第4話 ひったくり犯とおばあちゃん
俺はゆっくり自転車を漕ぎながら周りを見てみた。街自体が発展しているため高いビルなども多くあった。家の近くにある河川敷では春になると桜が咲き、土手がピンクに染まっていた。今年は忙しすぎて花見に行けなかったので来年は行きたいと思っている。
そのまま学校へのんびり向かっていると目の前をいかにも怪しげな男が全力疾走で横
を通り過ぎていった。
「ひったくりよ。誰か助けて!」
声のする方を確認する前に俺はその男を追いかけた。その男にすぐに追いつき、そのまま男にぶつかると男は倒れたので、俺はすぐに男を身動きが取れないように押さえつけた。
「痛ぇ、何でぶつかって来てんだよ」
そう、俺は自分の体で体当たりをした訳ではなく、自転車に乗ったままぶつかったのだ。自転車に乗っていたからすぐに男に追いつけたし、力も強く男を一撃で仕留められた。
「しょうがないだろ、自転車から降りたらお前を見失うかもしれないだろ」
俺が男を押さえつけていると警察がやってきた。どうやら周りにいた人たちが警察に連絡してくれていたらしい。
警察に男を引き渡すと事情聴取するために俺も同行することになったのだが、パトカーなに向かう途中でおばぁさんに声をかけられた。
「ありがとう坊や、このカバンは大切なものだったから助かったわ」
どうやらこのおばぁさんがカバンの持ち主らしい。
「気にしないでください。大切なカバン取り返せて良かったですね。次は気をつけてくださいね」
俺はその後パトカーに乗って警察署に行き事情聴取された。
といってもどのような場面だったかとかどのように捕まえたか、俺の名前とおばぁさんの関係などについて聞かれただけの簡単なものだった。このことは後に表彰されるらしく後日来てくれと言われた。実に面倒臭い。
学校にも連絡が入ったらしく担任の
「
「何もしてませんよ。連絡いってますよね?」
「ああ、連絡入ってるぞ、お前が窃盗をしたとね」
「はぁ!?どうゆうことですか!!」
俺はすぐに近くの警察の人と小林先生を睨みつけた。
「いえ、そのような連絡をした覚えはないのですが」
「冗談だ高橋、場を和ませようとしたジョークだよジョーク」
いやいや、場が和むどころかイラついちゃってますけど。時と場所を選んでほしいんですけど。本気でどうしようか焦ったんですけど。
「まぁ今日のところはもう遅いし家まで送っていってやるから勘弁してくれ」
家まで送ってくれるのはとてもありがたい。ありがたいんだけど、
「まだ昼過ぎですけど!?」
俺は学校に遅刻するタイミングで家を出て、ひったくり犯を捕まえて警察に来ているだけなので夜遅い時間という訳では無い。なんならまだ学校で授業がある時間なのだ。
「仕方ないだろ、今更学校に行っても高橋は面倒臭いだろうし、何より私が合法的にサボれるからな」
「教師がサボるために生徒を使わないでください」
警察署を後にし、俺は小林先生の車に乗って自宅に向かっていた。
「本当に帰るんですね」
「当たり前だろ、今戻ったら書類がたんまりあるから帰りたくないんだよ」
「職務放棄するんじゃねぇよ」
そのまま俺の家に着いたのだが、それで終わらないのが小林先生であった。
「あの、なんで小林先生が玄関の前まで着いてきているのですか?」
「あれ?言ってなかったっけ?今から家庭訪問するぞ」
「初耳なんですけど!?」
「ああ、言ってなかったからな」
「ホウ・レン・ソウって習わなかったのか」
急な家庭訪問が始まった。
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