第9話 お誘い
「ねぇねぇ、けんくんは運動会なんの種目にするか決めたの」
いつも通り俺が健一と話していると一人の女子生徒が話しかけてきた。
「誰かと思ってら
「けんくんと
こんな風に会話に入ってきたのは同じクラスの
「面白そうってなんでだよ」
「だって、悠真とか借り物競争なのに人に貸してくださいとか頼めなさそうじゃん」
「うるせぇ」
図星だった。いや、出来ないわけじゃないんだよ、ただ怖がって話しかけるのが億劫になってしまうんだ。それもこれも中学の頃のアレのせいだ。
「おい悠真、顔こわいぞ」
「あ、悪い。ちょっと昔のこと考えてた」
「あんま気にすんなよ。誰もお前のことを裏切らないから」
「ん?何の話してんの」
やっぱり俺はまだ中学のことを引きずっているらしい。学校で俺がこんなに顔に出すとは思わなかった。多分健一に言われなければ気づかなかっただろう。由美は気づかなかったらしいから大丈夫だと思うが。
「なんでもないよ。でも、借り物競争か。人気なさそうだったら出ても良いかもな」
「マジ!?悠真もこんなに乗り気なんだしけんくんもやろうよ」
「俺にはそんなに乗り気には見えないんだけどね」
そうそう。俺は乗り気で言ったわけじゃないし。俺が競技を決められなかったときにはそれでいいかなって思っただけだ。
「そろそろ昼飯食いに行かない?食堂混みそうなんだけど」
「そっか。けんくんだけが食堂だから忘れてた」
「おいおい、忘れないでくれよ」
そんな事を言いながら教室を出ようとしたとき、なんだか扉のあたりがざわついていた。なんでなのか分からないが無視していいだろう。そう思ったのだが、
「あ、
なんだか呼ばれた気がする。でも、俺に話しかける生徒なんてそうそういない。ましてやそのメンバーの2人は今隣りにいる。勘違いなのだろう。
「高橋さん、なんで無視するのですか」
そう言って近づいてくる一人の女子生徒がいた。どうやら間違いではなかったらしい。銀髪をなびかせながらこちらに来て、藍色の目でこちらを見つめていた。
「えっと
「えっと、お昼ごはんを一緒に食べませんかと誘いに来ようと思ったのですが、皆さんで食べるのですね。それでは私はこれで」
やっぱりだ。冬城さんにはとある癖がある。想像通りなら普段でもそうなのだろう。なら俺は、
「わかった。それじゃ...」
「なら一緒に食べない?私もけんくんも気にしないし、もちろん悠真もいいよね」
そう上手くはいかないのが人生である。美由が勝手に賛同してしまった。改めて冬城さんの方を見るとなんだか落ち込んでいた。その姿を見てしまった俺にはさっきみたいな判断は出来ない。可愛い。
「うん、構わないよ」
「勝手に気にしないって言われるのは納得いかないよ。まあ実際そうなんだけど。俺が弁当無いから学食になるんだけど大丈夫?」
「ええ、問題ありません」
「そろそろ行きますか。いい加減目立っても来ましたし」
廊下で話していたので目立っていた。廊下で話すこと自体が目立っていたのではなく、おそらく冬城さんが俺たちに話しかけたからだろう。
「建一、早く行かないと席なくなるぞ」
俺たちは4人で食堂に向かった。
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