第11話
少し開けたやや窪地のような場所にそれはいた。
「…アースドラゴンか」
物陰に隠れて様子を伺っていたウェスは先程から感じていたモンスターの気配の主を視認して小さく呟いた。さて、ここからどうしたものか?と考えを巡らせる。
アースドラゴンとはドラゴンと名の付くモンスターの中では最弱の部類である。しかもいまウェスが捉えているのは成体になりきっていない個体のようだった。サイズ的にも20メートルにとどくかどうかというサイズ。
もちろんデカいことに変わりは無いのだが、ドラゴン種の成体で年齡を重ねた個体の場合には50メートルを超すような個体もいる。それに比べるとまだまだ若い個体のようだった。
その個体はウェスの気配に気づいた様子もなく窪地の中で静かに佇んでいた。もしかしたら寝ているのかもしれない。ドラゴン種は夜行性というわけでも無いのでたまたまこの個体が昼寝かなにかでもしているのだろう。
20メートル級のアースドラゴンであれば危険度としてはA級上位からS級の下位程度。成体のドラゴンであればSS級以上になってきて文字通りの災害クラスになりうるが、眼の前の個体であればウェス単独でも対応可能な可能性が高い。
先日遭遇したマンティコアよりは確実に脅威度は高いもののまぁ何とかなるだろうというのがウェスの見立てだった。ただもちろん何事にも例外はある訳だし、更にいうと現在はソロ狩りをしている訳では無い。あと少ししたら後ろの軍用馬車と合流したアランたちも追いついてくるだろう。
ここで下手に無茶をして後に響かせるくらいならアラン達と合流した後にパーティー戦で確実に狩りきった方が良いか、とアラン達に合流しようとその場を離れようとした瞬間、それはもうバッチリとアースドラゴンと目が合った。
物陰に隠れていたウェスはあまりにも偶然ドラゴンと目があった事に驚き、そしてドラゴンの方も微睡みから目覚めて何気なく少し離れた岩陰の方に目をやるとたまたま人間種と目が合い一瞬理解が追いついていないようだったが、
「グォオオオオオオオオオッ!!!!」
とハッとしたように咆哮を上げた。そしてそのままウェスがいる岩陰に向けて一気に土属性の魔法をばら撒いてきた。それらの攻撃をラプターに騎乗したまま慌てて後退することで避けたウェスは
「くそっ、マジでついてないな」
と悪態を付きつつラプターを走らせ場所を変える。チョロチョロと逃げ回るウェス達に対して怒涛の勢いで魔法をばら撒いてくるアースドラゴン。成体になりきっていないから大丈夫だろうと高をくくっていたウェスの思惑を他所に第5階梯相当以上の土魔法をぽんぽんと放って来るアースドラゴンを見て「くさってもドラゴンのはしくれか」と今更ながら若干警戒度を上げるウェス。
ラプターを駆りながら逃げ回っている訳だが、この状況から離脱してアラン達の方に向かうのは流石に危険すぎる。そのままドラゴンが追いかけてきてアランたちも巻き込んだ遭遇戦になる確率が高い。
それでもアラン達ならば問題なく対処するとは思うが軍用馬車が流れ弾などで破壊されてしまうとこれから1週間の活動に支障をきたす。それを考えるとここで少し踏ん張ってアラン達が来るまで粘るのが得策か、と判断する。
そしてそのまま数分。ラプターと共にアースドラゴンの攻撃から逃げ回りながらアラン達の到着を待つが一向にこない。何かあったか?と思いながらアースドラゴンからの攻撃の隙をみてアラン達が来るであろう方角を見ると盛大な土煙が上がっていた。
どうやらアラン達の方も何かしらのモンスターと遭遇して戦闘状態になってしまったようだった。それを見たウェスは即座に方針を変更。単騎でアースドラゴンを討伐することにした。
さてどうやってこの弾幕をくぐって一撃御見舞してやろうかと攻撃を避けながら考える。なお先程から騎乗しているラプター、なかなかに賢い上に度胸もあってこの弾幕の中でも怯えた様子を見せていない。流石にライラが手配してくれただけの事はある。
一般的にラプターを始めとした騎乗用の動物やモンスターたちは性格的にも大人しい個体が多く移動には使えても戦場では意外と使い物にならないものも多い。特に自分よりも格上のモンスターに遭遇した際にその傾向は顕著にある。
それを考えると現在ウェスが騎乗しているラプターは非常に良い性格をしている。先程からウェスがあまり手綱を握らなくてもしっかりとこちらの意を汲んだ回避行動をしてくれるうえ、そもそもアースドラゴンに対してびびっていない。
ラプターがやられると今後の足が無くなることから、先にラプターだけでも離脱させて自分一人でアースドラゴンに突っ込んでいく選択肢も考えていたウェスだったが、このラプターの様子をみてその背中をぽんぽんと叩きながら
「なぁ!お前も一緒に戦うか?」
と聞いてみると「キュイ!」と一際力強い返答がくる。それを聞いたウェスはにやっと笑い、
「なら騎乗用の装備を出さないとな」
と一言呟き、自身のアイテムボックスから身の丈を超える三節棍を取り出した。
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