第2話日々が変化する予兆
「それで。名前は何ていうの?」
人形の何かに僕は語りかける。
彼女は小首をかしげて思案気な表情を浮かべている。
「なんて呼んでも良いよ。私から呼んでほしい名前は無いかな」
「え?それって…僕が考えるってこと?」
「うん。難しい?」
「そうだね…大変かも」
「そう。じゃあ
「わかった。僕は
「うん。とりあえず寝たら?まだ深夜だよ」
「あ…寝苦しくて…抱きつかないで貰えると助かる」
「分かった。隣で寝るけど良いよね?」
「え…」
「離れたくないの。わかるでしょ?」
「わからないですけど…」
「とにかく。良いから寝よ?」
それにどうにか頷いた僕は祠とともに再びベッドに潜り込むのであった。
目を覚ますといつものルーティンに従うことになる。
顔を洗って歯を磨いて髭を剃って…。
ここから洗濯物を回して乾燥機を予約して…。
一人暮らしの僕は何事も自分でやらなければならない。
そんな事を軽く思考していると祠は洗面所に顔を出した。
「どうしたの?」
何に疑問を覚えたのか。
彼女はその様な言葉を口にする。
「え?何が?」
「何か考え事しているようだから」
「そう?これから洗濯して乾燥機掛けて…っていつもの事を考えていただけだよ」
「ふぅ〜ん。家事?」
「そう。自分でやらないといけないからね」
「やり方教えてくれたら私がやるよ」
「でも…」
「家に一人でいても暇で仕方ないからね。仕事の一つでも振っておいてよ」
「じゃあ…」
そうして僕は祠に家事を任せる事を決めるとやっておいてほしいことを伝える。
彼女は何かしらの力で現代知識を取り入れているようで数回頷く。
「何となくわかったけど。機械は少し説明して欲しいな」
そうして僕は祠に大雑把ではあるのだが洗濯機の使用方法を教える。
「そろそろ家を出ないと…電車に乗り遅れる」
「仕事?」
「そう」
「朝から大変だね。まだ日も昇りかけたばかりだよ?」
「そうだね。でも仕事だから。仕方ないんだよ」
「そうなのかな?」
「話はまた後で。じゃあ」
そうして僕は家を出ると最寄り駅まで自転車で向かう。
駐輪場に自転車を停めると駅まで向かう。
ギリギリ電車に乗り込むとそのまま会社へと向かうのであった。
本日もへとへとになるまで仕事に追われてやっと帰路に就く。
帰宅すると祠は豪勢な食事を用意して待っていた。
「おかえり。ご飯にする?それともお風呂?」
「とりあえずお風呂行ってきます」
「わかった。ご飯温めておくね」
「ありがとう」
感謝を告げた僕は風呂で疲れを癒やすと数十分でリビングに戻る。
美味しそうで豪勢な食事がテーブルには並べられている。
しかしながら僕の眠気は限界を迎えそうだった。
「あれ?眠そうだね?先に寝る?」
「ごめん。こんなに美味しそうな食事を用意してくれたのに…」
「良いよ。明日のお弁当にしちゃうから」
「お弁当用意してくれるの?ありがたいな」
「うん。私は心の役にたちたいから」
「ありがとう」
その言葉を口にした辺りで僕の足は勝手に寝室へと向いていた。
そのまま眠りにつくと翌日はお弁当を持参して会社に向かう。
そんな平日が数日続くと祠は僕に提案をしてくるのであった。
「仕事やめたら?過労死するよ」
「でも…やめたら生活できないし」
「大丈夫。私がなんとかするから」
「なんとか?」
「任せてよ。心配ない」
そうして人形の何かである祠は常識外の力でこの状況を打開してくれるのであった。
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