第2話 気張って楽しく美しく
僕は3歳ほどになった。
幼いから物覚えがいいのかこの世界の言語はある程度習得した。それにより、僕が今置かれている現状をある程度把握することにも成功した。
先に述べた2人が僕の父母だ。ファミリーネームはカリズ。のんびりとした草原にある村で畑を耕したり、狩りをしたりして村の人たちと楽しそうに暮らしているようだ。
おっと、こっちの世界での僕の名前はカミィ。カミィ・カリズだ。以後お見知りおきを。
そして一番重要なことだが、僕は万象途絶をこの体にも継承していた!さっき試してみたが、1分間確実に先延ばしされていた。いやぁ愉快愉快。あの僕以外が動かなくなる感覚、最高。物理法則は前世と同じみたいだから、要領もいっしょだろう。発動中意図的に身体を無重力にできたし。
で、問題はこの
だが、この魔法というのには莫大な魔力がいるようで、並みの大人ではちょっとした身体強化や料理の火起こし程度のことしかできないらしい。
つまりこの魔力量っていうのが重要なようで、それさえあれば強力な魔法も扱えるようだ。
でも魔力量の相場ってどんなもんなんだろ。ていうか成長につれて魔力量って増えるのかな。じゃあさっきこの家を跳び箱の要領で跳び越えた(万象途絶無発動)僕っておかしいのかな...
それに万象途絶のような空間や時間に干渉するような魔法は存在しないようだ。魔法はあくまで火だったり水だったり回復だったり光とか毒とか…そんな感じの、なんというか、まぁありがちなやつしかないようだ。
以上のことより、僕は万象途絶を未公表とします!
だって
「な、なんだ、これはただの身体強化の速度ではないっ!?だ、だがそんな魔法など存在しな…」
バスッ
「チェックメイトさ。ってもう死んでるか」
ってのやりたいじゃん!いやぁ、たぁのしくなってきたぁ‼
僕はまだ3歳。これからちょっとずつバレないように魔法の勉強とか万象途絶の練習とか身のこなしとか修行して、いずれ旅に出よう。あ、旅に出るまではしっかり父さんたちの仕事とか手伝って、旅に出てもちょくちょく親孝行しよう。そうすれば僕のしたいこともさせてもらえるはずだ。
手始めに8歳くらいになったら魔法の使い方とかを教えてもらおう。
強くなって、旅に出て、悪い奴らをめちゃくちゃかっこよくフルボッコにするんだ。倒し方のパターンをいくつかイメージしとかなきゃな。それで旅先で、弱そうに見えるのに圧倒的な力で人を助けていずれは「力の底が見えない最強の旅人」としてなんの能力かはわからないけどとんでもなく強いやつみたいな肩書き欲しいなぁ。なんか
「こ、この力は…まさか、あの…!?」
みたいなの。めちゃ良い。あ、必殺技とかあったらもっとかっこよさそう。万象途絶を使えば僕のしたいことは大体できそうだ。まあもう万象途絶が必殺技っぽい感じするしめちゃくちゃかっこいいんだけど。ただ前世の死因みたいな欠点もあるから対策とか考えて留意しとかないと。
思えば前世でもそれなりにこの能力で楽しんでいた。
それからの日々はとにかく楽しかった。
僕はなんかかっこよさそうなことをどんどんやった。ただ、誰も超能力を信じていない中で、気づいたらそこにいる少し不思議な男子高校生、みたいなのがかっこいいと思ったので、この力のことは誰にも言わずにいた。話題にでもなったらなんか拉致されて解剖とかされそうだし。この力は誰にもバラさない、と僕は決めて、バレない範囲でかっこいいことをした。
例えば体育倉庫の鍵を職員室に誰が返すかの話し合いをしている横に瞬時に現れて
「俺がやろう」 ※一人称を俺にしてみた
って言って「か、神一‼いつからそこに!?」ってなるのをやってみたり、地元のガラの悪いお兄さんたちに喧嘩を売って殴りかかってきたところで万象途絶を使いお兄様方の後ろに回って
「こっちだ」
って言って驚いて振り返ったところをぶん殴ってみたり。めっちゃ楽しかった。
どっちにしろまだまだ分からないことの方が多い。それが社会における子供の常だ。
ここでなにか滅多なことをすればそれこそ面倒なことになりかねない。
何より家族に迷惑はかけまい。文字通り一世一代の子育てを、親には存分に楽しんでもらいたい。
人は人の子として、その生を気張って楽しく美しく。
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