいし見込み点でいいか」
「やっぱり変わんないなあんたは」
いつどんなときでもこの人は変わんないな。
「まあ、お前の点数が悪くならないようにしといてやるよ」
「ありがとうございます?」
「だってそうだろ、補習生がいるクラスの担任は面倒くさい手続きがあるからな」
「少しは生徒のためとか言ってくださいよ」
本当にこの人はなんで教師やってるんだよ。
「まあ明日もテストあるんだしさっさと帰って勉強しな」
「あ、はい。失礼しました」
俺は面倒くさそうな顔をしてる小林先生を置いて生徒指導室を出た。あの人は本当になんで教師続けてるんだよ。
俺は家に帰ると俺の部屋のソファーで座ってる美由が居た。
「健一は?」
「悠真のベッド借りて寝せてる」
「そうか。何か食べたか?」
「ううん、食べてないよ」
美由から現状を聞いて建一が寝ていることを聞いた。何も食べていないらしいし起きたら食べられるようにおかゆでも作るか。
「私も家の事があるからこの辺で帰るね」
「ああ、助かったよ」
「それはこっちのセリフ。けんくんのことよろしくね」
「任せておけ」
美由を家から送り出した後おかゆを作ろうと食器棚から小さい土鍋を取り出した。やっぱりおかゆといったら土鍋でしょ。
今日は塩粥でも良いのだが味気ないしたまご粥を作ろうと思う。隠し味に味噌とほんだしを入れて完成だ。
俺は健一が起きるのを待っている間、明日のテストの勉強をしていた。
今回は勝負している教科が主教科だけなので三時間目の家庭科の点数は関係なかったので良かったが、明日は全部が主教科だ。すなわち明日は勝負の日になる。
「よし、やるか」
そう言って自分を鼓舞しながら机に向かう。今回の勝負は負けない自信があるが油断はできない。それでも俺はいつも通りに勉強するだけだ。
勉強を初めて一時間程が経った頃俺の部屋から物音がしたので勉強を中断して確認に向かった。
「お、起きたか。体調は?」
「良くなった」
「そうか。一応熱を測ってくれ」
「おう、36.8℃だ。平熱だな」
目が覚めた健一に熱を測ってもらうと平熱で体調も良くなっていた。
「食欲は?」
「ぼちぼち」
「おかゆ作ったけど食べるか?」
「食べる」
俺はキッチンに向かいおかゆを温めて持ってきた。
「サンキュ」
「ゆっくり食えよ、昨日だってろくなもの食べてないんだろ」
「今日の朝のおにぎりくらいだな」
「あれは俺が作ったやつな」
俺はおかゆをお椀に取り分けて建一に渡した。
「熱いから気をつけろよ」
「助かる」
「それ食べたら風呂入れよ。服は俺の貸すから」
「何から何までありがとな」
「気にすんなって。お前は明日のテストまでに治すことだけ考えてろ」
俺は健一がおかゆを食べている間に風呂に入った後に着る服を用意した。
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした。さ、風呂入ってこい」
俺は建一のことを風呂へ送り出した。あいつは俺の家に入り浸っているのでどこに何があるかも分かってるので案内もいらないだろう。そこまで間取りに大差もないしな。
「風呂上がった。着替えありがとな」
「おう、じゃあさっさと寝ろ。ベッド使っていいから」
「でも・・・」
「今更だよ」
「ごめん」
「謝んなって。謝罪より感謝してくれ」
「ありがとう」
俺は自分のベッドに健一を寝せて俺はソファーに寝ることにした。もちろん寝る前に勉強をしてからだが。
明日の朝はちゃんとした朝食を食わせてやろう。
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