チャリパイEp7~チャリパイVS宇宙人~

夏目 漱一郎

第1話宇宙人は存在するのか

『衝撃!宇宙人の死体解剖極秘映像をTV初公開!』


その夜、森永探偵事務所の面々は、超常現象を題材にしたテレビ番組の特集を、興味津々な顔をして鑑賞していた。


「スゲエ~!宇宙人は本当にいたんだ!」


「キャ~ッ!お腹にメスが入ったわ!」


アメリカ政府の特殊機関に持ち込まれた宇宙人の死体を、研究施設の医師らが解剖する様子を収めたビデオをテレビ局が独自に入手したというふれ込みで、番組ではその映像を目玉として公開していたのだ。


病院のオペ室のような部屋の中心に、その宇宙人は台の上で横たわっていた。


宇宙人は、身長1メートル位の頭が大きなヒト型で、薄緑色をしていた。その周りを囲む医師ら数名は、真剣な面持ちで慎重にその宇宙人の臓器らしきものを腹部から取り出している。


「……ゴクリ………」


シチロー達4人は、片手に持ったビールジョッキもそのままに、無言でテレビの画面に釘付けになっていた。


「あれが宇宙人か……何だか怖いな……」


その解剖シーンは、2~3分続いただろうか……


やがて、ビデオが終わりスタジオの映像に戻ると、司会者のタレントが番組の最後になって、思わぬ台詞を口にした。


『いやあ~♪テレビを御覧の皆さん、さぞかし驚いたでしょうね♪

ネタをばらしますと、あの映像…アメリカの映画スタッフが遊びで作った、全くの偽物でした~♪』


MCの発したそのコメントにテレビを真剣に観ていたシチロー達は、すっかり拍子抜けしてしまった。


「なんだよ……結局、本物の宇宙人は出ず終いかよ……テレビ欄の見出しに騙されたよ!」


シチローが不満そうに呟いた。


てぃーだは、そんな事も予想していたのか、冷静な表情で言った。


「考えてみれば、もしそんなビデオが入手されたら、もっと早くニュースなんかで報道される筈だものね……」


「なんだぁ…宇宙人はいないのかぁ……」


残念そうに呟くひろき。しかし、シチローはその結論に異議を唱えた。


「いや!ひろき、宇宙はこれだけ広いんだから、きっと地球の他にも高い知能を持った生命体が、どこか他の星に存在してる筈だよ!」


宇宙人を信じているシチローは、真剣な顔で力説する。


「ワ~レ~ワ~レ~ハ~~ウチュ~ジンダ~~♪」


すると、キッチンからつまみの追加を持って帰って来た子豚が、片手で喉を叩き宇宙人の真似をしながら戻って来た。


「そうよ!ひろき、さっきテレビで言ってたでしょ!

アメリカは、内緒で宇宙人にUFOの作り方を教わってるって!」


「そうだよ!アメリカ政府は宇宙人と繋がってるんだ!」


意見の合ったシチローと子豚は、肩を組んで拳を振り上げた。


「今頃、大統領とポーカーでもしてるかもね♪」


真剣に宇宙人の存在を主張するシチローを茶化すように、てぃーだがそう言って笑った。



☆☆☆



アメリカ合衆国

ホワイトハウス……


「今度はどうだ♪

“ツーペア”だぞ♪」


「悪いな…また私の勝ちだ♪“フルハウス”♪」


「クソッ!何でそんなにいい手ばっかり入るんだ!イカサマじゃないのか大統領?」


「ハハハ♪

アンタが弱いだけだろ。

おたくの星じゃ、みんなこんなにポーカーが弱いのかね♪」


「ムキュゥ~~!!

いい気になるなよ!この地球人がっ!」







ホントにやってたりして……




そう……この事は、アメリカ政府のごく一部の上層部にしか知られていないトップシークレットなのだが、アメリカは宇宙開発競争で世界のトップに君臨する為に、ずっと以前から極秘に宇宙人とコンタクトを取っていたのだった。


「クソ~ッ!大統領!

もう一回勝負だ!」


「キミがあんまり弱いんで、勝負にならんよ。

宇宙人も大した事は無いな♪」


「なにを~!こんな事で宇宙人のレベルを計るな!」


「いやあ~ポーカーは弱いし、顔もグロイし、足は短いし、変な声だし、指だって三本しか無いし……宇宙人ってのはろくなもんじゃ無いな♪」


事あるごとに、宇宙人に対して屈辱的な言葉をぶつけるアメリカ大統領。最初は我慢していた宇宙人も、度重なる大統領の無礼な発言についにはキレてしまった!


「アッタマきた!

こうなったら、地球を侵略してやる!」


「オゥ~マイガッ!!」


かくして、大統領の不適切な失言のおかげで、人類はかつてない程の深刻な危機を迎えるハメとなったのであった!








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