第15話 日常
一時間目の授業が終わると俺のもとに
「朝から小林先生の呼び出されるなて、お前なにやらかしたんだよ」
「何にもやらかしてねえよ。感謝状が来たからその件についての話だ」
健一はこの前俺がひったくり犯を捕まえたことを知っているため大して驚くことはなかった。
「それにしても
「残念ながらそんなシュチュエーションはねえよ。ほら、事件の関係者がいた場合気まずいだろ。現に
「そうだな。冬城さんがどう思うかわかんないしね」
健一もみんなの前での表彰が無いことに納得してくれた。
ただ、今の状況で不思議なことが一つある。
「
「あー、それは俺がいるから来ないんだろう。この前ちょっと怒らせちゃって」
「何したんだよお前」
こいつがそう簡単に人を怒らすようなことをしないと分かっているからこそ不思議なのだ。美由を怒らすようなことをどうしてしたのか。
「聞かないでおいてくれ。まぁアイツのことだから昼食のときには忘れてこっちに来るだろう」
「なんだか簡単に想像できた」
怒っていたが昼食の時間になって、俺たちのところに来て元気に過ごしている様子が想像に難くない。
「今日は月曜日だから一緒に食べる日か」
月曜日と木曜日に美由と昼食を食べることになっている。改めて考えてみると謎でしか無い。なんで俺と建一の二人のグループに来るのだろうか。
「そういえばなんであいつは俺たちのとこに来るんだ?」
「さぁね、悠真もいずれわかる時が来るよ」
なんだ?もしかして俺のことが好きなのかあいつ。好きだからからかってるのかよ。小学生みたいだな。
「あ、悠真のことが好きだから来てるわけじゃないよ。てかあいつ彼氏いるし」
知ってましたけどね。俺なんかがモテるわけ無いの知ってますけどね。もう少し夢を見せてくれてもいいじゃないか。
「彼氏いるならなんで俺たちのとこに来るんだよ」
「彼氏が一緒に食べていいって言ってるんだって」
あいつの彼氏は何を考えてるんだろうか。まったく考えがわからない。
「あいつの彼氏に恨まれないようにしとかないとな」
「それはと思うから安心していいよ」
「お前は誰か知ってるのか?」
「うん」
俺だけ何も知らないのが解せぬ。今度問い詰めて絶対に聞き出してやる。なんなら今日の昼食の時間に問い詰めてやる。
四時間目も終わり俺たちは三人で食堂に向けて歩いていった。美由は予想通りアホみたいに元気に俺たちのもとにやって来た。こいつほんとに何も考えないで生きてるんじゃないか?
「けんくんはいつも通りだとして、悠真は今日も弁当?」
「俺の扱いが酷いことに嘆けばいいのか、覚えてくれてることを喜べばいいのか複雑な感情なんだが」
「今日は学食だぞ。単純に作ってきてない」
軽口を叩いている健一は置いといて、俺は美月とともに券売機に向かう。俺はカツカレーを。美由は日替わり定食を。遅れて健一は唐揚げ定食の食券を買った。
「あ、けんくんは私へのお詫びで唐揚げ一個ちょうだいね」
「げ」
どうやら忘れたわけでも許したわけでも無かったらしい。どんまい建一。何やったかは知らないけど唐揚げ一個で許してもらえるだから安いもんじゃないか。
俺たちはそれぞれ昼食を受け取り、4人席に座った。
「「「いただきます」」」
それぞれ自分の食事に手を付け始めた。もちろん健一の唐揚げ定食についている唐揚げは5個から4個に減っていて、美月の日替わり定食に一つ唐揚げがトッピングしてある。ちなみに今日の日替わり定食は
「そういえばさっき健一から聞いたんだけど、お前って彼氏いたのか?」
「え、うんいるよ。てか知らなかったの?」
「知らなかったんだよ」
え、なに、もしかして割と有名だったりする?俺だけが知らないみたいな状況だったの?
「まぁ、誰にも言ってないから知らないと思うけどね」
「それじゃ知るわけ無いだろ」
どっからその情報が入ってると思ったんだよ。こいつは無いものをどうやって手に入れると思ってるんだ。
「別に隠してるわけじゃないけどわざわざ言う必要がないと思って言ってないんだよね」
「そうか。彼氏の写真とか無いのか?」
「あるけど内緒。まだ悠真には言わないほうが面白そうだし」
面白そうってなんだよ。
「建一、お前は持ってないのか?」
「持ってるけど見せられないかな」
どうやらただ面白がってるだけじゃないらしい。ここまで隠すんだし周りにも言ってないんだから余程秘密にしておきたいんだろう。
それをわざわざ知りたいとは思わない。俺も隠してることがあるし、そのことは知られたくない。だから俺はこれ以上深入りしないようにする。
「さ、そろそろ食べ終わるし教室に戻ろっか」
健一の声が聞こえたと同時に昼休みの終わり5分前を告げるチャイムが鳴った。
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