第18話 村へ帰る

あのオリヴァーは辺境の地へ追放となったのだが。

「大丈夫だろうか、兄上は宮殿から外へ出たことのないお人だからなぁ」

まーだ、そんな心配してんのかい?アルフレッドよ。

「あんたねぇ、いつまでもそんな人の心配してないで自分のこと考えな」


「そう言えば、あんたたちさぁ」

「私たちですか?」「そうよ」

「今後の話なんだけどさ、国王も歳でしょ?

 そろそろ補佐役として支えなくていいの?いつ逝ってもおかしくない歳でしょう」

「ですよねぇ」ですよねぇじゃねえよ!呑気すぎんだろ!

「あのねぇ、もし明日国王が死んだらどうすんの?どうするつもり?」

「うーん、何も考えてなかったですねぇ」

でしょうね!遊んでたって言うんじゃぁねぇ。

「オリヴァーも居なくなったし、国王一人じゃ何もできないでしょ?

 だからこそ、そこにあんたたちが傍に居なくちゃダメでしょ?

 国王がさ、こうしたいって言ったとしても、国と国民の事を考えて、

 ダメ出しすることも必要なのよ。それがあんたたちの役目。解ってる?」

「なるほど、確かにそうですね」

「兄上、明日からでも国王のそばで我々も学ばなくてはなりませんね」

「そうだな、いまサマンサ殿が言われたことをやってみよう。

 国王陛下は、お一人で寂しい思いをされているに違いない。

 我々二人が力を合わせれば何も恐れることは無いぞ!セバスチャン」

「兄上!」

お涙頂戴の2時間ドラマかよ。まぁそう考えてくれるようになったのは、進歩だな。


「そうそう、それとお前」

「はっ!」

「アルフレッドは何をするの?」

「隣国との戦争に勝つことです!」

「それはそうなんだけどさ、今どうなの?勝てそうなの?」

「五分五分と言ったところでしょうか?しかし我が軍の士気は衰えておりません!」

「士気はどうでも良いんだけど、勝った後とか、もし運悪く負けた後どうする?」

「負けることは有り得ませんので、かんがえておりませんでした」

そうだよなぁ軍人なら、そう考えるだろうけど負け戦も考えておくべきよね。


「勝ったとしてもさ、相手の国をどうするかを考えないとダメなんじゃないの?

 敵軍や王族が居るんでしょ?その処遇如何では、また戦争が始まる可能性もある。

 負けたら、あんたたちも今のままではいられないしさ、国民だってどうなるか

 解らないでしょ?奴隷になるかもしれないしさ、そう言うところまで考えないと」

「なるほど、おっしゃることは良く解りました。早速私の参謀たちに話しましょう。

 戦争が終わったら、どうするかを」

解ってくれたか、ようやく。


これなら、もう私の出番は終わったな。


「じゃあ、私は村へ帰るわ」

「えっ!こちらにお住まいになるのではないのですか?」

まぁ居心地は良いけどさ、お前らの面倒見るのは疲れんのよ。

「もう少しいい部屋を、ご用意しますから」

そんなことはどうでも良いの。ゆっくりしたいだけさ。

「もっとサマンサ殿のお話を聞きたいのです。アドバイスも」

まだ、そんなこと言ってんの?十分アドバイスはしたつもりよ!

「もうさぁ、自分たちで考えなよ。そうした方があんたたちの為にもなるのよ」

「そんなこと、おっしゃらず、もう少しこちらで」


「イヤよ、もう帰るの」


「分かりました、ではせめて、村まで送らせてください」

「それも止めて」


そんな事されたら、別れがつらいだけよ・・・



「サマンサさま、私たちはどうしたら?」エマとロレーヌが言うのだが。

「あんたたちはどうしたい?」

「貴方と一緒に・・・」

「まぁあんたたちなら一緒に帰っても良いかな」

「良いんですか!」


「じゃあね、頑張りなさいよ」


エマとロレーヌが同乗して乗合馬車で故郷の村へ戻るわけだが。


宮殿を離れてしばらく走ると・・・


突然、正面から暴れ馬が突進してくるのが見えたのよ。

それが最後だった・・・


第18話 完



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