第8話 王家の悩み

「お呼びでしょうか?陛下」

「呼び出してすまない。あの王太子の弟をどうにかしたいのだが」

「陛下のお気持ちは良く解ります。

 私ども兄弟もどうしたら良いか考えあぐねております。」

「兄上、あの男が筆頭家臣となって以来、あれほど潤沢だった資金は底をつき

 隣国との戦争は再び激しさを増し、人心は乱れきっております」

「そうだな。どうしたら良いものか」

国王陛下の表情はやつれ、生気がない、そばに仕える家臣たちも憂慮の表情だ。


「あの男を始末できればよいのだが」

「陛下、それはなりませぬ。そういう役割は我々が考える所です」

「では、何か良い案があれば聞かせてくれ」

「はっ!承知しました」


「兄上、あの場ではそう申し上げましたが、実際にはどうされるおつもりで?」

「どうしたら良いと思うか?」

「陛下はもちろん、私たち王家のものが直接手を下さず、亡き者にするような

 方法が有りましょうか?」

「聞けば異世界にはゴルゴ13と言われる凄腕の暗殺者がいるそうだが、

 そういう者でもいればよいのだがなぁ・・・」

「そうですね」


「そう言えばローリングス検察官が、あのサマンサを探し出したそうだ」

「サマンサ?」

「国王夫人の噂の発信源とされた女性だ。完全に濡れ衣だったのだが」

「そうでした、彼女を使うというのですか?」

「・・・」

「良い案だと思いますが、私たちが唆したとバレたらそれこそ終わりですぞ」

「そうだな、なにか感ずかれないように、それとなく誘う方向で話は

 出来んか?サマンサに」

「むつかしいですね」

頭を抱え込む二人の皇太子。


「サマンサさん」

「あ!ローリングス検察官ですね、お久しぶりです」

「お元気そうで何よりです」

ローリングス検察官がまたまた朗報?に近い情報を教えてくれたのだが。

国王陛下も二人の皇太子も、あの男を亡き者にしたい意向だそうなんだと。

どこまで嫌われてるんだか、笑っちゃうんですけど。

「皇太子はどうしたら良いか悩んでいるようでしてね」

「そうは言ってもねぇ、私が何か出来ると希望しているのかもしれませんが」

「おーさすがですね、皇太子はあなたに何か、期待しているようですよ」

「期待ねぇ」

「その王太子の弟って奴を一度見てみたいものですね」


ん!そうか、なら皇太子の提案に乗ってみるってのも手かな?

「ローリングスさん、皇太子の提案に乗ってみようかと思いますが」

「うーん、危険だと思いますが、あなたがぜひと言うのなら皇太子殿下に

 話をつないでみますけど」

「とりあえず王太子の弟って奴の顔を見てみたいですね、

 それで提案に乗るか考えるのはダメですかね?」

「とにかくずる賢いくせに無能が服を着て歩いているっていうのが

 その弟ですからねぇ、よほど用心しないと」

なるほど、そんな奴なら尚更見てみたいものだわ!


「じゃあローリングスさん、よろしくね」

「分かりました、では!」

なんか面白くなってきたじゃないの!

痩せても枯れても、現世では東大首席卒業の才女なの!

まぁ自分では言わないけど、ここは異世界だし、何も知らないでしょ?

周囲の人たちはさ。



「ローリングスです!皇太子殿下!お久しぶりです」

「おお久しぶりだな!元気だったか?」

「はい、それで話と言うのは、あのサマンサの事なんですが」

「サマンサか・・・彼女には悪いことをしたと思っているんだ」

「そう何か出来る事があればとは思っていたんだが」

アンドリュー皇太子も、セバスチャン皇太子もサマンサの事は気にしていたらしい。

宮殿の階段を降りるところを押したのは、アンドリューだったし、

気が付いたサマンサを殺そうとしたのはセバスチャンだった。

真相を知った二人が罪の意識にさいなまれたのは当然と言えば当然だった。


「実は殿下、サマンサがオリヴァーを見たいと言っているんです」

「なに?奴を見たい?そう言えば彼女はオリヴァーを見たことは無いか・・・」

「おそらくないと思われます兄上」


「しかしその前に私たちが謝らないとならないよな」

「おっしゃる通りです兄上」

「謝罪を受けてくれるだろうか?ローリングスはどう思うか?」

「どうでしょう、まずはお会いになっては如何?」

「そう、会ってみよう、それで自分たちをどう思っているか知りたい」


「こっちへ来てもらうか?それとも」

「私たちが現地へ行ってはどうでしょう?」

「それもそうか、謝るのに来てもらうのも気が引けるな」

「ではローリングス、私たちが行くと言ってくれ」

「良いんですか?後悔しませんか?話はしてみますが」

「なに私たちが謝罪に行くのだ、それくらいは当然だろう」


「サマンサさん!近いうちに皇太子殿下ご兄弟がこちらへ来たいと言う事です

 受け入れてくれますか?」

「えっ!皇太子殿下が?来られるのは問題ありませんが」

「じゃあ、そのように伝えます」

おお!皇太子殿下兄弟が来るって?どうしてくれようかねぇwww

ますます面白くなってきたじゃんw


第9話 完

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