第7話 会いたくない奴が来た

おじいさん、おばあさんとエレノアと一緒に農作業をしていた。


そこへ・・・

「サ・・・マ・・ン・・・・サ?」

二人の男女が歩いてくる。

みすぼらしい衣服と、ボサボサの髪の毛、顔はやつれ、目はくぼみ、女の方は

木の枝を杖代わりにして歩いている。


「だれ?」

「だれって?・・・私よ、おぼえてる?」

知らんなぁ・・・誰だよ、この乞食どもは。

「王太子といっしょに暮していたじゃない・・・」

誰?知らんわ・・・


「ボクのこと忘れちゃったのかい?」

ボクだと?誰やお前は!知らんなぁ・・・


エレノアがびっくりした顔で二人を見つめている。

「サマンサ、この人たち王太子のお子様よ、いつだか王太子夫妻とこのあたりに

 視察に来たことあったから、おぼえてる」


ははぁーん。

こいつら王太子の弟って奴に追い出されたんだな・・・


「おまえらさぁ・・・あたしのことイジメていたよな?」

「いやぁ、あれは遊びのつもりで・・・」

「はぁ?遊びだぁ?その遊びとやらのおかげでな、王太子は処刑されたんだぞ! 

 全部私に罪を着せてな、お前ら解ってねぇのかよ!」

「そ、それはすまなかった・・・」

「ふん!いまさら謝っても遅いわ!さぁ仕事の邪魔だよ!帰ってくれ」

「そんなぁ・・・私たちあなたしか頼れないのよ・・・

 あの時の事は本当にすまなかったわ、お詫びに何でもするから」

何でもするだと?じゃあやってもらおうじゃないの!

「じゃあ、お前ら仕事やるわ。王太子の弟を殺してこい!」

「ええええええ!そんな出来ないよ。いくら何でも・・・」

「おっ!お前ら何でもやるって言ったよなぁ・・・えっ?あれはウソか?」

「いやぁ・・・でも人殺しは・・・」

「わかった、やるよ」

いやいや出来ないな、お前らの様な温室育ちのボンボンどもには。

まぁこうでも言わないと、ここに居座るかもしれんしなぁ・・・


「ホラ!はやく!殺して来いよ!」


二人は逃げるように去って行った。

おもしろいなぁ・・・私ってSなのかしら!



そんなのんびりした毎日。

こういう生活も悪くないなぁ・・・下手に現世へ戻ったら何言われるか解らんし。

しばらくこっちで息抜きしようかなぁ。


私の父は東大教授、母は高級官僚、姉は外科医、弟は私と同じ東大から外務省。

絵にかいたようなエリート一家。とは言え、息が詰まりますよ、こういうのって逆に




「こんにちは、検察官のローリングスです!」

イケメン検察官が部下らしいイケメンといっしょに。何か良い知らせかしら?

「サマンサさん、やはりあなたは無実ですね、王太子の弟っていうのが今回の

 事件の中心に居るようです」

やはり王太子の弟が怪しいってのは、ある程度分かっていたが・・・

「国王陛下もこの人物を持て余しているらしく、お子様方つまり皇太子殿下たちも

 お困りの様子」

イケメン検察官の話では、王太子の弟が国政を蔑ろにしているようで、放漫財政、

王太子の努力でようやく収まりつつある隣国との戦争もまた、激しくなっている。

皇太子たちも、どうしていいか解らないようだ。

「いやぁその、弟ってやつを殺しちゃえば良いんじゃないっすか?」

「そうは簡単にはいきません。国王陛下自らが摂政に任命したわけですし、

 国王もホトホト困り果てている様子で」

「でも国のためにはなりませんよね、一刻も早く取り除く必要があるのでは?」


我ながら際どい発言したなぁ・・・でもここは異世界、親類友人の類はおらんし。

おじいさん、おばあさん、エレノアも正直言えば赤の他人。


「ローリングスさんはどう思います?」

「どうって?」

「弟を何とかしないとって」

「そりゃあ思いますよ、このままでは国は滅びます」

「ですよねぇ・・・やはり殺るしかないじゃないっすか」



その出来損ないの王太子の弟とやらを一度見てみたいものだわ。


第7話 完

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