第008話 武器選びは慎重

武器屋に行く道中にも様々な店や屋台が並んでいた。


特に魔道具屋においてあった商品を【鑑定】してみると、面白そうなものばかりだったので今度じっくりと見よう。


やっと着いた武器屋はギルドから歩いて約15分くらいの場所にあった。


これもこの街で行っている商売戦術なんだろう。


ギルドのすぐ横に戦闘や冒険の準備が出来る店を置くと他の店に足を運ぶ可能性が大幅に下がるので、あえて遠くに置くこと他の店も繁盛するようにしているのか。


[武器屋 土竜の足跡]


「ここが武器屋ですかね?つちりゅう?どりゅう?かっこいい名前ですね。」


「あれはモグラって読むんだぞ。渋い名前だろ。」


「へぇー勉強になりました。あれがまさかモグラなんて初めてでは読めないですね。」


こっちにもモグラがいるかは分からないが、馬がいたから可能性はあるだろう。


そういえば、元いた地球とこっちの異世界に共通している部分が何個かあるな。


それもゆくゆくは調べないといけないかもしれない。


「いらっしゃい。ようこそ”土竜の足跡どりゅうのあしあと”へ。俺は説明なんてしねぇーから気になるんだったら勝手に見るんだな。」


「”どりゅう”らしいですよ。私が正しかったみたいですね。」


「あっちの常識は通用しないな。」


「アタシも最初はモグラかと思ったわよお二人さん。」


「あんたらこのコイツの知り合いか?なら、さっさとどっかやってくれ、うるさくてかなわねぇ。」


そこにいたのは宮武だった。自由行動なのに色んなやつとよく会うもんだな。


それにこの店主の様子を見る限り相当な交渉をされているようだ。


街の相場を調べるんだろうなとは思っていたが所持金少ないのに強引に買い物とかしてないだろうな。


俺達は店主と宮武の値段交渉は耳に入れず勝手に武器選びを始めた。


武器なんてただの道具に過ぎないと思っていたが、いざ店に来て実際に手に取って選ぶとなるとワクワクしてきたな。


「一ノ瀬さんのそんな楽しそうな表情初めて見ました。」


「俺も人間だから、喜怒哀楽ぐらいキチンとあるに決まってるだろ。」


「ふふっ。そうですよね。」


はしゃいでしまっているのを見られてしまったからと思うと恥ずかしくなってきたな。


でも、こんなに種類が多いと迷うな。


「結構迷ってしまうな。どうだ、小原。そっちは良い弓ありそうか?」


「私には【鑑定】スキルがないのでどれが良いか分からないですけど、これが欲しいって思いました。」


値段はちょうど800ゴールド。

昨日と今日の分を合わせれば買える金額だ。


本体部分は鮮やかな青で、弦は黒になっている。


名前:蒼弓そうきゅう時雨しぐれ

説明:ルーシの木を水凛すいりんで染めた弓。ルーシの木によってしなやかで女性でも引きやすいが、耐久性は少し低い。水凛という花で染めているため、防水、防腐も施されている。弦は、ミートボアの尻尾から出来ているので丈夫。

スキル:なし


初心者には扱い安いし、デザインもかっこよくていいな。

これを見つけ出してくるのはセンスがあるのかもしれない。


「俺もそれが良いと思うぞ。女性にも扱い安いらしいからな。」


「【鑑定】で見ていただけたんですか!一ノ瀬さんが勧めてくれるならこれにします!」


俺も良いのが見つかるといいんだけどな。


どれもしっくり来ない。


そもそもどういった種類の武器にするかも決めていない。


「うーん。どうしたもんか。」


「一ノ瀬はずっと悩んでいるわね。小原ちゃんはもう決めて買っちゃたわよ。」


「宮武はもう用事すんだのか?」


「宮武さんでしょ。年上に対しては礼儀を重んじなさい。」


「宮武さんは用事すんだのか?」


「貴方も頑固ね。ここでの用事は終わったわ。300ゴールドで何か武器でもと思ったけど流石に厳しかった。【交渉術】を使っても最低で500ゴールドが必要ってところね。相場が知れたからいいけど。」


