第012話 絶望の廃墟
森の中を俺達は探した。
少しでも手掛かりになりそうなものがあればと思ったがなかなかそれらしき物は見当たらない。
アジトの場所も知らないのでどうしようもないのかと諦めかけていた。
昨日、盗賊が現れた場所を探していると何かが落ちているのを見つける。
これは誰かの指輪のようだ。
もしかするとあの盗賊達の誰かが落としたのかもしれないと思い【鑑定】を使う。
名前:罪犯しの指輪
説明:罪を犯した人間のみがつけることの出来る指輪。身体能力を少しだけ向上させるスキルが付与されている。他にも、無くした際に自分の元へ戻るように【紛失防止】も施されている。
スキル:【身体強化】Lv1 【紛失防止】Lv1
なんの手掛かりもない指輪か。期待して損をした。
「どうする上野。何も情報がないのなら今日は帰るしかないぞ。」
「いえ。きちんと居場所と突き止めましたよ。」
「どうやってだ。ここには何も情報がなかったぞ。」
「ここら辺の木の枝を見てください。所々折れた後があります。それも結構新しい跡が。それに、ここの草よく見ないと分かりませんが、踏まれた形跡のある場所が先の方まで続いています。」
「そこを辿ればアイツらの居場所を突き止めることができるということか。」
「恐らくは。今はそれ以外に情報がないので行くしかありませんね。」
7人でこの形跡を辿っていく。
上野の言う通り、目の前には大きな廃墟が1つ。
森の中にこんな場所があったなんて。
「あれを見ろ。門には2人の見張りがいるぞ。俺が遠距離から攻撃する手段がない。上野、一ノ瀬。頼めるか。」
「もちろんです。でも、僕の魔法ではこの距離を当てることが出来るかは五分五分ですね。」
「ならもう1人適任がいるぞ。小原だ。小原なら弓が扱える。」
「小原。お前にこんなことを頼むのは申し訳ないが頼めるか。」
「わ、私、頑張ります!」
あの2人からも情報が欲しいが生かしておくという加減はできない。
しかし、殺してしまうことも流石に躊躇うので肩に投げ込むしかないか。
それで怯んだところを素早く倒す。
「いくぞ小原。【投擲】」
「【弓術】”コントロールショット”」
狙った通りにダガーが飛んでいき、肩に突き刺さる。
小原の弓は太ももに刺さり動けなくなっている。
咄嗟にしては、足を狙うのは良い判断だ。
そして、見張りが声を上げる間もなく大城が突っ込んでいく。
「なにも、グハッ!」
「きさm、ゴォッ!」
そのスピードで2人も倒せるのなら最初からそれで良かったんじゃないのか?
と疑問に思いながらも玄関の方へ行く。
見張りは、武器以外なにも持たされていない。
最低限の物で守らされているというこか。下っ端の扱いの悪さが窺えるな。
「この武器貰っていった方がいんじゃないか?ないよりはあった方がいいだろうし。」
「じゃあ、私が貰うわ。これから敵がいるかもしれない場所に行くのに、手ぶらじゃ心配だもの。」
「ワシも貰おう。武器は前から欲しかったからね。」
妥当な2人に武器が渡ることになった。
しかし、このままだと清水が武器を持っていないので1つ貸しておくことにしよう。
上野と大城は武器なしでも十分戦えるから問題ないだろう。
「これ使え。ダガーの割には重いがこっちの刀よりは扱いやすいだろう。」
「えっ、いいんですか!武器なんて私が借りちゃっても。」
「あくまで護身用だ。基本的には戦わないのが1番だけど武器をもっていないのも危ないだろ。」
「ありがとうございます!」
別に善意でしたわけではないので、すぐにその場を離れる。
中に入ると建物内部は以外に広くなっているようだ。それも異様なほどに。
「この建物、外で見た時と中に入った時の大きさが明らかに違いますね。」
「あぁ。俺もそれは思った。そういうスキルなのか分からないが注意して進むぞ。」
俺達がこの建物内を調べようとした時、何者かが目の前の階段から降りてくる。
ここにいるってことは明らかに敵だ。
姿を見せたらそのまま斬り掛かる。
「あららー。雑魚を門番にするのは間違っていたかなー。他の雑魚が入っちゃってるよ。」
エルバス・モリッド。
顔や背丈、声までが彼を彷彿とさせる。
しかし、ここにいる全員が彼とは同一人物ではないことが分かる。
佇まいから喋り方、何より溢れ出ている殺気がエルバスとは違うことを証明している。
「どうする大城。ここは一旦逃げるか。」
「・・・。」
「おい!集中しろ!あいつは正面からでは戦えない相手だぞ!」
