第8話 友人

「私からも高橋たかはしさんにお返しがしたいのですが」

「え」


 どうゆうことだろうか。俺は冬城とうじょうさん自身に何かしてあげた訳ではない。それなのにどうして。ふと前を見るとこちらを真剣な表情で見ている冬城さんがいた。この顔はお返しをしなければ納得しないのだろう。こんな表情を俺は

 俺は彼女がに負担がかからないかつ満足するようなお願いを考えた。


「それならこれからも仲良くしてもらえませんか」

「そんな事です?」


 この返答は予想できていた。それに対する回答も持っている。


「俺は地元がここじゃなくて、学校にも友達が少ないんだ。だから仲良くしてくれるとうれしいなって」


 彼女は驚いた様な顔をしてこちらを見たが、すぐに笑顔を浮かべこう答えた。


「私で良ければ友達になりますよ」


 と。


「もう時間も時間ですし帰りませんか」

「そうですね。私の母が迎えに来てるので自宅まで送っていきますよ」


 え、送迎?しかも母親もいてってこと?個人的に話したの今日が初めてだよ。俺今緊張がやばいよ。でも、


「ごめん、俺自転車で来てるから大丈夫」

「そうでしたか」

「気持ちだけでも嬉しかったよ、ありがとう」

「いえ、友達なんですから」


 そう言った冬城さんの顔は少し赤みがかっていた。それはこの夕日のせいだけでは無いだろう。


「じゃあ俺はこっちだから」


 そう言って俺は下駄箱を出た後、校門ではなく自転車小屋に向かおうとした。


「高橋さん」

「はい?」

「さようなら、また明日」

「っ!?また明日」


 そう言って冬城さんは少し駆け足気味で校門の方に向かった。

 それにしても今日は色々あった一日だった。家に帰ってゆっくりしよう。






 ただ、そんな簡単では無いのが人生だ。俺が家に帰るとすぐさま建一けんいちがやって来た。


「で、放課後どうだったんだよ。告白でもされたか」

「いや、そんなことはなかったよ」


 俺がそう言うと建一は腹抱えて笑い始めた。


「やっぱりな。そしてそれに踊らされるお前を想像するとめっちゃ面白い」

「お前なぁ」


 そう言いながら俺は少し胸張ってあいつに言い返すことにした。少しは驚いた顔が見れる気がする。


「放課後に来たのは冬城さんだったぞ」

「は」


 俺からの話を聞いた瞬間に建一は目が点のようになった。


「ちょ、ちょっと待て、冬城さんだって?なんでそんな有名人がお前なんかのところに来たんだよ」

「その扱いひどくない」


 想像以上に驚いたことを喜んでいだが、俺の扱いひどくない?俺を何だと思ってるのさ。


「昨日小林先生も来たけど、俺がひったくり犯を捕まえた話を知ってるだろ。あの被害者が冬城さんのおばあさんだったんだよ。なんでもお礼がしたかったらしい」

「なるほどね。なんの関わりもなかった悠真ゆうまが呼び出されたのはそういう訳だったよな。学校でのお前だけを見ていたら誰もお前に告白なんてするはずないもんな」

「ひどくね」


 こいつ言いたい放題言って、人の心は無いんか。女子にモテないのなんて分かってるよ。ある程度はそうなるように過ごしてるんだから。


「でも、顔も整ってるし、生活能力も高いし優良物件だと思うけどな」

「いいんだよ俺は。やっぱりまだ怖いんだ」

「そういうもんなのかねぇ。俺としては少し荒治療するのもいいと思うけどね」

「余計なお世話だよ。でも心配してくれてありがとう」


 建一は優しい。優しすぎる。こいつは優しすぎるせいで損してきていることが多くある。でも、そんな奴だから俺はこいつのことが好きなんだろう。


「もし何かあったとしても俺はお前のことを助けるよ」

「ありがとな」


 この日は一緒に晩飯を食べた後、課題をやって解散した。


 夜に布団に入った後、ここ最近のことを振り返ってみた。遅刻するからといつもと違う道を進んだらひったくり犯に遭遇して、その犯人を捕まえたり、その助けた人が学年一の美女である冬城さんの親族だったり、冬城さんに放課後呼び出されて友達になったりと激動の日々だった。

 この物語はまだ始まったばかりであり、まだまだここから進んでいく。

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