「それでその300ゴールドは結局何に使うんだ?」


「今日はほとんど店を見て回ってけど、やっぱり300ゴールドで買えるのは食料ばかりね。でも、道具屋で使えそうな物があったから消耗品だけどそれにするわ。」


これは有難い情報だ。


今度から装備などを揃える時は3000ゴールドぐらいはないと始まらないと言った感じか。


それぐらい稼ぐ為には討伐した魔物の死体問題があるな。


解決しないといけない問題は多くなる一方だ。


そうこうしていると良さそうだと思える武器を見つけた。


始めは投擲にも使える武器を探していたが、これは少し重量があるので不向きかと思うが投げれないこともない。


それに鑑定を使うと、


名前:ポルタガ

説明:クランド鉱石で出来ていてダガーの割に重量感がある。その代わりにスキル付与がしやすいため、これには【紛失防止】というスキルが付いており無くしても手元に戻ってくる。

スキル:【紛失防止】Lv1


スキル付きの武器というのが気に入った。


しかも、それ値段は1000ゴールドというのだからお得だ。

効果も投げても手元に戻ってくるのだから便利だし、俺にはピッタリだな。


「これは買いたい。」


「おいおい、本当にそれを買うやつがいつとはなぁー。」


「そんなに人気ないのか?スキルが付いているのに。」


「スキル付きの武器は高価な値段になることがあるが相性が悪かったりすると売れ残ることも珍しくないな。例えば、打撃系の武器に切れ味を上げるスキルが付いても効果は発揮しないのに無駄にコストが掛かるからな。」


「これは相性が良いと思うけど。」


「確かに投げナイフとして使えば相性いいかもしれないが、それにはあまりに重すぎる。そんなの使えるのはよっぽどの変わり者ぐらいだな。」


確かに【投擲】のスキルをただ持っていてもこの武器を扱えるかは怪しかったな。


俺には前の世界での経験があるので問題なく扱えるがな。


スキルと自分自身の経験は、強く結びつけられているようでそうでもないらしい。


「本当にこれでいいのか?俺的にはこれを買ってくれるのは在庫処分になあるから嬉しいが。」


「投げナイフに使えなくてもダガーとして使えるな十分だ。ここに貢献できるなら悪い気もしないしな。」


「あんたのその漢気、気に入った!おまけでこの謎の刀を200ゴールドでつけてやる!」


「そう言って在庫処分したいんだろ。けどの商売人魂に免じて買ってやるよ。」


「毎度有り!あんただったらいつでも歓迎だけど、そこの銭ババとは一緒に来るんじゃねーぞ!」


ババアと言われて我も忘れて殴り掛かろうとする宮武を抑え込みながら店を出た。


相手も商売をしているのだから値切る人間が来たら良い感情を持たないのは当たり前だ。


そこは【交渉術】のレベルを上げていくしかないだろう。これも良い勉強じゃないか。


「あのクソ店主今度あったら値切りに値切ってやる。」


「さ、流石に女性にババアを酷いですよ。み、み、宮武さんすごいお綺麗なのに。」


「あらー!すごい嬉しいこと言ってくれるじゃない小原ちゃん!」


小原は最初に出会った時に怒鳴られたから宮武にビビっているのが丸分かりだ。


変なこと言ってこれ以上機嫌を損ねるといけないのであえては言わないが。


「一ノ瀬、あんた店主から何押し付けられたのよ。」


「これか店主も詳しいことは知らない謎の刀らしい。刀と言うにはあまりに雑な作りだがな。」


「有金全部使わされてそんなガラクタ押しつられたの?信じられないわ。」


「別に武器だったら2、3本くらい持ってても無駄にはならないだろ。それに暇な時にゴブリン狩りすれば200ゴールドぐらいすぐに貯まるし。」


「一銭を笑うものは一銭に泣く。良い言葉だから覚えておきなさい。」


ここで道具屋に用事があるって言ってた宮武とも解散。


俺と小原は特にやることも思いつかないので、そのまま王宮へ戻ることになった。


1本は調べたけど、謎の刀を調べていなかったので【鑑定】を使うことにした。


名前:謎の刀

説明:全てが謎に包まれた刀。誰が作ったかさえも分からない。今は分かるのは、現在この刀は本来に実力や外見ではないということ。

スキル【進化】Lv0 ???


あの店主が言っていた通り謎が多い刀らしい。


それに俺と同様に???のスキルがある。

いつかこのスキルについても知れるかもしれない。


あと、この【進化】というスキルはなんだろう。


もしかするとすごい刀かもしれないが、今の所スキルのレベルの上げ方もしらないのでどうすることもできないな。


潜在値は高そうだし悪くない刀なのに手放すということは、


あの店主少なくとも【鑑定】は持っていないな。


1200円で2本も満足のいく武器を調達できた。


明日はまた狩りに行くはずだから、これが使えると思うと楽しみだな。


そんな新しく買ってもらった玩具を試す子供のような興奮を覚えて眠りについた。

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