第16話 体育
今日の5時間目は体育だった。体操着に着替えて体育館へ向かう。今日は前日まで降っていた雨の影響で校庭が使えないため体育館を半分に区切り、男女で半分ずつ使うことになった。
気のせいかもしれないが周りの男子がいつもより気合が入っている気がする。
「女子の前でいいとこ見せるぞ」
「彼女の前で恥ずかしいところは見せられない」
「女子の体育着姿いいな」
気のせいじゃなかった。みんな女子がいるからやる気が高い。おい、最後に聞こえた奴、お前は何を言っているんだ。そんな目でクラスメイトをみるな。
「
「それな。俺等のクラスの
たしかに
今日の体育は男子がバスケットボール、女子がバドミントンだ。俺は
「気合入ってんね〜」
「俺には気合が入る意味がわからんのだが」
「なんだお前、そんなんでいいのか。冬城さんにいいとこ見せなくていいのか?」
「なんでそうなる」
いいとこを見せるか見せないなら見せたいが、そんなことをして何になる。たかが体育だ。そこまで本気になる必要はない。
「それにせっかくのバスケットボールなんだぞ。お前の得意なスポーツじゃないか」
「そんなの過去のことだ。それにこんな体育で本気になるほど俺はバスケットボールが好きじゃないんだ」
「そうか?俺がお前に負けたときは楽しそうにバスケットボールしてたけどな」
そんなの遠い昔のことだ。部活でやってただけで思い出なんて無い。中学校の思い出でろくなものなんて無いんだから。
二人で話していると試合の終わりを告げるホイッスルがなった。
「俺達の番だぞ」
「適当にこなすから健一がうまくやっといてくれ。女子にいいとこ見せなくていいのか?好きなやつがいるんだろ」
「そうだな。格好つけてきますわ」
俺たちはコートの中に入っていった。俺はボールを持ったらすぐ近くのチームメイトにパスをしていた。あくまで体育はするけど全力でプレーしない。
健一にボールがまわり自陣から相手のゴール下まで一人で運んだ。ディフェンス付かれていたが、難なく抜き去った。レイアップシュートをきちんと決めて俺等のグループが先制した。
その後も順調にゲームが進んでいき俺たちのグループが勝利した。ちなみに俺は1本もシュートを打たなかった。
「よし勝ち」
「お疲れさん。お前一人でも勝てたんじゃないか?」
「いや、周りも使わないと反感買うだろ?それに今のはバスケ部がいなかったからってだけだよ」
「まあ全盛期よりはキレが落ちてたな」
「何もしてないお前には言われたくありません」
それもそうだ。俺はなにも役に立たないでコートにいただけだ。だからといって次は全力でやるとかは無いが。
時間が過ぎ2度目の試合が始まった。俺は1試合目と同様に目立たないように立ち回った。
この試合も健一の活躍があり、試合終盤2点差、いわゆるワンシュート差でリードしていた。このまま勝つのかと思ってた時だった。相手チームがノールックパスをしようとしたのだが上手くいかずコートの外へ勢い良く飛んでいく。そこには隣で体育をしていた女子たちがいた。
健一が慌てて間に入ろうとするが間に合いそうにない。そしてこちらを見て目を見開いていた。それもそのはず、俺がその間にいたのだから。
自分でも無意識のうちに体が動いていた。ただし、
「痛っ」
さっきまで動いてなかったのも相まって上手くボールを対処出来ず、右手の指が突き指してしまった。
「悠真!?大丈夫か?」
「ああ、ただの突き指だよ。保健室に行ってくる」
「わかった。俺も付いてく」
俺は自分の手を水道で冷やしてから健一と一緒に保健室へと向かった。
ボールが当たりそうになっていた女子と一部の生徒がこちらを心配そうに見ていた。
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