第3話 可能性の話

「お前本当に告白しないのか?」

「しないよ」


 俺たちはゲームしていた。色んなゲームの作品のキャラ達が殴り合うようなゲームだ。先に飛ばされるかステージ場外に行くと負けである。今までの試合全て俺の全勝だったからか、健一けんいちは直接妨害しようとして動揺するかもしれないと思う話題をさっきから振ってくる。


「なんでしな・・・うわぁまた負けたし。動揺作戦も失敗か」

「そんな見え見えの作戦引っかかる方が無理だろ」

「もう1戦やるぞ。次は勝つ」

「明日学校だから次でラストな」


 最後の試合も俺の勝ちとなり、俺の全勝でゲームはお開きになった。


「お前なんで告白しないの?」

「は?さっきも答えただろ」


 そう言うと健一は真剣な顔付きで俺の方を向いた。


「真面目に答えてくれ。お前自身中学校時代のトラウマで人と関わるのが、特に女子と関わるのが怖いのは分かる。でもそんなお前が一目惚れしたんだろ?病状が改善に向かっているからなんじゃないか?」

「お前の言い分は一理あると思う。ただ、振られてしまったらもっと拗らせる自信があるし健一に対しても八つ当たりみたいなことをすると思う。そんなことになるならトラウマ抱えたままでいいんだよ。無理に彼女が欲しいと今は思ってないし」


 何時にもなく健一が真面目に話してきたので俺も真面目に返してしまい堅苦しい空気が流れ始めた。


「それに、中学校時代のことはまだトラウマになっているだろうけど今はお前がいるし別にいいかなって思ってるよ」

悠真ゆうま、、ごめんな。さっきまでこのヘタレ意気地無し野郎とか心の中で思ってて」

「前言撤回。やっぱお前といてもいいことないわ」

「酷くない!?」


 そう言って俺たちは向き合って笑いあっていた。健一は俺のトラウマを抱えたことについて知っている数少ない高校の奴で、そうゆう秘密とかは他人にばらさないし親切にしてくれる。もしも俺がトラウマをフラッシュバックさせたとしても手を差し伸べてくれるだろう。そんな友人を持てて俺は良かったと思っていた。本人には口が裂けても言えないけど。


「まぁお前がいいならいいけど踏み出さないと何も変われないからな。自分自身も」

「分かってるよ。ただ怖くてまだ進めないだけだから」

「ゆっくりいこうや。俺も手伝うからさ」

「Thank you」

「発音良く返してきた!?」


 俺たちは軽く盛り上がったあとお開きになり、健一は帰って行った。健一が帰ったあと俺は改めて今日のことを考え直していた。


「俺が冬城とうじょうさんに告白なんて」


 俺はここまで口に出して顔を大きく横に振った。ありえない。あんなに美しい女性に彼氏がいないはずがない。いなかったとしても相手はこんな奴じゃなくてもっといい人に決まってる。


「まぁ今後話す機会も無いだろうし、ましてや深く関わることなんて無いだろうから俺には無縁の話なんだよな。あんな美女と一緒にいるところを見られでもしない限りトラウマをフラッシュバックすることも無いだろうし、何事もなく普通に高校生活を送れるだろうな」


 この時の俺はまだ知らなかった。この言葉の全てがフラグになっていることが。



 翌朝俺は寝坊した。高校入ってから初めて寝坊した。朝起きたら登校時間5分前だった。俺はその時にもう間に合わないと思い急ぐのをやめた。ゆっくりと準備をして遅れて登校しようと思う。せっかくだし周りの風景でも見ながら登校することにした。後になってから気づいた、この日寝坊したことが今後の高校生活に大きく関わっていたことに。

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