第2話宇宙人がやってきた
アメリカ大統領の度重なる暴言と、ポーカーに負けた悔しさから、地球侵略を決意した宇宙人。
彼は、地球から一万光年離れた“ベタ星”という星からやって来た。
勿論、1人で来た訳では無い。
地球から少し離れた中継点には、総勢五千人のベタ星人が50機余りのUFOに乗って、いつでも駆けつけられるように待機していた。
その総勢五千人のベタ星人達が、地球侵略の号令を受けて、世界の主要都市の上空にその姿を現したのだ!
「あれは何だ!」
アメリカ 「Oh! ビューティフル!」
中国 「上見指! 未確認的飛行物体!」
EU「トレビアン!」
世界中の何も知らない街の人々は、突如として現れた上空のUFOに歓喜の声を上げた!
世界同時多発の前代未聞のこの大事件に、マスコミ各社は直ちに飛びつき、お茶の間に流されていたテレビ番組はどこもかしこも“宇宙人特集”に切り替えられた。
☆☆☆
「スゲエ! 宇宙人が現れたって!」
勿論、森永探偵事務所も例外なく大騒ぎになっていた。
「新宿の上空にも現れたって! 今からみんなで見に行こうよ」
さっきまで宇宙人はいないと断言していたひろきが、一番はしゃいでいた。
「シチロー! カメラ無いの? カメラ!」
「そうだ! カメラ持って行かないと!」
シチローが、机の引き出しからカメラを持ち出して、さあこれからUFO見物に出かけようとした、その時……
誰かが事務所の扉をドンドンと激しく叩く音が聞こえた。
「ン? 誰か来たみたいだぞ……」
シチローが事務所のドアを開けると、そこには……CIAのトップエージェント“ジョン・マンジーロ”が立っていた。
「あっ!お前は、『チャーリーズエンゼルパイ~チャリパイvsCIA~』で、大統領の秘密が書かれたノートを取り返しにオイラ達を狙ったCIAのジョン!」
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わざとらしく宣伝するなよ……
ジョンは、いつになく真剣な面持ちでシチローに問いかけた。
「今、世界中のあちこちにUFOが姿を現しているのを知ってるか?」
「勿論だよ。今から、新宿に現れたUFOを見に出かけようとしてたんだけど、ジョンも一緒に行くかい?」
それを聞いたジョンは、やはりといった顔で伏し目がちに首を左右に振った。
「それは止めておけ、シチロー……
“奴等”は地球人と交流を持つ為にやって来たんじゃ無い……侵略にやって来たんだ!」
「ええっ! 侵略だって?」
「どうしてそんな事が言えるの? ジョン?」
てぃーだが横から、不審そうな顔でジョンに尋ねる。
ジョンは、困ったように少しの間言葉を詰まらせていたが、意を決して、シチロー達にアメリカ政府と宇宙人の関係について本当の事を話すことにした。
「この事は極秘事項なんだが……まぁ、こういう事態になっては隠していてもしょうがない……実はな………」
☆☆☆
「やっぱり宇宙人とアメリカ政府は繋がってたんだ!」
ジョンの話を聞いたシチローと子豚は、揃って驚きの声を上げた。
「……つまり……アメリカ政府と宇宙人が何らかのトラブルを起こして、それで宇宙人が地球侵略へと踏み切った訳ね?」
てぃーだにそう言われ、ジョンはバツが悪そうに頷いた。
「トラブルって、いったいアメリカと宇宙人の間に何があったんだ?」
「さぁ……CIAも、そこまで詳しい情報はまだ掴んでいないんだ」
まさか……宇宙人がポーカーに負けたのがきっかけだとは本国でもトップシークレットとされていた。さすがのジョンでも思いもしないだろう。
「まぁそういう事だ……君達、UFOを見に行こうなんてノコノコ出かけるんじゃないぞ!」
ジョンがそんな事を口にした瞬間だった。
ピカッ!
事務所の外が一瞬明るくなったのと同時に、テレビ画面に映し出されたUFOの下の部分から、稲妻のような閃光が走ったかと思うと、光の当たったビルの一部から炎が上がった。
『大変です! たった今、宇宙人が街に攻撃を仕掛けてきました!』
逃げまどう大勢の人々を背景に、TVリポーターが緊迫した表情で、叫ぶように実況を始めた。
「・・・・・・・・」
望遠付きのカメラを首からぶら下げたシチローと、“大歓迎☆ようこそ地球へ”と書かれた大きな旗を持った子豚とひろきは、呆然とした表情でその光景を見ていた……
「大変だわ! 早く逃げないと!」
そう言って、子豚とひろきは、すぐさまキッチンの方へと走っていった。
子豚は旅行用の大きなバッグに、買い置きのカップ麺やらお菓子やらを、ひろきは、大量の缶ビールをそれぞれ詰め始めた。
「困ったわ……」
お菓子を詰める手を途中で止め、子豚が溜め息をついた。
「冷蔵庫が無いと、プリンが食べられないわ!」
「ビールも冷えてないと美味しくないよ!」
子豚とひろきは、すがるような目でシチローを見つめた。
「シチロー! あとで冷蔵庫持って来て!」
「そんなもん運べるかっ!」
もし運んだとしても、二人共……電源はどうするつもりなんだ……
その様子を見て苦笑いを浮かべながら、ジョンが二人にアドバイスを与えた。
「なにもすぐに避難する事は無いさ。
むしろ今外に出るよりは、ここにとどまっている方が安全だよ」
ジョンは知っていた。宇宙人の侵略の情報をいち早く得ていたアメリカ政府が、すでに国防総省で宇宙人撃退の為の会議を開いている事を。
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