第016話 新スキル取得
結局、あの盗賊達は全員が無事に確保されて今はどこかへ隔離されているらしい。
廃墟自体も、また誰かの住処にされたらたまらないので取り壊すことが決まったようだ。
俺は後から知ったが盗賊達が売り飛ばそうとしていた子供達がいたらしく、その子達も無事保護された。
ほとんどの子は行き場のない子が多く、路頭に迷う可能性があったのでエデルという街に搬送されるのが決まった。
今日はみんな昨日のことがあって疲れているだろうからということで休日としている。
異世界に来て、初めての体験を色々としてきて冒険の始りを実感しワクワクしていた。
しかし、昨日初めて人の死というものを目の当たりにするこちとなった。
冷たくなってなにも喋ることの出来ないただの肉塊に、他の人はどんな感情をいだいたのだろう。
俺は、それが犯罪者であっても憐れんでしまう。
エルバスにも生活があったはず。それが突如として明日が来なくなるのは悲しいという言葉だけでは足りないだろう。
気持ちを切り替えるために、街へと足を運んだ。
なにせ、盗賊を捕獲した報酬として1人5000ゴールドも手に入ったからな。
欲しいものを買うなら今のうちだろう。
他の6人も街に来ているらしく先ほどからちょくちょく様子は見かける。
俺も防具を新調しようかどうか迷うところではある。
でも、目的地は最初から決まっている。
この間は十分なお金が無かったので入るのを躊躇ったが、今なら魔道具屋でも買い物できそうだからな。
[魔道具屋 クランク]
「いらっしゃい。」
店主のおばあさんは落ち着いた声でそれだけを言う。
他の店と違って購入を促すようなことはしてこないな。
それでも、魔道具は冒険者にとって必須なアイテムなので経営には困らないのだろう。
「おばあさん、ちょっといいか?表の方に、アイテムバッグが見当たらないけど置いてないのか?」
「アイテムバッグならあるよ。便利でいいけど、金を持っていない客も欲しがるから店頭には置いてないのさ。」
「それがないと俺達は困る。買いたいんだけど、いくらぐらいだ?」
「大きさによってバラバラさ。アンタ見たところ、駆け出し冒険者って感じだろ。まぁ、それならアイテムバッグが欲しくなっても仕方ないね。」
そう言って裏に姿を消して数分間戻ってこなくなる。
その間にも店の商品を物色していると、やっとおばあさんが戻ってくる。
「はいよ。これがアイテムバッグ。まず、その1番小さいのが1000ゴールド。入る大きさは、ゴブリンで換算すると2〜3匹が限界って感じね。そこまで大きくないからこの値段なのさ。」
実際に手に取ってみると作りはウエストポーチのようになっている。
これにゴブリンが入るのかは疑問だけど値段は安くなっているな。
魔物の死体を回収する目的で使いたいが大きさ的には序盤ぐらいしか使い物にならないだろう。
値段と大きさについて考慮しながら、要検討だな。
「次はこれだね。6500ゴールドのアイテムバッグだよ。これは、大きさが先程よりもかなり大きくてゴブリン10匹から13匹は入る品物。これぐらいになってくると生産数は激減。それも在庫が少なくなって来たから次入るのはいつになることやら。」
この時点で買う事は出来ない値段になってしまった。
やはりアイテムバッグの生産はかなり難しいということなのか、在庫も少ないらしい。
おばあさんが買わないと損だぞというアピールをしてくるがそれを一旦無視する。
形状は、ショルダーバッグぐらいの大きさで作りも大きく変わり、2つ入れることができる場所がある。
便利さで言ったら圧倒的にこちらの方なので、今は買わずに狩りに出てお金を貯めるのもありだな。
追加で必要なのは1500ゴールド。ゴブリンを狩っていたらすぐだ。
「最後がこれだよ。このアイテムバッグの値段は、驚きの10万ゴールド。桁が全然変わってくるね。なにせ、これを作るのは1年に1回できるかどうかの代物さ。大きさも無限の大きさと言われるぐらいで人も簡単に入れるぐらいよ。」
最後の最後にすごい隠し玉を持って来たな。
あれがほぼ店には出回っていないアイテムバッグか。
これはルメールが持っていたのものと一緒でリュックサックのようなっている。
いつ1人旅になるか分からないので、いつかは持っていたいな。
今の俺では10万なんて大金を集める方法がないので、まずは今買うべき物を考えよう。
「んで、どれにするんだい。ここは分割とか後払いはやってないから1回で買えるものにしなさいね。」
