第7話 放課後の屋上

 放課後になり俺は屋上へ向かった。いや、可愛い女の子が来てくれたら嬉しいなとか思ってないよ。うん。ごめんなさい嘘です。可愛い女の子に呼び出しされて健一に自慢したいし、可愛い子だったらシンプルに嬉しい。俺は周りに人がいたらニヤニヤしてると言われるくらい頬が緩んだまま屋上にいた。呼び出した子が来るのを俺は屋上で待っていた。そうずっと待っていたのだが


「来ない」


 俺は屋上で待っていたのだが、1時間経っても誰も来なかった。やっぱりあの手紙はイタズラだったのか?いやいや、もう少し待ってみてもいいんじゃないか?用事があってこないだけだろ。うんうん。


「やっぱり来ないじゃないか!!」


 あれからさらに1時間待ったのだが誰も来なかった。結局誰かのイタズラだったのかよ。このまま誰も来なかったって健一に言ったらめっちゃ笑われそうだしどう誤魔化そう。などと考えていたら、屋上の扉の開く音がした。ドッキリのネタばらしをしに来たのだと思いすぐさま振り向いて文句を言ってやろうと思った。


「遅くなってすみません、まだ屋上で待っててくれたのですね。ありがとうございます。」


 そう言って現れた相手を見て俺は怒りが沈んでいくのが分かった。その相手は冬城とうじょう美月みつきであった。学校一の美少女と名高い女性であり、俺の一目惚れした相手でもある。


「大して待ってないって言ったら嘘になるけど、教科書とか読んだりしてたし全然気にしなくていいよ」

「急遽教師の方々からお手伝いして欲しいと言われ、今度ある運動会の資料を作るお手伝いをしていました」


 どんだけ聖女なのでしょう。急な教師のお願いにも応えてあげて優しすぎやろ。てか、なんで俺なんかを呼び出したんやろ?


「なんで俺を呼び出したのか要件を聞いてもいいですか?」


 そう聞くと冬城さんは丁寧に頭を俺に下げて言った。


「先日は私の祖母を助けて頂きありがとうございます」

「へ?」


 俺は予想としてなかった行動と発言によって変な声が出てしまった。祖母を助けた?あ、あの時ひったくりにあったおばあさんか。あの人冬城さんのおばあさんだったんだ。


「頭をあげてください。そんな気にしなくていいですよ」

「しかし、そのせいで高橋さんが遅刻してしまったと聞きました。成績とかに関わってしまったら大変ですし」

「そんなことでしたか。心配しないでください。お恥ずかしながら元々寝坊してしまったので、少し遅刻するくらいならもうゆっくり登校して周りの景色を見ようと思ってたので土手の近くにいたんですよ」


 俺はあの時なぜあの場所にいたのかを説明した。いや、よく考えたらただの頭おかしいヤツの行動やんけ。


「そうですか。それでも祖母を助けていただいたことには変わりありません。ありがとうございます」

「どうして俺が冬城さんのおばあさんを助けたと分かったのですか?」


 俺は冬城さんのおばあさんに名前どころか学校すら教えていないのだ。どうして俺だと思ったのかが気になる。


「学校については警察の方が教えてくれました。高橋だと分かったのは、昨日の放課後に小林こばやし先生が帰ってき来た時に、どうして授業の途中に抜けたのか聞いてみたら高橋さんが人を助けて、その手続きに行ってきたと笑いながら言っていたので」


 まじであの人なにしてんの?すぐに人の個人情報ばら撒くし、授業サボりたがるし、急な家庭訪問なんてものもやり始めるし。

 俺が小林先生の行為に頭を抱えていると、冬城さんは自分の鞄の中を漁り出した。すぐに中から大きめの箱を取り出してこちらに渡してきた。


「これは些細なお礼ですが」


 と言って渡してきたので、反射的に受け取ってしまった。その箱を見ると学生では買えないようなお店の立派なカステラだった。


「こんな高価なもの受け取れません」

「受け取ってください。祖母からのお礼なんです」


 冬城さんのおばあさんからのお礼と言われたら断れるわけないじゃないですか。いや、冬城さんからのお土産とか言われても断りませんけどね。


「そうですか。そういうことなら頂きます」


 そう言って改めてカステラを受け取った。


「その後おばあさんは大丈夫ですか」

「ええ、すぐにひったくり犯を捕まえてもらったお陰で鞄の中身も無くならないで済みました」


 よかった。何事も無事が一番だからな。


「私からもなにか高橋さんにお返しがしたいのですが」

「え」

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