第12話 夕飯

「今日の夜お前の方行っても良い?」

「なんでだ」

「明日は休みだし、夕飯作るの面倒くさい」

「あのな、お前が作らない代わりに誰が作るんだ」

「お前だな」

「おい」


 帰りのホームルームが終わって帰りの用意をしているときに、先に用意が終わった健一けんいちがこっちにやってきて話しかけてきた。


「俺の家に来るのは今更止める気はないが食材はないぞ」

「この前家からちょっとお高い牛の肉が届いたんだけど、俺には上手く調理する自信も技量もないから悠真ゆうまに頼もうと思って」


 どうやら食材の持ち込みをするから料理を作って欲しいということらしい。俺も料理がめちゃくちゃ上手い訳では無いが、人並みには出来る。それに、単純にそのお肉を食べてみたい。


「分かった、俺が料理してやるよ。なんかリクエストとかあるか」

「んー、うまいやつで」


 なんて難しい返答をしてきやがる。手の込んだガッツリとした味付けだと素材が無駄になるし、やっぱりここは


「じゃあ、ステーキみたいに焼こうと思うがいいか?」

「おう、頼んだぜシェフ」

「じゃあ、付け合せとかで必要な足りない物を買い出しに行きますか」


 そう言って机の上に用意していた鞄を持った。


「いってらっしゃい」

「お前も一緒に行くんだよ」





 俺たちは自宅から一番近いスーパーに来ていた。食品も豊富でお値段も

 お手頃価格な為なのか、この時間は主婦達が多くいる。


「へー、今日はこの野菜が安いのか」

「悠真、キャベツの千切りが食べたい」


 そうだよな、盛り合わせにはキャベツの千切りが欲しいよな。ただ千切りするの面倒くさいんだよな。


「今日は他にも作るし、時間もないから切ってあるの買うか」

「よし、じゃあこのカゴに入れとくね」


 そう言って健一は自分が押している買い物かごの中にキャベツの千切りを入れた。


「あ、そういえばお前の家のコーヒー豆切れそうだから買ったほうが良いぞ」

「なんで俺より俺の家のこと詳しいの」

「それは、、ねぇ、」


 濁すんじゃないよ。まったく、合鍵は健一に渡しているがこんなことになるとは思はなかった。引っ越ししてきて隣に住んでいる親友が実はストーカーだった件とかのほうが納得できるよこの現象。

 必要な食品と今日以降に使う商品の買い物を終えて俺たちは店を出た。


「じゃあ、商品は悠真の自転車のかごの中ってことで」

「いいけど、お前が自転車引っ張れよ」


 俺と健一は同じマンションに住んでいるが通学手段が違う。俺は自転車の時と徒歩の時があるが、健一は徒歩通学である、歩いて学校までは20分くらいなので、そこまで遠くは無いのだが学校から自転車通学が認められているので、俺は自転車で行く日のほうが多い。あと朝が苦手で自転車じゃないと間に合わない。途中、健一が商品を一つ落として使えなくしたのだが、この話は割愛させていただこう。


 俺たちはマンションに着き、荷物を置きに行くためにそれぞれの家に帰った。健一が俺の家に来たのは解散してから10分も経たなかった。


「そういえば今日金曜日じゃん。いつものでいい?」

「あ、そうか。わかった、布団用意しておくよ」


 初めて俺の家で遊んだときに言われたが、健一は金曜日に俺の家に泊まりたがる。理由は分からないが、何かがあるらしい。気にはなるが、その理由に関してはわざわざ聞き出そうとは思っていない。


「何だ悠真、悩みごとか?」

「え?そんなに顔に出てたか?」

「ああ」


 なんで毎週泊まりに来るかわからないなと思っていたら勘づかれた。健一は感が鋭いためこんなときは言い逃れできなそう。ここははっきり言うしか無いのか。ごめん、数秒前の俺。


「毎週泊まりに来るけどなんでなのかなって思って」

「あれ?言ってなかったっけ。金曜日は義妹いもうとが俺の家に来るからだよ」


 は?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る