第46話 欲望の果て
信長の圧倒的な戦力に魅せられた三人は、協力する事を選んだ。
信長にとっても彼らは外で自由に動かせる戦力だ。
魔素を集める能力と、少しばかりの力を与えることにした。
『これでマシになるかの、ふん!』
「おおおお、なんかキターーー」
信長から発せられる邪気により、三人の能力は格段に引き上げられる。
通常ならば邪気の性質のより、身体と精神への影響で、苦痛にのたうち回る。
しかし元がひねくれた三人だ。
すんなりと闇を受け入れて、信長の力をどんどんと力を吸収していく。
ただ誤算はその吸収力が信長の想像をはるかに超えていたことだ。
『おおお、これ程とは。むむむ、不味いの、これ以上はワシがもたぬ』
「おいおい、ケチ臭いこと言うな。まだまだこんな物じゃ足りねえぞ」
「そうよ、そうよ。寄越しなさいよ、ほらお肌も喜んでいわ」
「うむ、上級国民に無礼だぞ」
『ぬぬぬ、無理ぞーーーーーーーーー!』
想定外な力の流出に慌てて止めようとするも、三人がへばり付いて邪魔をする。
まるでナメクジのようにヌラヌラと、引き剥がしても際限がない。
レベル的には信長に遠く及ばない三人だが、欲だけでは負けていない。
配下のカッパたちも、この異様な光景に圧倒され止めるのをためらっている。
ようやく自力で離すことに成功するころには、信長は疲労困憊の有り様であった。
『はあっ、はあっ、はあっ。なんたる貪欲さ。闇の生物のようであるな』
「まあ、こんな物で許してやるか。この力を使ったら俺も楽勝で楽しめそうだしな」
「ねー、みなぎってくるね」
「でも装備が心もとないよな。んん、信長ちゃん、良い鎧を着けてるじゃんか。南蛮鎧ってヤツじゃねえ?」
『で、あるぞ』
サブローの感嘆の声をあげ、信長との距離を縮めていく。
「すげえなぁ、外して見せろや」
『むむむ、無礼だが、まあ許してやろう』
これから己のために働かせる三人だ。懐柔をした方が動きは良くなる。
そう判断をした信長は好きにさせた。
だがそれが良くなかった。
調子にのって鎧を装着したり、カッパに食べ物を持ってこさせたりと好き放題だ。
それを子供のようにはうるさく騒ぎ、要求はどんどんとエスカレートしていく。
「むむむ、その口ヒゲは上級国民に合いそうだな。ほしい、その口ヒゲを俺にくれ」
『何を言っておる。自分で生やせばよいであろう』
「あー、このマントってビードロ? カワイイー、ウチにぴったりっしょ。もらい~」
『こらっ、それは幾重にも魔法付与がついておる二つとない品物ぞ。ぞんざいに扱うでない』
「いいなー、勇者の俺にも何かくれよ。」
『いや、やってはおらん。その者が勝手にほざいておるだけよ』
「へへーん、いいしょー。あっ、信長ッチ、鱗も生えてんの? 記念にもーらい」
『痛っ、な、何をするっ!』
「待て待て待てー、龍の鱗は俺のもの。主役級の純々茶々を差し置くなー」
「早い者勝ちだよーーん」
『いでてでてでででーーー』
信長の有りとあらゆる物に目をつけてむりし取っていく。
魔力をも合わせて盗むものだから、信長の力はあれよあれよと削ぎとられていった。
そして三人の手数もあり、気づけば信長が抵抗出来ない所まできていた。
なまじ主人が許可したものだからカッパたちは止めれない。
『ぐおおお、や、やめ、やめ、ろ』
「ケチケチするなよ、信長ちゃーん。なんだこりゃ、デッカイ魔石だなあ」
『や、や、や、め』
「あー、ずるーい。ウチにちょうだーい」
「待て待て、信長の遺産は茶々のものだぞ」
「そうはいくかよ。早い者勝ちだろ」
『ぬおおおおおおおお』
絡み合う四人の魔力が溶け、魔石を掠めたサブローを中心にかたまった。
「ふははは、力が漲ってくるぜー」
「うん、ウチもーー」
「上級国民にふさわしいな」
信じられないことに信長は、完全に三人へ吸収されたのである。そして三人は結びつき、ひとつへと結合したのだ。
腕や足は一人分なのに、頭だけがトーテンポールのように上へと重なっている。
阿修羅のように三面六腕ならサマになるのだが、どことなく滑稽である。
そんな新しい主人の出現に、カッパたちに動揺がはしる。サブローの宣言により鎮まった。
「ふははは、俺らが新しい魔王ってことで良いんじゃねえ?」
「だよねー」
「うむ、賛成だな」
カッパたちは姿勢をただし、新たな魔王に注目をする。
緊張をもち次の言葉をまつ。
それを肌で感じたサブローは、気を良くし大きく息をすいこんだ。
「では、最初の命令だ。耳をかっぽじってよく聞け。俺はダンジョンコンパを開催させるぞーーー」
「三郎くん、それいいね。今度こそ盛り上がろうよ」
「ふむ、合コンか。舞台を整えるのが楽しみだな」
サブローの理解できない命令に、カッパたちはざわめく。
だが早くかかれと促され、おずおずと動きだすのであった。
それに反して三人のテンションは高い。待ちきれないといった様子である。
「よーし、最高の合コンにしてやるぜ!」
「「いえーーーーーーーーい」」
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