遺品整理

 母が12月末に亡くなり、火葬は年明けに決まった。

 それ以外の日は、年末年始の間ずっと施設を退去する準備をしていた。

 ホーム長もスタッフの方たちも「急がなくていい」と言ってくれたが、母の部屋が空かないと次の入居希望者を待たせてしまう。


 今後について話していたら、あるスタッフの方が泣いてしまった。

 話を聞くと、母と同じ歳だそうで(母は最年少の入居者だった)他人とは思えず、ずっと親近感を持ってお世話をしてくださっていたのだとか。

 しかも、1年前に両親を見送ったばかりで、私たち姉妹のことも「親を見送るには早すぎる」とずいぶん気遣っていただいた。


 片付ける前に、ベッドサイドの写真を撮った。にしてはずいぶん可愛らしく整理されていたので、思い出に残しておきたかった。


 ベッドサイドの箱に「棺に入れて欲しいもの」一式がまとまっていた

 死後、自分の体と一緒にを燃やして欲しいと。


 しかし、遺言といえど、自治体の条例でを火葬することはできない。中身を確認するために開けてみたら、ほとんど祖母の形見だった。


 若い祖母と幼い母のモノクロ写真。

 色褪せてぼろぼろになったテディベア。

 表紙とページが取れかけた手帳。

 古い戸籍謄本の写し。


 火葬まで数日の猶予があったため、私は手帳をパラパラと読み始めた。

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