第42話 お出かけ《冬城美月視点》
集合時間の十分前に集合場所に着いたのですが、すでに
「おまたせしました」
「すみません、準備に時間がかかってしまいまして・・・悠真さん?どうしましたか?」
声をかけると悠真さんが固まってしまいました。どうしたのでしょう、もしかしたら体調が悪くなってしまったのかもしれません。確認しなくては。そんなことを思い、悠真さんの顔を覗き込んだ時に悠真さんが声を発しました。
「今日の服装似合ってますね。
「わ、わかりましたからその辺にしといてください」
急に褒めちぎられてしまいました。周りに人が居たということもあり、ものすごくいたたまれなくなりました。
その後、少し冷静さを取り戻してから改札に向かった。休日ということもあり、駅内はものすごく混んでいました。こんな時に手を繋いでいれば離れたりしないのでしょうなんて考えていました。
改札をくぐり、駅のホームで少し待っていると電車がやってきました。休日ということもあってなのか電車がものすごく混んでいました。
「どうする?もう一つ後の電車にする」
悠真さんが私のことを心配してくださって次の電車にするか聞いてくれました。今日は休日なので電車を遅らせても変わらなそうなのでこのまま乗ることにしました。
「変わらないでしょうし、この電車に乗っちゃいましょう」
「そうですね。目的の駅過ぎるまで手前側のドアが開かないのでドアのところに居てください」
悠真さんはそう言って私の正面に立ちました。次の駅に着いたときにも多くの人が乗ってきました。悠真さんがその人たちに押し込まれて体勢を崩してこちらに倒れてきました。倒れる寸前で私の後ろにあるドアに手を着いたので転ぶことはなかったのですが、
「え、、」
手の着いた位置が位置だったので声が出てしまいました。だって顔の近くに手を着かれてしまって壁ドンのような体勢になってしまったのですから。
「ごめんなさい、避けますから」
「大丈夫です。次の駅で降りますし、このままで」
私の声が聞こえていたようで、嫌だと思ったと勘違いされてしまいました。すぐに否定した後、離れようとしていた悠真さんを止めました。
だって、離れてもまたこの体勢に戻るだろうし、何回も同じことが起きたらドキドキして耐えられないから。
ただ、この考えが間違いでした。このままの体勢になるということは、壁ドンされたままですし、悠真さんが目の前にずっといることになります。
目鼻立ちが整っていて、鋭い中に優しさの溢れる目の中に私が映っています。いつもよりしっかりとセットした髪に、白く綺麗な肌。
そんなことを考えていたら余計に顔が赤くなってしまいました。悠真さんにバレていないことを願うばかりです。
電車が目的の駅に止まると、悠真さんは私の手を握り、電車を降りました。人混みが酷かったのではぐれないようにするためでしょう。そのように握られた悠真さんの手は暖かく優しいものでした。
悠真さんが手を離した時、気にしないでくださいと言ったが、寂しく名残惜しく感じました。
ショッピングモールに着きました。まず最初に服を見ることにしました。悠真さんの春服を見繕い始めました。カッコいい服も似合うし、爽やかな感じも似合いカジュアルな格好も似合う、そんな悠真さんの服を選べることがとても楽しくて仕方がありません。
「美月さんはどっちが良いですか」
「え、私ですか?そうですね、こっちの服を着てる悠真さんと一緒にお出掛けたいですね」
聞かれてしまい、とっさに答えてしまいました。そしてとんでもないことを口にしてしいました。こんな言葉、お付き合いをしている男女の、なんなら同棲しているカップルじゃないですか。
悠真さんの服を選んだ後は私の服です。せっかくですし私の服も悠真さんに選んでもらいましょう。ただ、一から選ぶのは大変だろうし、二択まで絞って選んでもらうことにしましょう。
「左の方は美月さんの綺麗さを引き立たせてるような組み合わせで似合ってますし、右の方は今年の春に合ってるような組み合わせなので、今回は春物の服を見に来てるんですし右のほうが良いと思いますね。この服でデートなんて行ったら男子みんなイチコロですよ」
選んでもらうはずがひたすら褒められました。悠真さんがどっちも良いと言ってもらえたので両方買うことにした。今度悠真さんと会うときにはこの服を着ておこうと思います。
私も悠真さんもそれぞれ服を買い、他の林間学校に必要なものを買った後悠真さんに誘われました。
「映画でも一緒に見ませんか?」
と。
映画のチケットを取ろうとすると席が空いていませんでした。ただ、二人で座れて空いている席が一種類だけありました。ただ、今の私達の関係では使わないような席です。だからこそ今の関係から進めるために提案しました。
「カップルシート・・・」
「でも、それしか無いんですよね。
「でも・・・」
「それに、今日のお出かけはデ、デートなんですから」
男女が二人で待ち合わせをして出掛ける、この行為のことをデートというのでデートで間違いではないのです。
悠真さんが急に何処かに行ってしまいました。あ、戻ってきました。ポップコーンとドリンクを買ってきてくれました。せっかく一緒に見るのですから、シェアしながらみたいですね。
シアターの中に入ると悠真さんが何故か右端によって座りました。どうにか説得して普通に座ってもらいました。せっかく一緒に居られるのですから近くにいたいですので。
映画を見た後、二人で感想を言い合ったのですが、
「「微妙だった」ですね」
この一言にまとまりました。その後はお話をしながらお腹を満たしてショッピングモールを後にしました。
電車に乗っていると、ご年配の方が乗ってきましたので席を悠真さんと一緒に譲りました。その方から
「ありがとね。彼氏さんも彼女さんも優しいくて助かったよ」
と言われてしまい、とっさに肯定してしまいました。まだ付き合って居ないのに。悠真さんにとっては迷惑だったでしょうか。
駅には母親が迎えに来て居たので、ここで解散することになりました。解散することが名残惜しかったので、また出掛けてもらえるようにお誘いをしました。
そのまま、私は母親の待つ車に乗り込みました。
「
母親からも言われてしまいました。私は、今日のように悠真さんといられるように、あのとき電車の中でついてしまった嘘を本当に関係にしたいと思いました。
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