第38話 約束

「まじかよ、、」


 グループ一覧表を見ると驚くべきことが書いてあった。


 グループ7


 高橋たかはし悠真ゆうま

 小栗おぐり陽人はると

 高尾たかお拓真たくま

 木下きのした流星りゅうせい

 紗倉さくら美由みゆ

 錦戸にしきど愛梨あいり

 朝凪あさなぎこころ

 冬城とうじょう美月みつき


 八人グループだったのだが、同じグループに美月さんがいたのだ。嬉しいのだが困ったことになってしまった。というのもこの前の運動会の事もあり、俺と美月さんの関係について周りのみんなが気になっているのだ。

 つまり、気まずい林間学校になりそうだ。



「なあ悠真、お前のグループに知り合いがいたか?」

「いたよ。二人な」

「お、誰だよ早く教えろよ」

「美由と美月さんだよ」


 放課後になり、健一と林間学校の話題に戻っていた。ちなみに健一けんいちはグループ4だった。俺は知り合いが多くないから建一と同じグループの人を知らないことを補足しとく。


「まじか、しかも美月さんか。お前ツイてるな」

「そうでもないよ。美月さんと一緒ってことはそれだけ注目されるだろ、温度迂回のこともあるしな」

「ふーん、じゃあ違うほうが良かったのか」

「違うほうが良かったというか一緒になったから目立つし大変そうだなって思っただけだよ」

「なるほど。なあ、後ろ見てみろよ。面白いものが見れるぜ」

「なんだよ面白いもの・・・って美月さん!?どうしてここに?!」


 建一との話に夢中になっていて後ろに来ていた美月さんに気が付かなかった。大丈夫だよな、俺変なこと言ってないよな。


「そうですよね、私と一緒だと困りますよね」

「ち、違うんです。みんなからの視線が集まりそうだなってだけで嫌ではないんです。むしろ一緒になれたこと自体は嬉しくて」


 何いってんだ俺。焦って自爆したこと言ってないよな、大丈夫だよな。ここで嫌われたり引かれたりしたら俺立ち直れる気がしないぞ。せっかくから立ち直ってきたっていうのに。


「それに、一緒に星を見るの楽しみにしてるんですから」

「そうですか。ところで悠真さん、林間学校に必要な持ち物って揃っていないんでしたよね」

「はい、まだ何にも用意してません」

「も、もし良ければ私と一緒に買いに行きませんか?」

「えっ、、」

「そうですよね、私と買い物なんて行きたくないですよね」

「ち、違くて、驚いただけです。俺で良ければ」

「では次の日曜日でいかかでしょう」

「わかりました。楽しみにしています」

「ええ、私も楽しみです」


 あれやこれやと話が進み美月さんと買い物に行く約束をしていた。え、この買い物って二人きり?もしかしなくてもこれってデートなのでは?


「建一、お前今週末の予定ってなにか・・・」

「あ、俺今週末は美由みゆと出かける予定あるから無理」


 建一に予定を聞こうとしたらスパッと断られた。しかも、共通の知り合いである美由も予定があるのだから二人きりになるのは確定した。


「まあ、デート楽しみな。面白そうだし相談にも乗ってやるよ」

「本当か!?」

「ああ。ただし結果も教えろよ」


 健一がゲスい顔でニヤけてた。やっぱりこいつは面白そうなことばっかり考えてるだろう。ただ、女の子と二人で出かけるわけだし、彼女(?)がいる建一からのアドバイスはめちゃくちゃ欲しい。背に腹は代えられないか。


「分かった。それでいいから相談乗ってくれ」

「よし、じゃあ今日の晩飯はお前の家な」


 こいつどさくさに紛れて俺の家で食事を済ましていこうとしている。それで済むなら安いもんだ。


「いいけど食材がないから帰りながら買いに行くぞ」


 そう言って俺たちは昇降口に向かった。




「んで、何が聞きたいんだ?」

「ぶっちゃけなにもかも教えてほしい」


 夕飯を済ませて健一から今日の本題に入った。ただ、俺自信が女の子と二人きりで出かけるという状況に慣れていないため、何も分かっていない。だから聞きたいのだが、手探りすぎるからか健一も戸惑っていた。


「そういえば服はあるのか?」

「ああ、この前春物の服を買いに行ったからな」

「ちょっと着てみてくれ」


 そう言われ俺は自分の部屋に行き、クローゼットに中から服を取り出し着替えた。うん、我ながら悪くないセンスだと思ってる。


「こんな感じなんだがどうだ」

「うん、それでいこう。チッ、センス良いのかよ」

「おい、ダサい服でいかせようとするなよ」


 健一からの評価も好評だったので大丈夫だろう。

 その後も健一からのレッスンは続いた。何なら今回のデート(?)プランのほとんどは健一が考えてくれた。


「最後に必殺技を伝授しておこう。これはいつ言っても良いが、必ず言う事」

「それはなんだ?」

「それは・・・・・・・・・・・だ」


 俺は健一から必殺技を授かった。これならどうにかなるかもしれない。健一は夜遅いので家に帰った。

 少し気が楽になったのか、次の日曜日がなんだか楽しみになってきた。

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