第二節 経緯
タニアが着替え終わった後、急いで聖堂に向かうと、まだ朝のミサは続いていた。
私たちと同じ服装、同じ年頃の娘たちが居並び、奏でる聖歌が聖画やステンドガラスで彩られた聖堂に流れる中、私とタニアはこっそりとその列に加わり、何食わぬ顔で歌い始める。
私達の目の前には指揮を執っている女性とその後ろに坐ます四枚の翼を背に持つ女性の像。
四翼の聖天使…彼女はどこか物憂げな表情で私達を見下ろしている。
私は歌いながら視線を天井に移す。
そこには円形の壮麗なステンドグラスが広がっていた。
これを始めて見たとき私は感動した。
今でもすごいと思うし、これを見る度にここが聖地なのだと実感する。
この大ステンドグラス、昼間は一般に公開されており、イスタの大聖堂の名物兼象徴となっている。
そして、聖歌が終わった後、一礼して全員が聖堂を出て行く。
「シスター・ケイト、シスター・タニア、いらっしゃい」
そんな中、聖歌の指揮を執っていた女性が私とタニアの名を呼ぶ。
私とタニアは顔をしかめて女性の所に行き、俯いて上目遣いで彼女を見る。
気難しそうな顔をした三十台前半の女性で、服装は私たちと同じ上から下までほぼ黒ずくめだ。
「あなたたちは少し修道女としての自覚が足りないようですね……時間というのは大切な規律です、最初ですから大目に見ますが、これからはこういうことのないように」
「すみません、シスター・マリアベル」
私とタニアは素直に彼女に頭を下げる。
シスター・マリアベルは私たち見習いシスターの教育や世話を受け持っている。
いわば担任の教師に当たる人物だ。
「さ、食事です、早く食堂に行きなさい」
シスター・マリアベルに促され、私たちは食堂へとそそくさと歩いていく。
「怒られちゃったね」
タニアが話しかけてくる
「仕方ないよ、私たちが悪いんだし」
私は苦笑を浮かべた。
私の名前はケイト、ここ、
ここにきたのは一ヶ月ほど前で、まだここの生活には慣れていない。
特に気候条件に関してはかなり参っている。
イスタは砂漠に位置し、昼夜の寒暖差がかなり激しい。
それに言葉にも私は苦しんでいる。
ここでは
私は元々孤児で、小さな町の教会兼孤児院に身を寄せていた。
タニアも同じ教会の出身でやはり孤児だ。
私たちは教会で清掃や家事を手伝い、同じ孤児たちの面倒を見て生活していたが、十七歳で教会からは出て行かなくてはならなかったので、今年で十七歳を迎える私とタニアはどうするか途方にくれていた。
外に親戚などはおらず、働くつてもない、そんな折に教会の神父様から思いもしない提案があった。
それは聖地イスタで修道女見習いとして修行をしてはどうだろうかというものだった。
聖地イスタで修行できるというのは名誉なことだ。
その過程をこなせば確実に聖職に就けるため、私たちは喜んでその提案を受けた。
そして一ヶ月前、この聖地イスタに足を踏み入れた。
それが私たちがここに来た
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