「とりあえず1000ゴールドのアイテムバッグが欲しい。今は持ち金がそれぐらいしかなくてな。」
支払いを終えるとアイテムボックスをすぐにもらえた。
そういえば鑑定スキルを使うのを忘れていたので使ってみる事にした。
名前:アイテムボックス小
説明:これ1つで冒険の難易度が大きく変わると言われているほどののアイテム。ほとんどの冒険者は、このバッグを持っている。生産性はかなり高く、大量生産されている。
スキル:【拡張】Lv2 【収納】Lv2
やっと念願のアイテムボックスが手に入った実感が湧き上がってくる。
これを購入しても手元には4000ゴールドも残っている。
買いたいものがありすぎてどうしようか迷うな。
道具屋もいいし、本屋もいい。
俺は迷った末に本屋に行くことにした。そこには魔導書やスキルロールが欲しくなったからだ。
[本屋 猫のお留守番]
「おぉー!一ノ瀬君じゃないか。奇遇だね。一ノ瀬君って本好きだったの?」
「井村こそこんなところで何してんだ。もしかし、こっちの世界でも仕事のこと考えているのか?」
「それもちょっとあるかもね。でも、基本は趣味で読みに来ただけだよ。こっちの世界についての知識が全くないのは生き延びていくには不利だからね。」
「勉強熱心だな。これ以上、邪魔するわけにもいかないし自分の買い物に戻ることにする。」
井村と分かれた後に、魔導書のコーナーを見つける。
スキルロールも一応、奥の方で乱雑に管理されている。
とりあえず、何冊か気になったタイトルの物を手に取ってみる。
[猿にでも分かる魔法スキルについて 作者:ライラッド・クーエダ]
[初心者冒険者が覚えるべきスキル 作者:ライラッド・クーエダ]
[この世の常識を変える究極スキル 作者:ライラッド・クーエダ]
手にした本のほとんどがライラッドという人間が書いたものばかりだ。
よく見ると本棚にある本も6割くらいは作者がライラッド。
この人はきっとスキルについて詳しい研究者か何かなのだろう。
もし直接会える機会があればスキルについて詳しく説明してもらいたい。
俺は、[猿にでも分かる魔法スキル]と言う本とランダムスキルロールを3本を購入する。
合計金額は、3000ゴールド。
本屋だと思って油断していたがかなりの出費になってしまった。
残りの1000ゴールドは不測の事態に備えて貯金しておくことにした。
王宮に戻ると早速ランダムロールを開けることにした。
何が覚えられるか分かるスキルロールはとても高額だったのに対して、ランダム系だけはなぜか安くで購入できた。
ガチャのようなワクワクと胸にスキルロールと3つ開封する。
光に包まれて身体から新たな力が湧き上がる。
とりあえずステータスの確認をすることにした。
どんな攻撃系のスキルが手に入ったのかと期待していると
名前:一ノ瀬 勇 25歳
称号:???
スキル:【鑑定】Lv1 【投擲】Lv2 New【料理】Lv1 New【読書】Lv1
New【反撃】Lv1 ???
俺の考えが甘かった。
3つ全部攻撃系のスキルならと思って買ったのに、2つは非戦闘スキルだ。
それに攻撃系っぽい【反撃】も自ら発動するタイミングを選べない難しいスキルだろう。
食事の時間になるまで本でも読んでおこう。
それで魔法スキルを習得する条件でも分かれば今回の買い物も意味があったはずだ。
今度から買い物をする時は計画的にしないとなと改めて思う1日だったな。
コンコンコン
もう食事の時間か?
ドアを開けるとそこには使用人ではなく小原が立っていた。
なにか相談でもしにきたのだろうか。
「失礼します。小原です。一ノ瀬さん、こちらに戻ってから清水さんを見ていませんか?」
「いや、見ていないけど。確かにもう夜が遅いけど、まだ買い物でもしてるんだろ。」
「そうだといいですけど。今日の朝、少し思い詰めたような顔をしていたので。」
「食事の時間まで待っていよう。そこで帰ってこなかったらさすがに心配した方がいいだろう。」
「そ、そうですよね。きっと私が心配しすぎなだけだと思います!すみませんお休み中に。また食事の時間にお会いしましょう。失礼します。」
小原は、そのまま部屋へと戻っていく。
ただ心配しすぎなだけだと。
その心配が的中したかどうかは、今夜の食事で分かることになる。
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