第40話 ショッピングモール
「まずは林間学校で着る服でも見に行きませんか」
「はい、わかり・・・あ、でも当日って学校指定のジャージじゃなかったですか?」
「それは一日目の野外活動だけですよ。その後は野外活動は無いのですが、動きやすい服装が良さそうですね」
俺たちはまず最初に服屋に入った。女子に服を選んでもらう、こんなの熟年カップルのデートではないか。
正直に言うとそこまでファッションセンスがある訳では無い。そのため服を選んでもらえるのはありがたいのだが、周りからの視線が痛い。
やはり
「
美月さんは右手に白いTシャツと黒のブラウスシャツ、薄い黒色のスラックスパンツのセットアップ、左手に白いTシャツと緑色のニット生地のカーディガン、クリーム色のカーゴパンツのセットアップを持って目の前に来た。
春物のセットアップを持ってきてくれたのだが、
「あの美月さん、林間学校の時に着る服を探しに来たんじゃないんですか?」
「え、違いますよ。わたしたちの春服を選びに来たんですよ」
さっき動きやすい服装のほうが良いとか言ってませんでしたっけ。学校指定のジャージを着るのは一日目だけだからって。
「その後に着る服は帰る時に着る服ですし、後で運動用のジャージを買ったら解決するじゃないですか。それでどっちの服が良いですか?」
「え、あ、どっち...」
正直選べない。どっちもいい服だし、美月さんが選んでくれたんだしどっちを来ても似合うのだろう。
「美月さんはどっちが良いですか」
「え、私ですか?そうですね、こっちの服を着てる悠真さんと一緒にお出掛けたいですね」
そう言って左手を俺の方に突き出した。ん?一緒に出掛けたいって言ったのか?これは今日の話なのか、それともまた別日の話なのか。脳の処理が追いつかない。でも、
「じゃあ、こっちにします」
美月さんが選んでくれた服を受け取った。そしてそのままレジに向かおうとしたのだが、
「私にはどっちが似合うと思いますか?」
「え、、」
俺の前に女物の服が出てきた。その犯人は美月さんで、右手に水色のニット生地の長袖と白色のワンピース、左手に黒い縦ラインの入った白いロングスカートとポロシャツのセットアップを持っていた。
「俺ですか?美月さんが着たい方を来て欲しいで・・・」
いや、ちょっと待て。確かこの場面のことを
『もしどっちの服のほうが良いかみたいな二択の質問が来たらしっかり選んでやれ。ただ、どっちのことも褒めることを忘れるなよ』
よし、今度こそ成功させてみせる。
「左の方は美月さんの綺麗さを引き立たせてるような組み合わせで似合ってますし、右の方は今年の春に合ってるような組み合わせなので、今回は春物の服を見に来てるんですし右のほうが良いと思いますね。この服でデートなんて行ったら男子みんなイチコロですよ」
「そ、そうですか。今回はどっちも買おうと思います」
「え、そうですか。でも、お金は大丈夫ですか?」
「はい、服を買いに行くと言っているので親からお金を頂いてきてるので」
そう言って美月さんは近くにあった買い物かごを取って、両方の服をかごに入れた。俺の選んだ服が選ばれたのは結果的に良かったのだが、どっちの服も選んでいる。どうやら俺の選択は間違ってしまっていたらしい。
というか健一のアドバイス間違ってるんじゃないか?あいつ面白がって嘘の情報を俺に言ってる可能性あるな。よく思い出せ
『いいか悠真、これは付き合ってる二人へのアドバイスみたいなものだから上手くいかない可能性はある。そうなった場合は臨機応変に対応しろよ』
ごめん建一。今日上手くいかないの全部お前のせいだと思ってた。付き合っても無いし、俺が臨機応変に行動できないからこうなってるんだな。
俺たちはそれぞれ春服を買った。ちなみに、上の階にあるスポーツ用品店で俺の動きやすいジャージを買った。
服を買った後も合宿に必要なものを買った。折りたたみ傘やお風呂セット、UNOなどのパーティーカードゲームまで様々なものを買った。
健一からのアドバイスもうまくいくとは限らないことを知ったのでエスコートすることはやめた。ただ二人で楽しめることをすることにした。
「映画でも一緒に見ませんか?」
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