第39話 デート(仮)
あっという間に時が過ぎ、約束の土曜日がやってきた。当日になって改めて緊張してきた。
だってあの
待ち合わせ場所の駅前で待っていた俺はスマホを取り出してカメラを起動し、改めて自分の身だしなみを整える。美月さんの隣りにいるのにダサいと思われるのは困るからな。え?この前のときはどうだったかって?みんなで集まってるし元々着飾ってたし、あんな暗い中なら人の服装まで凝視しないから大丈夫だって。
「おまたせしました」
そう言って目の前に美月さんがやってきた。そして、俺は固まった。
「すみません、準備に時間がかかってしまいまして・・・
「いや、なんでも無いです」
言えるわけがない。美月さんの私服姿に見惚れてしまい固まってしまったなんて。
今日の美月さんの服装は白を基調としたワンピースだ。
『いいか、女の子の服装は必ず褒めろ。まあ、美月さんの場合褒める部分を探すまでもなく出てくると思うけどな』
頭の中に
「今日の服装似合ってますね。美月さんの肌も白くて今日のワンピースとも合ってますし、美月さんのイメージにぴったりですね。天使が目の前に現れたのかと思って固まってしまいましたし。それに可愛らしさの中に美しさもあって美月さんの良さを際立てて最高ですし・・・」
「わ、わかりましたからその辺にしといてください」
やらかしてしまった。スマートに褒めるはずだったのに早口になってしまったし、気持ち悪くなってしまった。肌が白いとか天使とか面と向かって言われるの嫌だろ。男からならなおさらだ。
今回のデートはスタートから失敗してしまった。せっかく健一からアドバイスしてもらったのに上手くいかなかった。次こそは成功させてみせる。
「じゃあ行こっか。今日はショッピングモールでいいんだよね」
「はい、ここから電車で二駅先ですね。私は切符を買わなきゃいけないので買ってきますね」
「あ、俺もチャージしないといけないから一緒に行くよ」
俺は電車賃をチャージするために、美月さんは切符を買うために自動券売機に向かった。幸いにも並んでる人が少なく、すぐに終えることが出来た。
ホームに行き、電車を待った。すぐに電車も来たので乗ったのだが、ここで誤算が会った。今日は日曜日である。休日で出掛ける人が多く電車がもの凄い混んでいた。
目的地は二駅先なので乗っている時間自体は短いのだが、満員電車には嫌な事件もあるし美月さんは嫌かもしれない。
「どうする?もう一つ後の電車にする」
「変わらないでしょうし、この電車に乗っちゃいましょう」
「そうですね。目的の駅過ぎるまで手前側のドアが開かないのでドアのところに居てください」
電車に乗り、美月さんを俺と電車のドアで守るように位置取った。これで美月さんが痴漢に遭うことはないだろう。
『女性と一緒に電車に乗るときは絶対に痴漢に遭わないように守ってやるんだ』
健一先生、言いつけ通り出来そうですよ。
次の駅に着き、人が多く乗ってきた。ここでまたもや問題が発生した。予想以上の人数が乗ってきたので俺が押し込まれる状況になってしまい、美月さんと触れ合う寸前まで近づいてしまった。
俺はとっさに反応して手を出したのだが、美月さんの顔の近くに手をついてしまい壁ドンのような体勢になってしまった。
「え、、」
美月さんから声が漏れた。急に壁ドンのされたようになってしまい、嫌だったんだろう。
「ごめんなさい、避けますから」
「大丈夫です。次の駅で降りますし、このままで」
そう言われ、そのままの体勢で電車に揺られた。目の前には美月さんの整った顔が、サラサラの髪が、ほんのり赤くなった頬があり、甘い心地の良い匂いがする。
電車には人が多く乗っているので、電車の揺れで美月さんに近づいたりした。そのタイミングで俺の脳はショートした。
覚えているのは、目的の駅について慌てて二人で電車を降りたことと、そのタイミングで美月さんの手を握っていたことだけだった。
「すみませんでした。こんなに電車が混んでいるとは思わなくて」
「だ、大丈夫です。気にしてないですから頭を上げてください。それに、私としては役得だったといいますか」
電車から降りて改札を出た後、すぐに美月さんに謝った。気にしないでと優しく言ってくれた彼女が女神にしか見えなかった。後半のほうが聞こえなかったのだが俺のことを庇うような発言をしてくれてたのだろう。聞き返したら俺が惨めになるので聞き返そうとは思わない。
駅から数分歩いて目的地についた。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい。楽しみですね」
俺たちはショッピングモールに入っていった。
俺はここで今までのミスを挽回するぞ。あれ?今日アドバイス通りに上手く言ったこと無くね?これって俺のエスコート下手がなのか?
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