「あぁ。そ、そうだな。一旦「なんの相談してんの?混ぜてよ。」
あの距離を一瞬で。
それに物音1つしなかった。こいつは今も俺達とレベルが違いすぎる。
人を殺すために今まで生きてきたような男だ。
「【光魔法】”ライト”」
上野の起点で逃げ出す時間を作り出す。
しかし、敵は一目散に魔法を使った上野の方に向かう。
チッ。他のやつ逃してお前がやられたら世話ないだろ。
「鬼ごっこは嫌いなんだよ僕は。」
「そいつは俺達のパーティの核なんだ。ここで殺されるわけにはいかない。」
「特にスキルとかもないくせにお前やるな!気に入った気に入った!お前から殺す。」
ただの前蹴りで遠くまで吹き飛ばされる。
庇おうとした上野まで一緒に。
「おい、他の5人は逃がせた。だから、情報を見つけるまでは俺達で時間を稼ぐ。良いな。」
「簡単に言いますね。相手は格上。もって10分ですよ。」
「そんなの百も承知だ。」
俺はとにかくエルバスの格好をしたやつをフリーにさせないために斬りかかる。
「その刀。どこで見つけた。僕が探してたんだけど。」
「お前に教える義理はねぇーよ。」
「君が1度持ってしまったのなら、もう僕のものにはならない。ならいっそへし折るか。」
またさっきの蹴りがくる。
今度はしっかりと刀で受ける。
重くて今にも刀を弾かれてしまいそうだ。
「なかなか丈夫にできているな。普通の刀なら折れてるはずなのに。」
「くらえ!【光魔法】”シャインボール”」
こちらに気を取られている間に上野が【光魔法】を放つ。
今までに見たことない技だ。いつの間にかスキルレベルが上がったのかもしれない。
「んだよぉー。邪魔すんじゃねぇーーー!」
魔法を腕の払いだけで撃ち落とした。
こいつどれだけ強いんだ。
【鑑定】はもちろん本人には使えないが、身につけているアイテムには使えそうだ。
名前:封魔のブレスレット
説明:魔法スキルを無効化することが出来る魔道具。使用回数には制限があり、使い切るとただのブレスレットになる。無効化できるスキルには制限があり、全て無効化できるわけではない。 (残り回数:3回)
スキル:【魔法無効】Lv2
「こいつが魔法を無効化できるのは後2回だ!攻撃していればいつか当たるぞ!」
「お前、【鑑定】まで持っているのか。欲しい。欲しくなってきたな。【闇魔法】”ダークボール”」
こっちに向かって魔法を飛ばしてくる。
これをまともに受けていたら追撃を防げない。
俺はそのまま回避するとやはり追撃を仕掛けてくる。
「ちょこまかと逃げないでくれ。雑魚をやるのにこんな時間をかけたと知られたら僕がやられちまう。」
「お前の上にまだ誰かいるのか?」
「いや、僕がこの盗賊団のリーダさ。お前ら知りたいことがあるみたいだけど僕は答えないよ。」
これ以上まともに戦って勝てる未来が見えない。
でも、逃げたとしてもこいつが野放しになって他の5人に危険が及ぶ可能性が高まる。
早くしてくれと願う以外にできることはないな。
殴りかかってくる敵に対して刀を構える。
しかし、やつの手から隠し持っていたナイフが飛び出してくる。
俺も予想できない事態に対応が遅れてしまう。
「痛そうだねー!腕にナイフ刺さっちゃったねー!どんな気分?ねぇねぇ!」
「お前を1発ぶん殴りたい気分だ。」
「やってみろよ。」
とりあえず、こいつのヘイトは俺がもらう。
上野は魔法が使えるが近接戦闘においては無力だ。
それにしても、片腕に力が入らない。
これだったらポルタガの方を自分で持っておくべきだったか。
刀はとりあえず鞘にしまう。
「あれ?武器無しで僕と戦うの?本当に舐めてるの?」
「言っただろ。殴りたい気分だって。」
そこら辺に転がっている石を目元に目掛けて投げる。
一瞬、手で防ぐモーションをしたので足元を薙ぎ払う。
しかし、蹴ってもびくともしない。
「それで僕が倒れるとでも?まぁ、どうせ僕が殺したこのエルバスについて探りに来たんだろうから、さっきの仲間が廃墟うろついてるだろうけど。生きて戻ってくると良いね、お仲間さん。」
「俺は俺が生きていればそれで良い。」
「ならもっと可哀想だ。お前が死ぬのは確定事項だから。」
こいつとの死闘はまだ繰り広げることになりそうだ。
多分、こいつの盗賊仲間が潜んでいる可能性が高い。
頑張ってくれよ5人とも。
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