第2話 友人

 入学して1ヶ月がたった。その間俺は冬城とうじょうさんと接する機会は無かった。冬城さんは先輩達からもモテていて、ファンクラブまでできている。ちなみにファンクラブの会員になったからといって、交流が増えるわけでも特典がある訳でもない。

 俺も変わったことがある。そうそれは


「おはよう」

「お、悠真ゆうま、おはよう」


 そう、友人が出来たのだ。佐藤さとう健一けんいちという同じクラスのやつなんだが、女子人気が割と高い。顔が良くて運動もできる、勉強までできておまけにコミュニケーション能力まで高いのだ。俺なんかと仲良くしてくれた理由が最初は分からなかったのだが、それを知った今は運命的な出会いだと思っている。それと1つ訂正があるかもしれない。こいつはただの友人では無い。

 さて、今日のHRホームルームで重要な話があると言われていたがなんだろう?健一とその話題について考えた時にまともな予想が何も無かったので考えるのはやめたのだ。チャイムが鳴り担任の小林先生が入ってきた。


「席に着け。HRを始めるぞ。今日の連絡だが、2週間後に開催される運動会についてだ。」


 そういえば年間行事に書いてあったな。運動自体苦手では無いけれど、クラスの輪に入って盛り上がるのは苦手なんだよな。中学の頃のがあったため俺はそういったクラスで団結してみたいなのが苦手だ。


「運動会なんだが、土曜日に1日使って開催する予定だ。天候が悪ければ翌週に延期、延期は2回までになっている。運動会の2日後の月曜日は振替休日になる。」


 大きくほかの学校と違う部分は無さそうだな。トリッキーな運動会だと楽しむとかの前に、参加する意欲すらなくなってしまうからな。


「今日の朝のHRと1時間目を運動会の種目決めとか注意事項の話に使うぞ。学級委員あとはよろしく。」


 その後、運動会について話が進んだが、選択種目に誰が出るかまでは話し合いの時間が足りず次回に持ち越しとなった。綱引きとクラス対抗リレーは全員参加なので、その2つについて深く話していたら時間無くなったのだ。そのため次の話し合いまでに自分が出たい選択種目の候補を決めておけと小林先生に言われた。




 その日の授業が終わり、俺は健一と一緒に下校していた。


「お前なんの競技に出ようとしてるの?」

「目立たないのがいいかな。借り物競争とか障害物競走とか目立つしクラスの人が候補しないやつにすると思う。そっちは?」

「それこそ俺は障害物競走に出てみたいとは思ってる。選抜リレーとかもいいけど部活対抗リレー出るし、今思ったけど運動会の種目にリレー多くね?3つもあるぞ」


 今日朝に話があった運動会について話し合っていたが健一からは予想通りの返答が帰ってきた。そのまま俺の住むマンションに着いた。


「てかさ、経済のレポート終わらないんだけど見せてくんない?」

「生憎俺も終わってないんだよ。今日一緒にやる?ご飯一緒に食べるんだし」

「それいいかもな、1回家に帰って着替えてからそっち向かうわ」


 そして俺と健一は一緒に俺の部屋の前まで来た。


「じゃああとで」

「あとでな」


 そう言って健一は隣の部屋に入っていった。そう、この前隣の部屋に引っ越して来たのは健一だったのだ。健一と仲良くなってから一緒に帰ることがあり、その時に隣に健一が住んいでると分かったのだ。それ以降1週間に1度位のペースで一緒にゲームや勉強をして夕飯を食べるという生活を送っていた。


「そういえばお前彼女いんの?」

「は?なんだよ急に」

「いや、あんなにモテて誰かに靡く気配がないから彼女いるのかなって思っただけ」

「んー、彼女はいないけど気になってる人はいるかな」

「え、誰?」


 健一はニヤッといやらしい笑みを見せてから話し始めた。


冬城とうじょう美月みつき

「え、、、」

「って言ったらどうする?」

「べ、別になんとも思わないけど」

「お前わかりやすいな。大丈夫、心配しなくてもお前の好きな人を取ろうとはしなし、他に気になる人はいるから安心しろ」

「べ、別に好きとかそうゆうのじゃないから、憧れだから。別に付き合えると思ってないし友達にでもなれたらいいなとは思ってるけど」

「悠真、俺は好きって言うのは憧れの一種であり、それをわかりやすく名前をつけたものだと思ってる」


 冬城さんが俺にとって高嶺の花なことは分かっている。だから付き合うとか無謀なことはしないで友達になれたらいいなと思っていた。別に付き合うことを諦めたわけではないけどね。


「お前冬城さんのどこが好きになったんだよ、関わりとか無いのか?」

「一目惚れだし、入学式の時の挨拶とかでしか見なかったし関わりもない。最近は噂を聞くくらいかな」

「あの噂な、まぁどんまいとしか言いようないよな」

「そうだよな」


 その噂というのは冬城さんに特定の男性がいるのでは無いかというものだった。入学式の挨拶の後からこの1ヶ月間多くの男子生徒に告白されていたがことごとく玉砕されていた。そのうえ、1人の男子生徒とが振られた時に彼氏がいるのかと聞くと明らかに焦っていないと返答していたらしい。そのため特定の男がいるからと考えるのが普通だろう。


「まぁ、噂が本当かも分からないし、彼氏のいる人に告白してはいけないという法律はないからお前も告白してみろよ」

「やだよ。無理無理、俺が行ったって屍が増えるだけだし」

「好きじゃないのか?」

「惚れてるけど好きかって言われた分かんないし、そこまで踏み込む勇気がない」


 俺は冬城さんが綺麗な女性で魅力を感じている。だけどそれが全て恋愛に繋がるというのは違うと思う。


「ただ、仲良くなりはしたい。あの子のそばに居たら楽しいんだろうな」

「誰かのそばに居たいって思うなら、それはもう恋じゃね?」

「なら健一のそばにも居たいと思っているから俺は健一に恋をしてるのか?」

「うわ、キモ。この話はここら辺で切り上げて経済の課題終わらせようぜ」

「俺は終わったよ。お前が俺の写すとか言って全然やらなかったからだろ」

「そういうことだから写させてね」


 俺は健一にレポートをやらせながら風呂に入ることにした。風呂からあがるとレポートが終わったらしい健一がソファーに座ってゲームをしていた。


「お、来た来た。ゲームするぞ」

「はぁ、明日は学校だし早めに切り上げるぞ」

「へいへい」


 そう言って俺は健一の隣に座った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る