第009話 肉祭りの準備
「みんなちゃんと集合時間には間に合ったな。」
「やる気はバッチリ!張り切りすぎて怪我しないようにだけ注意しないと。」
「ワシも体力は回復したから足手まといにはならないぞ。」
それぞれの意気込みが発表されている。
1回目の狩りの活躍でノルマしか達成できなかった組は特にやる気を出している。
俺も武器を買ったから試してみたくてたまらない。
徐々にRPGのようなゲーム感覚になっていく自分に少し恐怖を覚えながら、ギルドで適当な依頼を選んでいる。
そこにある依頼はどれも中級の魔物の討伐ばかり。
7人がかりで挑めば達成できなくもないかもしれないが、魔物のことを知らない俺達はデメリットの大きさに目を瞑ることはできないだろう。
[依頼書]
・ミートボアの肉を大量に
概要:俺の店で月に1度の肉祭りをやるんだ!今回も上手く業者と連絡を取って無事に行えると思ったが、業者が間違ってミートボアの発注を忘れてやがった。ミートボアはそこら中にいると思うから頑張ってくれ!その分、報酬は弾んてやるからな!
報酬:1匹150ゴールド 最低10匹から
ミートボアといえば多くの飲食店で取り扱っている肉か。
個体数は多いが、需要もそれなりにある。
それに初心者にはありがたい150ゴールドだ。
「一ノ瀬さんが何か良い依頼を見つけたみたいですよ。」
「お前なぁ。確かに少し良いかと思って見ていたけど。」
「一ノ瀬さんはあまり意見を出してくれないので、僕が代わりに発言してあげますよ。」
他の5人がこっちに集合してしまう。
この依頼は今の俺達にとっては良いものかもしれないがちょっと難しい部分がある。
「一ノ瀬がこれを見つけたのか。なかなか良い依頼に見えるが何故言わなかった。」
「俺達なら頑張りゃ10匹ぐらいいけるだろうし、150ゴールドももらえれば稼ぎになる。でも、どうやったその肉を運ぶんだ。鮮度をなるべく保ちたいなら空気に触れさせない為に、死体をそのまま運ぶ必要が出てくる。仮に肉のまま運ぶにしてもその道具がない。」
「それなら僕に良い案があるよ。」
そういって上野が説明することもなくギルドのカウンターへ向かう。
「お姉さん少し良いですか?」
「冒険者の方ですね。おはようございます!ご用件はなんでしょうか?」
「【アイテムボックス】を持っているサポーターを探しているんですけど誰かいないですか?」
「そのスキルはかなり希少性の高いスキルとなっていますので、サポーターの中にはおそらくいないかと思われますね。代わりと言ってはなんですがアイテムバッグを持っているサポーターなら紹介できますよ。」
道具として【アイテムボックス】が売られているのか。
この間のエルバスの時は【アイテムボックス】が便利でその必要性を知れた。
なので、そのアイテムバッグという道具は何がなんでも欲しいな。
今度探してみることにしよう。
「それならこの依頼受けさせてもらいます。」
「かしこまりました。受理させていただきましたので、ギルドの外でお待ちください。すぐにそのサポーターを呼んで参ります。」
外で待つこと3分。
やっとサポーターらしき人物とギルド職員がやってくる。
サポーターの方は、身長は高めで痩せ細った男だ。
普段まともな食事ができていないほど収入がないのかもしれない。
「お待たせしました。こちらが皆様のご希望に沿ったサポーターのルーメルさんです。」
「今時、冒険者でアイテムバッグを持ってないなんて珍しいね。お小遣い稼ぎにはこのサポーターがちょうど良いから手伝うけど。それで依頼は?」
「ミートボアの肉をギルドに運ぶ依頼です。」
「えっ?ミートボアを?なかなか大変そうな依頼を受けたね。」
「大変そう?あれは下級の魔物だろ?俺達だってそのくらいなら問題ない。」
「確かにあれは下級の魔物だけど実態はほど中級。足も速さと頭の丈夫さもあるからね。それにミートボアの周辺では、美味しい肉を狙って中級の魔物もいたりするから。」
ゴブリン狩りの時には他の魔物の様子がなかったから忘れてたが普通に他の魔物がやってくる可能性もあるのか。
何も起きなければ良いのだけど。
「サポーターは基本的には雇い主の言うことに従って動くから、話し合って決めてね。それと僕のサポート料金は1日で1000ゴールドだよ。」
7人全員で集合して話し合う。
「どうしますか。サポーターがいないと依頼はこなせそうにないですよ。」
「でも、それで依頼を達成しても手元に残るのは数少ないわよ。1000ゴールドも支払ってたら。」
