第003話 最凶の無頼漢、最高の回復男

第03話 最凶の無頼漢


「卑怯だぞ! もうそいつは抵抗出来ねえ」

「クフフ、再起不能者に追撃してはならないと言う法令でも?」

(……ヤベえ。このままでは井園が死んじまう。

誰か、誰かこのMONSTERを止める力のある奴……)

「野火くん、君は今、ピンチなのかい?」

(……この声は、もしや……)

「♪ざーんこーくな、て・ん・し・のテーゼぇー」

「い、烏賊利シンディー!」

そして、またがっているのは

「アダムンゲリヲン初号機、いっきまあす!」

いわゆる改造自転車。合法的な移動型凶器。

「クフフ、面倒くさいのが来ましたねえ。お暇」

逃げる強敵。追わない烏賊利シンディー。


「……重症なんだ。井園の安否は?」

「パッと見ではわからない。

アダムンゲリヲンにサイドカーを搭載して

迅速かつ慎重に搬送しよう」

移動型凶器が救急搬送車両に変身!

急げ、烏賊利。頑張れ、井園。

仲間の無事を心から祈る野火。


それから、一週間の時間が経過。

純白の花瓶でウエイトトレーニングする井園。

看護師さんが笑顔で対応。

「超回復力の井園さんでも、抜糸が終わるまでは

重い物を持たないで下さいね?」

「はいはあい、従いますよっと」

床頭台に優しく花瓶を置く優等生。

おもむろに月刊:DONKIを手に取り

最新鈍器のページをめくる井園。

看護師さんの指摘通り

彼は生来、自然治癒能力に恵まれた体質だそうだ。

縫合手術もおこなったが

自然に傷口がふさがることもあるとのこと。

この特異体質が世界の情勢を変える一助になることは

きっと、そう遠くない未来に語られる武勇伝。

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