「なら20匹ぐらい倒すしかないだろ。どちらにせよアイテムバッグを買う金も必要だ。」
結局はそうなるよな。
俺達は結局このサポーターに同行してもらうことにした。
ゴブリン討伐が無限にできていたら楽に金を稼ぐことができたはずなのに。
「それでは、よろしくお願いします。」
◇◆◇
「そっちにミートボア行ったわ!」
「任せて。くらえぇーーー!」
「やっと1匹ゲット出来たな。血抜きぐらいはしておこう。」
3人と4人で分かれてミートボアの討伐に挑んでいる。
サポーターが言っていた通り、このミートボアを1匹狩るのにも時間が掛かっているようだ。
このペースだと日が暮れるので、俺達の方はペースアップすることにした。
「落ち着けよ小原。お前なら当てられるはずだ。」
「はい。分かりました。期待には絶対に応えます。」
小原が静かになって狙いを澄ませている。
他の人は小原が新しく武器を買っていることに興味があるようだったけど、その視線も今は気にならないようだ。
「えいっ!【弓術】”コントロールショット”」
放った弓矢は見事にミートボアの頭に命中。
昨日までは的に当てるのにも時間が掛かっていたのに、1発で当てれるとは思っていなかった。
「一ノ瀬さーん!当たったのにこっちの方に突進してきてるんですけど!元気なんですけど!」
「今だ!井村、清水!力で、もっていかれないようにしっかり持っておけよ!」
「「了解」」
やはりあのミートボアは視界が狭いようだ。
井村と清水には全く気付くことなく小原に一直線。
案の定、隠して引っ張っている糸に引っかかり体勢を崩す。
そこに俺が止めの【投擲】を使用する。
投げる時にいつも以上に目一杯力を込める必要があるが、それ以外は真っ直ぐ飛ぶしいつも以上に威力は出ているので買ってよかった。
「【紛失防止】。おっ、この距離でもしっかりと戻ってるな。このスキルも問題なく使用できる。あとは、もう1つを試すぐらいだ。」
この狩りの方法がこのメンツで考えられるベストだろう。それでも時間はかかる。
安全に倒せる個体を探すところから、倒すまでの流れで無駄なところがあれば修正できるようにしよう。
その後は流れるようにして作業を進めていく。
俺はポルタガの使用感が掴めたので、謎の刀に武器を変えてミートボアを倒していた。
もしかすると武器の【進化】というスキルのレベルが上がるかもしれないからな。
「武器2つも買ったんですか!すごいですね!私なんてまだレンタルですよ。」
「もしかすると昨日も狩りに出掛けていたのかい?やっぱり一ノ瀬君は真面目だね。」
少しばかりの休憩時間に話しかけてくる清水と井村。
「武器はどうしても自分の物が欲しかったからな。それに昨日は小原と上野も一緒に狩りに行ったぞ。上野は結局1匹も狩らなかったけど。」
「そうなの!小原ちゃんも偉いね!」
「え、あ、ううっー。」
話のきっかけになればいいと思ったがやはり難しかったか。
これ以上は無理に会話させるのは良くないと思ったので助け舟を出そうと思ったが必要がなくなったようだ。
「大丈夫。大丈夫だよー。緊張とかあるかも知れないけど自分のペースで話せば。」
「あ、ありがとうございます。清水さんが優しいのは分かっているんですけど。」
「こちらこそありがとう。ゆっくりで良いから仲良くなろうね。」
小原の頭を優しく撫でる清水。
小原の顔もどこか嬉しそうな表情をしているように見える。
「これは美しいな。」
「井村はこっち系が趣味なのか?」
「違う違う。絶対に違う。」
「冗談だ。」
「ひどいねー。年寄りには優しくしろって習わなかったのかい。」
「今、習ったから次からは大丈夫だ。」
これで小原が話しをできる人物が増えた。
コミュニケーションの全てを俺に依存する形にならなくてよかった。
後半の狩りは心なしか順調に進んだように感じた。
そして、ついに俺の刀が形を変える。
名前:
説明:謎の刀が進化した第一形態。作りはかなりシンプルな物で扱いやすい。そして、耐久性にかなり優れており折れることがないと言われている。
スキル:【進化】Lv1 New【頑丈】Lv1 ???
進化して新たなスキルまで付いているじゃないか。
まさか買って次の日で進化するとは思っていなかったけど、ラッキーだったな。
でも、進化するのは徐々に難しくなっていくだろう。
残り時間の俺は進化した無鉄でかなりのやる気ができているので、作業効率が上がったのだった。
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